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転落と追放

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アテネ市内のとある飲み屋。
エロール・ガーナーがかかってそうな雰囲気のいいバーのカウンター席が、黄金聖闘士二人の定位置である。


2005年のF1カレンダーが発表されたため、二人はバーにて来年はどこに行こうか相談中であった。
取り敢えずシュラは、スペイン、モナコ、バレンシア、アフロディーテは開幕戦、モナコ、ベルギーに行く予定である。
早目に観戦するGPを決めておかないと、教皇にチケットを取ってもらえないのだ。
大方の予定が立った後、アフロディーテはこんな話をし出す。
「知っているか、シュラ?」
同僚に問われ、JPSの煙を細く噴き出すシュラ。いきなりそんな事を訊かれても困る。
「何をだ?」
「情報提供料」
「……マスター、マティーニと、マルガリータ。で、何の話だ?」
「ミロがフランス語の猛特訓中だという話だよ。カミュから宿題を出されたらしいのだ。アルベール・カミュを原書で読んで、レポートをまとめろとね。レポートの内容が合格なら、カミュが一ヶ月間ミロの食事の面倒を見てくれるらしい」
ミロは弱いくせにギャンブルが好きで、カジノに行ってはオケラになっていた。
オケラになる度に白羊宮に上がり込み食事をねだっていたのだが、なにせムウのところには『あの』教皇がいる。
あまりにもただ飯食らいの回数が多いため、先日教皇から卓袱台返しを食らったらしい。
そこで友人であるカミュの元へ押し掛けを始めたミロであったが、カミュも弟子を二人抱える身。
これ以上食費が増えてはかなわないと、ミロに相当な難問をふっかけたようなのだ。
「……ミロには無理な宿題だな」
聖域の共通語はギリシャ語だ。ギリシャ人であるミロは、他の国の言語をほとんど解さない。
何事もギリシャ語で通じてしまうので、他の言語を覚える必要性がなかったのである。
「いや、私に言わせればカミュは甘いよ。『原書を読め』とは言っているが、『レポートもフランス語で書け』とは言っていない。よってだ。訳書を読んで、適当にギリシャ語でレポをまとめてしまえば、なんとかなってしまう。それに原書と訳書の違いは、フランス語を解する人間に教えてもらえばいい。ミロはミスティを拘束してまでフランス語を特訓しているようだけど、ミスティに原書と訳書を読ませ、原書のニュアンスや翻案してある箇所のみをチェックさせた方がよほど効率がいい」
アフロディーテはマルガリータを口に運びながら、淡々とそう話す。
シュラは煙草の灰をポンと灰皿に落すと、
「……それをミロに教えてやったのか?」
するとアフロディーテは片手を上げて肩をすくめた。
「まさか!カミュから恨まれたくないからね。それに、必死に学問に励むミロを対岸の火事よろしく見守るのも悪くないだろう?」
「お前、顔だけじゃなく性格もかなりよかったのだな……」
「今頃気付いたのか?マスター、マルガリータもう一杯」
「俺も、マティーニもう一杯」
だが、二人は忘れていた。
ミロがムウやカミュにそっぽを向かれたら、自分たちのところに押し掛けるであろう事を。

その頃天蠍宮。
「ミ、ミロ様、いい加減に白銀聖闘士の仕事をさせて下さい!
ついでに体を清めさせて下さい!美しいこの私が一週間も風呂に入れないなんて!!」←リストリクションで拘束中
「オレが『異邦人』を原文で読めるようになったらな」
「(どうせ訳書で読んでも内容理解できない癖に……)難しいのでは?」
「待ってろ、ボルシチーーーーーッ!!!ブリンーーーーッ!!」←聞いていない


特に前置きはないが、アテネ市内のいつもの飲み屋。
カウンター席に陣取るは、店の常連のシュラ、シュラに相談事を持ちかけたミロ、そしてたまたま聖域に駐留していたデスマスクの三人。
シュラは煙草をふかしつつ、マスターに苦情を述べる。
「……マスター、どうして俺が来るとBGMが必ず『Fly Me To The Moon』なんだ!」
「ギャハハハハ!!!」
「笑うな!蟹! 」
「シュラはこの曲嫌いなのか?」
「ミロ、お前……分かってて言ってるのか?」
シュラはこの曲を聞くと紫龍と無理心中した事を思い出すので、あまり聞きたくないのだ。
ミロはカウンターに座るなり、スカーレット・オハラを注文。
その名の通り赤い色したカクテルで、クランベリージュースベースのため甘めで飲み易い。
……名前が自分の必殺技に似ているせいもあるのだが、ミロはこのカクテルを好んだ。
「ピアノマン!『Round About Midnight』を弾いてくれ……!さて、ミロ。俺に相談とは、生活費の事か?」
「ああ。今月もうヤバいんだよ……お前、ギャンブル強かっただろう?何かいい手段はないか?」
デスマスクは煙草をふかしつつ笑ってしまったので、思いっきりむせる。
アホだ、こいつはホンマもののアホだ!!とイタリア語で呟いているが、ギリシャ語しかわからないミロは、きょとんとした顔でデスマスクの顔を眺めている。
シュラはいつもの事なので、顔色変えずにしてマティーニを注文。
デスマスクの言葉がわからないので、ミロは首を傾げながら、
「デスマスク、オレ何か変な事言ったか?」
するとデスマスクはゲラゲラ笑いながら、
「ギャハハハハ!!!!お前、本当に馬鹿だな~~、ミーロちゃん」
「ぶ、ブハッ!煙草の煙を吹き掛けるな、デスマスク!オレのどこが馬鹿なんだ!」
『どうして俺、こんなのと飲みに来ているのだろう』
呆れて口を挟む気力がないシュラ。黙々と酒と煙草が消費されていく。
そんなシュラを横目に、デスマスクは相変わらずの嘲笑口調でミロを構い倒していた。
「馬鹿って、それしか言い様がないだろうが!お前は自分の給料の管理も出来ねーのかよ」
「聖衣に見捨てられた奴から言われたくないな!!」
「なんだと?貴様言ってはならない事を!!!」
「止めておけ、デスマスク。店に迷惑がかかる。『雉子も鳴かずば撃たれまい』はお前の言葉だろう?」
「ケッ!マスター、ブラック・ルシアン!」
「で、何かいい手はないのかよ、シュラ。オレ今月、マジでヤバいんだよ……」
デスマスクはシュラに釘を刺されたにもかかわらず、軽口を止めない。
「知り合いのマフィアのバイト紹介してやりてーけど、世間知らずのミ~ロちゃんにはちょっと荷が重いかなー」
明らかにミロをバカにしている口調である。ミロの右手の爪が、真紅に染まり、そして伸び始めていた。
「きーさーまー……アンタレスまで一気に食らいたいか!!!」
「止めておけ、ミロ!世間知らずは当たっているだろうが!デスマスクも大人なら少しは口を謹め!」
シュラはこの時、シベリアの海よりも深く思い知った。この二人と一緒に酒は飲めないと。
飲み仲間のアフロディーテは、本日は里帰り中。
生意気な口を叩かれてもいい、財布はこっち持ちでもいい。
安心して酒が飲める奴と飲みたい……。
「いいか、ミロ。ギャンブルというのはあくまでも遊びだ。あくまでも『遊んでいる』事を忘れるな。
金が儲かった時は、『臨時収入があってラッキー』くらいに考えろ」
「あ~、成る程。ギャンブルで食ってる奴の言うことはやっぱり違うな」
ミロはあっけらかんとしている。段々ミロと付き合っているのが馬鹿らしくなってくるシュラ。
作品名:転落と追放 作家名:あまみ