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Lovin’ you ~If~ 〈未来へ〉3

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Lovin’ you ~If~ 〈未来へ〉3
【You are my only 】


ハマーン・カーン率いるネオ・ジオンとの戦いも佳境に入り、おそらく後数回の出撃で終結となるだろう。
アムロは整備途中の愛機のコックピットシートに座り、目を閉じる。
「これからどうしよう…」
反連邦組織とはいえ、エゥーゴは元々連邦軍だ。ティターンズが解体され、ネオ・ジオンとの抗争も片付けば、おそらくエゥーゴは連邦軍に吸収される。
そうなった時、シャアはどうするのだろう?
このまま連邦軍人として、連邦政府の改革へと着手するのだろうか?
しかし、ダカールで出自を明かした以上、偽名で連邦軍籍を違法に手に入れたのは明白だ。
連邦のお偉方がそれを見逃すとは思えない。
それに自分も、自身の意識が無かったとは言え、連邦軍を脱走した身だ。
当然、脱走罪に問われる。
下手をすれば研究所に逆戻りだ。
それどころか、今度はカイルまで研究材料にされかねない。
それだけは絶対に阻止しなければ…。
「…やっぱり…逃げるしかないか…」

「何処へ逃げるのだ?」
突然、声を掛けられ、ビクリと肩を震わせ顔を上げる。
そこには、スクリーングラスで顔を隠したクワトロ・バジーナがいた。
「ク…クワトロ大尉…」
アムロは動揺を隠せず、言葉に詰まる。
そんなアムロを捕らえるかの様に、クワトロはコックピットに入ると、その腕を掴む。
「アムロ、何処へ…いや、誰から逃げるのだ?」
「え…?」
少し険しい表情を浮かべるシャアに、アムロはシャアが何か変な方向に勘違いをしている事に気付く。
「ちょっと、貴方。何か勘違いしてない?」
「勘違いとは?」
「私が貴方から逃げるって思ってない?」
「違うのか?」
「違うよ!バカシャア!」
思わずクワトロの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「っ!アムロ?」
「貴方ねぇ、どうしたらそういう思考になるんだ!」
「しかし昨日、君が言ったんだろう!私とは一緒に寝ないと!」
「え…昨日?」
アムロは昨日の出来事を振り返る。
昨日は確か、度重なる出撃で少し疲れていた。
とにかく身体が怠くて、少し微熱もあるようだったから、カイルを早々に寝かし付けて、ベッドに入った。
さぁ寝ようと思ったら部屋にシャアが現れて、そのまま事に及ぼうとしたので、今日は勘弁して欲しいと断った。
シャアも一応それを聞き入れてくれて、昨日は一緒にベッドには入ったが、何もせず、抱きしめられた状態でそのまま眠った…。
ここまでは良かった。
でも、暫くして寝入った頃、事もあろうにこの男は、眠っている私に手を出してきたのだ。
ぐっすり眠っていたせいか、始めは全く気付かなかった。
けれど、次第にその行動はエスカレートしていき、遂には最後までされてしまった。
まぁ、疲れていたとは言え、最後の最後でようやく目が覚めた私もどうかと思うが、同意もなく事に及ばれ、眠りを妨げられた事に腹が立って部屋から追い出した。
その時、「もう一緒に寝ない」と言ったかもしれない。いや、確かに言った。
けれどそれは、その場の勢いというか、口から出てしまっただけで、本気で言ったわけじゃない。
しかし、この男はそれを間に受けてしまったらしい。
アムロは溜め息を吐くと、目の前で情けない顔をする男のスクリーングラスを外す。
「ごめん、言い過ぎた。その言葉は取り消すよ」
「本当か?」
「うん」
「…そうか…」
露骨にホッとする、目の前の美丈夫が無性に可愛く見える。
「全くもう…」
思わずその頭を胸に抱き締める。
「でも、本当に昨日は疲れていたんだ。此の所少し怠いし、妙に眠くてさ。だから、出来れば私が嫌だと言ったらその…ちょっと控えてくれると嬉しい」
「そうだな…すまなかった。昨日も本当は我慢しようと思っていたのだ。しかし、腕の中の君が可愛くて、愛おしくて、どうしても我慢が出来なかった」
シャアが腕をアムロの身体に回し、顔をアムロの胸に埋めたまま強く抱き締める。
「君の甘い香りや、柔らかな髪の感触、その誘惑に抗えなかった」
臆面もなくそんな事を囁くシャアに、アムロの顔が真っ赤に染まる。
「あ、貴方ね…よくそんな小っ恥ずかしい事言えるね…」
「何を恥ずかしがる?本当の事だ」
そう言いながら、胸に顔を埋めてその柔らかな感触を味わう。
「ば、バカ!」
「君は、温かいな…」
ホッとしたような表情を浮かべてしがみつくシャアに、肩を竦める。
「もうっ、しょうがないなぁ」
サラサラとした綺麗な金髪に指を入れ、優しく梳けば、気持ち良さそうに目を細める。
「私には君だけなんだ」
「うん…」
「だからアムロ、私の傍に居てくれ」
「うん、ずっと傍にいるから…」

「ちょっと、こんな所でイチャイチャするの、やめてくれませんか?」
そんな二人に、コックピットの入り口から声が掛かる。
「カ、カミーユ!」
呆れ顔のカミーユが、腕を組んで溜め息を吐く。
「イチャイチャとは失礼な。愛を深め合っていると言ってくれたまえ」
自分の胸元に顔を埋められている状態に、羞恥で顔を真っ赤に染めるアムロとは対照的に、シャアがしれっと答える。
「あー、はいはい。それより、そろそろミーティングの時間ですよ」
「ああ、そうだったな」
「アムロさんを呼びに行った筈の大尉が戻ってこないと思ったら、何やってんですか」
「アムロが逃げるなどと言うから…」
「逃げる?」
「違うんだカミーユ、あれは…」
と、言い掛けてアムロが口を噤む。
まさか連邦から逃げる為にエゥーゴを抜けるなどと、今、必死に戦っているカミーユには言えなかった。
「まぁ、いい。それは後でゆっくりと聞くとしよう。アムロ、行くぞ」
「あ、うん」
シャアに手を引かれ、コックピットを出て行くアムロを見つめ、カミーユが首を傾げる。
「ん?何だ、アムロさんから別の気配が…気のせいか?」

ミーティングが終わり、各自持ち場に戻ろうとしたところで敵機襲来のサイレンが鳴り響く。
「来たか!行くぞ」
「はい!」
クワトロを始め、パイロット達が一斉にモビルスーツデッキに向かう。
共に走り出すアムロを、カミーユが引き留める。
「カミーユ?」
アムロが疑問の声を上げて立ち止まる。
しかし、カミーユ自身、どうしてアムロを引き留めてしまったか分からない。
けれど、止めずにはいられなかった。
「あの…今回の出撃はやめておいた方が…」
「え?どう言う事?」
「いや…俺にもよく分からないんですけど…そんな気がして…」
「何、言ってるんだ。そんな訳にはいかないだろう?」
「あ…そうですよね。すみません、変な事言って」
「もしかして私の体調を気にしてくれてる?」
「それもあります。此の所ずっと休み無しで疲れていませんか?」
「まぁ、ちょっと疲れてるけど大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
笑顔で走っていくアムロを見つめ、カミーユは胸に手を当てる。
「なんだろう…この胸騒ぎは…」



モビルスーツデッキから、モビルスーツが
次々と出撃していく。
クワトロの百式に続き、出撃したカミーユが、前方から迫り来る敵機の一団から、嫌なプレッシャーを感じて顔を顰める。
「この感じ…強化人間か…」