さみしさの後ろのほう 11~15
15
向かったのは帝の所属するクラス。行った事は無かったものの、今頃あそこに居るんだなあ、なんてよく意識していた。
空いたままの引き戸から見えたのは生徒達で出来た人だかり。その中にすらりとした細い背中が見当たらない。
きっと責任感の強い奴だから、しっかりした優しい奴だから、輪の中で叫んだ女子生徒の世話でもしてるんだ。そうに違い無い。
落ち着かない左胸を抱えたまま人だかりに入っていく。澄んだ黒色をした切れ長の目を見ればきっと大丈夫。貴方授業はどうしたんですか、と怒られて、安心する。それだけの事。
人だかりを掻き分け見たのは倒れた椅子、男子生徒二人に支えられ上半身を起こし、叫んだのと同じ声の女子生徒に苗字を呼ばれ続けている黒髪。
俯いていた所為で顔は伺えなかった。けれど床に投げられた足と力の抜けた腕でどんな状態かは嫌でも分かる。大丈夫か、と聞かれる声に返事もしない。帝が自分を心配する声に答えないような奴では無い事は言うまでも無い。
「本田君、しっかりして、本田君!」
声が遠く近く聞こえる。本田君、本田君、ほんだくん、ほんだくん。
どうして?どうしてこんな事に?なあ、帝。どうして?
体調が悪かったのか?全然気づかなかった。昨日まで普通に話をしていたのに。今朝も窓から登校してくる所も見たがおかしい所は無かった。
普通?普通ってなんだ?
俺はちゃんと分かっていたんだろうか?こいつの事分かっていたんだろうか?
自分の抱える淋しさを埋めたくて埋めたくてしょうがなくて。
でも帝はどうだったんだろうか?淋しかった?俺が傍に居た筈なのに、淋しかった?
頭の中が真っ白になった。
向かったのは帝の所属するクラス。行った事は無かったものの、今頃あそこに居るんだなあ、なんてよく意識していた。
空いたままの引き戸から見えたのは生徒達で出来た人だかり。その中にすらりとした細い背中が見当たらない。
きっと責任感の強い奴だから、しっかりした優しい奴だから、輪の中で叫んだ女子生徒の世話でもしてるんだ。そうに違い無い。
落ち着かない左胸を抱えたまま人だかりに入っていく。澄んだ黒色をした切れ長の目を見ればきっと大丈夫。貴方授業はどうしたんですか、と怒られて、安心する。それだけの事。
人だかりを掻き分け見たのは倒れた椅子、男子生徒二人に支えられ上半身を起こし、叫んだのと同じ声の女子生徒に苗字を呼ばれ続けている黒髪。
俯いていた所為で顔は伺えなかった。けれど床に投げられた足と力の抜けた腕でどんな状態かは嫌でも分かる。大丈夫か、と聞かれる声に返事もしない。帝が自分を心配する声に答えないような奴では無い事は言うまでも無い。
「本田君、しっかりして、本田君!」
声が遠く近く聞こえる。本田君、本田君、ほんだくん、ほんだくん。
どうして?どうしてこんな事に?なあ、帝。どうして?
体調が悪かったのか?全然気づかなかった。昨日まで普通に話をしていたのに。今朝も窓から登校してくる所も見たがおかしい所は無かった。
普通?普通ってなんだ?
俺はちゃんと分かっていたんだろうか?こいつの事分かっていたんだろうか?
自分の抱える淋しさを埋めたくて埋めたくてしょうがなくて。
でも帝はどうだったんだろうか?淋しかった?俺が傍に居た筈なのに、淋しかった?
頭の中が真っ白になった。
作品名:さみしさの後ろのほう 11~15 作家名:志乃