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Lovin’ you ~If~ 〈未来へ〉3

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連邦と同じく、ネオ・ジオンでも強化人間が多く導入されていた。
連邦と違い、志願した者が強化処置を受けていると聞くが、何れにせよ不自然な強化は歪みを生み、人の心を壊していく。
「何だって強化なんか…!」
カミーユの脳裏にフォウの姿が浮かぶ。
過剰な強化により、心を壊し命を落とした悲しい少女。
ネオ・ジオンが何を望み、成し遂げようとしているかは分かる。
その目的の為、ジオンの兵士は自ら力を望み、勝利を掴もうとする。
しかし、ハマーン・カーンの目指す、かつてのザビ家のような支配は、再び人々を争いの渦へと飲み込むだろう。
それだけは阻止しなければならない。
カミーユは唇を噛み締め、前方を睨み付ける。
そんなカミーユのZガンダムに、アムロの零式が接触する。
「カミーユ、気持ちは分かるけど、そんなに気負わないで、そんなんじゃ相手に飲まれる」
接触通信で伝わるアムロの言葉に、カミーユが大きく深呼吸をして心を落ち着ける。
「…そうですね…すみません」
「昔も今も、ジオンの兵士は自国の誇りや未来への希望を背負って戦っている。だから彼らは強い。そんな彼らに飲み込まれないように心を強く持たなくちゃ…」
「はい、もう大丈夫です」
「よし、いくぞ!」
「了解!」
そんな二人のやりとりを見つめ、クワトロが口角を上げる。
『やはりアムロの存在はカミーユを安定させるな』


エゥーゴのモビルスーツ隊に向かい、ネオ・ジオンのモビルスーツ隊が攻撃を仕掛ける。
《さぁ!お前たち!行くよ!》
ネオ・ジオンのモビルスーツ隊を率いているのは、強化を受けたパイロット、キャラ・スーン。
彼女もまた、ハマーンの為に自身を強化し戦いに臨む。
しかし、やはり過剰な強化を受けた彼女は、かなり精神が不安定になっていた。
その歪で不安定なプレッシャーは、強いニュータイプ能力を持つカミーユをダイレクトに刺激する。
「くっ!なんだこの歪んだプレッシャー!気持ちが悪い!」
カミーユは唇を噛み締め、必死にプレッシャーに耐える。
《大丈夫か⁉︎カミーユ!》
「アムロさん…大丈夫です…」
《大丈夫じゃないな…、カミーユは一旦後退しろ!ジュドー!前へ!》
「大丈夫です!いけます!」
《ダメだ!》
アムロがカミーユへ指示を出している間に、ジュドーのZZがキャラのゲーマルクを攻撃する。
《キャラだろ!やめろ!撤退してくれ!》
《ジュドーか?撤退?する訳ないだろう!私はハマーン様の為に戦うんだ!》
《キャラ!》
ジュドーの説得にも、強化と共に洗脳を受けているキャラは攻撃の手を緩めない。
《あはははは!みんな墜ちろ!》
キャラはゲーマルクの両腕にあるビーム砲からビーム乱射させ、敵も味方も構わず攻撃をする。
「クソっ!無茶苦茶だ!」
既にまともな判断の出来ないキャラは、笑いながらビームを放ち続ける。
《キャラ!やめろ!》
《うるさい!私に命令するな!》
ゲーマルクを止めようとジュドーは必死に距離を詰めるが、そんなZZに向かってゲーマルクがビームを乱射する。
《ジュドー!》
ZZを狙うゲーマルクをアムロの零式が攻撃する。
《アムロさん!待って!》
《ジュドー!ダメだ!話が通じる状態じゃない!このままじゃ味方がやられる!》
《そうだけど!》
《ジュドーが出来ないなら私がやる!》
《アムロさん!》
アムロの零式がゲーマルクの背後に回り込み、ライフルを撃ち放つ。
それはゲーマルクを直撃し、左腕を吹き飛ばす。
《零式?アムロ・レイか!やったな!》
被弾した事により、キャラが逆上して零式に向かって激しくビームを放つ。
《ええええい!墜ちろぉぉ‼》
「くっ!」
激しいビーム攻撃を躱しながら、アムロがゲーマルクの隙を窺う。
ゲーマルクのビーム砲のエネルギーが切れた瞬間、零式のライフルがゲーマルクの頭部にあるメインカメラを撃ち抜いた。
「やったか?」
しかし、キャラはそれに怯むことなく攻撃を続けてくる。
「なんて奴だ!」
アムロが舌打ちをし、キャラの攻撃を躱す。
そこに、アムロの零式を援護しようと、カミーユが前に出る。
《アムロさん!援護します!》
「カミーユ⁉︎ダメだ!」
狂い始めているキャラの精神状態は、思惟を人一倍感知してしまうカミーユには強烈過ぎる。
《下がれ!カミーユ!》
《あははははは!私はキャラ・スーンだ!ハマーン様の邪魔をする奴は私が倒す!》
狂ったように笑いながら迫り来るキャラの歪んだプレッシャーに、恐れていた通り、カミーユの精神が飲み込まれる。
「何だ⁉︎うわぁぁぁ!」
「カミーユ!」
一瞬怯んだZガンダムに向かい、ゲーマルクのビームが放たれた。
《墜ちろ!Z!》
「カミーユ‼︎」
咄嗟にZを庇い、アムロの零式がビームの前へと出る。
「アムロさん‼︎」
迫り来るビームに、アムロが息を止める。

