BLUE MOMENT6
アーチャーが触れてくれないからって、あれはないだろう。自分でも思う、バカだとしか言いようがない。
(発情してるって、言われたな……。確かに発情してたんだろうな、俺……)
アーチャーには、さぞ、おぞましかったことだろう。
自分と派生を同じにする存在が発情して、セックスをねだってきたりしたら俺だってドン引きだ。カルデアにいるアーチャーだからあの程度の罵倒で済んだけど、聖杯戦争のときのアーチャーだったら、即死だったと思う……。
憎まれて、疎まれて、蔑まれて、当然の結果だ。
俺がアーチャーを好きになんてなったから、こんなことになってしまった……。
「でも、アイツ、反吐が出る、とか言わなかったな……」
キャスターのランサーに自白させられて、俺がアーチャーを好きだということがバレても、俺への態度が変わることはなかった。動揺して腹が立って、いろいろ喚いたけど、アーチャーはきちんと話をしようとしていたのかもしれない。
聞く耳を持たなかったのは俺で、アーチャーに何も言えなかったのも俺……。
「考えろと言われても……」
距離を置いて考えてみればいいって、ダ・ヴィンチは言ったけど……。
もう結論は出ているのに、アーチャーとの何を考えればいいんだ……。
皿がないからフライパンのままで、箸と紙コップを持って六畳間に向かう。畳の上にいろいろ置いていったのに、それほど広くはないはずの部屋が、なんだかとても広いように感じる。
音のない室内は、耳が痛くなるような静かさだ。
「さむ……」
寂しさが、ひりひりと沁みる。
「アーチャーは、どうして俺と……」
必要のないセックスの意味を考えても考えても、わからなくなるばかりだった。
寝袋にくるまって、ぼんやりと窓から入ってくる明かりを見る。たぶん街路灯だと思う。
「明るい……」
これじゃ眠れない、と寝返ったけど、眠れないのは明るいからだけじゃない。
「…………」
寂しいんだ、俺。
アーチャーに会いたいんだ、俺。
だけど、もう、顔を見せることなんてできない。
どの面さげて会うっていうんだ?
「会えるわけない……。アーチャーは、俺なんかにかまけている暇もないし、もう触れてもこないし……」
自分の身体を抱きしめて瞼を下ろす。
「アーチャー……」
声になったかどうかわからない。
ただ、眠れないと思っていたのに、気絶するみたいに眠っていた。
BLUE MOMENT 6 了(2019/4/25)
作品名:BLUE MOMENT6 作家名:さやけ