二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

転落と追放

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

さて、顔面曇天のシュラとは対照的に、薄日が差した表情のデスマスク。
新しい煙草に一本火をつけると、仕切り直しとばかりににやりと笑ってこんな提案。
「どうせなら、シュラに弟子入りすればいいんじゃねぇか」
「グホッ!!!!」
それを聞いて、激しくむせるシュラ。苦しそうに咳き込むシュラを横目に、デスマスクは話を続ける。
「お前みたいな派手な容姿の奴が凄腕ギャンブラーと一緒にカジノに行けば、他のお客の注目の的だぜ?
アフロディーテみてーに、金持ちのパトロン見つかるかもしれねーし」
シュラのむせている理由に気付かないミロは、目をキラキラさせてデスマスクの話に夢中になる。
「デスマスク、お前結構いい奴だったんだなー!」
「なんといっても愛と正義のアテナの聖闘士だからな!気付くのが遅せぇよ、坊や」
「よし!こうしてはいられないな。シュラ、オレを弟子にしてくれ!」
ミロは思い付いたら吉日タイプ。
だがシュラはそんなミロを無視し、カウンターにいるマスターにカクテルを注文。
「マスター、『ブルー・ムーン』を1杯」
「お前がマティーニ以外を頼むのは珍しいな」
ミロが目を瞬かせる横で、またもデスマスクが爆笑している。
「シュラ、お前!遠回しに言い過ぎだぞ!」
「おい、それどういう事だ」
「あのなぁ、ミロよ。『ブルー・ムーン』ってのは『できない相談』って意味だぜ?フハハハッ!」
シュラは新しいタバコに火をつけつつ、心の底から呟いた。
「……貴様らとはもう二度と酒は飲まん」

意気揚々と天蠍宮に帰ってきたミロを、未だ監禁中のミスティはゾンビのような視線で眺めた。
「ミロ様、いい加減に帰らせて下さい…カミュ様も努力は認めてくれると思います…」
「あいつは厳しいからなぁ。無理だな」
「(あんたがこの数カ月でフランス語マスターする方が無理だよ!!)そうでしょうか?」
「小宇宙を燃やせば、不可能な事はないッ!」
意気揚々と初心者向けのテキストを開くミロだが、彼の究極の小宇宙は言語習得にはあまり向いていないらしい。
ミスティは口からエクトプラムズを出しそうになっている蠍座の黄金聖闘士を見つめながら、
「あのミロ様……前々から思ってたのですが」
「何だ」
「カミュ様に直接フランス語を習った方がよかったのではないでしょうか?カミュ様のところに住み込んでフランス語を習えば、食事も世話してもらえるでしょうし」
盲点である。今まで何故こんな簡単な事に気付かなかったのだろうか。
(「坊やだからさ」)
ミロは電撃に撃たれたかのように身を震わせるとリストリクションを解き、ミスティに帰るようにジェスチャーする。
滝涙を流しながら天蠍宮を後にするミスティ。風呂に入れると大喜びだ。

さて、アテネ市内のいつもの飲み屋。シュラはアフロディーテと一杯やっている最中だった。
「知っているか?ミロの奴、宝瓶宮に住み込んでフランス語を特訓するそうだ」
「しばらくは聖域も平和になりそうだね」
心無しかホッとした表情のアフロディーテ。
カミュがミロの面倒を見てくれれば、シュラや自分の元にメシをねだりにくる事はない。
アフロディーテはマルガリータを口に運ぶと歌うような口調で、
「『Mais jetais trop jeune pour savoir l'aimer』なんてね」
「星の王子様か?『あんまり小さかったから、あれを愛する事がどんな事かわからなかった』」
「君も結構読んでいるのではないか?」
「子供の頃ちょっと読んだだけだ」
……その時、ガタッとフロアから物音。どうやら他のお客が席を立ったようだ、が。
お客はつかつかと二人の背後に歩み寄ると、ガシッとシュラの肩に腕を回した。
「お前ら……しっかりフランス語できるんじゃねーかよ!!!」
「み、ミロ!何時の間にこの店に!」
シュラとアフロディーテの目が、大きく見開かれる。
ミロは唾を飛ばしながら、
「お前らが来る前からいたぞ!何だか恥ずかしいから小宇宙を消して隠れていただけだ」
「気付かなかった……」
アフロディーテ、一生の不覚。
「カミュがフランス語の特訓しろっていってたから、明日から双魚宮に通う。カミュは明日からシベリアに行っちまうからな」
「君も一緒に行けばいいではないか」
「俺、寒いの嫌いだから」
「いや、とにかく、それは困る。私にも都合というものがあるのだ。明朝からサガと一緒にロンドンに……」
「じゃぁ明日の10時」
「ちょっと待て!私にも都合があるのだ!」
ミロさん、アフロディーテの話を聞かずに勝手に決めると、さっさと店から出ていってしまった。
カウンターで頭を抱えるアフロディーテ。
「今、ちょっとだけカミュの気持ちがわかったよ。対岸の火事と思っていたのに、こんな事になるとはな」
「マスター、こっちの美人にマルガリータをもう一杯」
こうして話は振り出しに戻る……。
作品名:転落と追放 作家名:あまみ