『直撃⁉︎』

思わず目を閉じ、身構える。
アムロの脳裏に、シャアとカイルの顔が浮かぶ。
『ごめん!カイル!ごめん!シャア!ずっと傍にいるって言ったのに…』
アムロが死を覚悟したその瞬間、目の前が眩しい光に包まれた。

『ダメぇぇぇ!』

小さな子供の声と共に、まるで光のバリアが出来たかの様に、ビームが弾かれ霧散する。

「なんだ⁉︎零式やZガンダムにiフィールドは搭載されていない筈だ!」
自身の放ったビームが弾かれ、キャラが驚きに目を見開く。
そして、アムロも同じく、目の前で起こった出来事に驚愕する。
「なに?子供の声?守ってくれた⁉︎」
根拠など何も無かったが、アムロは声の主である子供が、自分を守ってくれた事を感じる。
《アムロさん、これ…》
《カミーユも聞こえた?》
《はい…》
某然とするアムロ達の前に、ジュドーとクワトロが援護に入る。
《無事か?二人とも!》
《クワトロ大尉…はい、大丈夫です》
カミーユが答えると、クワトロがホッと息を吐く。
《よし、二人は下がれ!》
《りょ、了解…》
百式とZZの介入により、形勢が悪くなったキャラが、ハマーンの指示で撤退をする。

それを見送ると、クワトロは零式の元へと百式を移動し、コックピットから出て、零式のコックピットを叩く。
《アムロ!開けろ!》
苛立ちの篭った声に、アムロが慌ててコックピット開く。
「シャア…」
零式のコックピット内に入ると、クワトロはコックピットを閉じてヘルメットを脱ぐ。
そしてアムロのヘルメットも脱がした。
アムロの髪がフワリと無重力の空間に舞い、ヘルメットの下から現れた頬を両手で包み込み、その顔を見つめる。
「アムロ…」
アムロの頬を何度も摩り、その体温を確かめる。
「…無事で…」
もう一度アムロの顔を覗き込むと、ギュッとアムロを抱きしめた。
「……っ」
「シャ、シャア…」
何も言わず、ただ強く抱きしめるシャアに、アムロはどれだけ心配させてしまったのだろうかと心が痛くなる。
「ごめ…シャア…!」
シャアの背中に手を回し、アムロもシャアを抱きしめ返す。
「…君が…死んでしまうかと…」
少し身体を震わせながら、絞り出すようにシャアが呟く。
「心配掛けてごめん!シャア、ごめん!」
今になってあの瞬間の恐怖が込み上げ、アムロが身体を震わせる。
「っ…」
「アムロ!」
「シャア…私…私…」