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Jewelry Angel

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十二宮の最後、双魚宮を護る魚座のアフロディーテは、聖域駐留中は自宮で本を読んでいるか、薔薇園で魔宮薔薇の手入れをしている。
彼はアイオリアやアルデバランのように、雑兵に稽古を付けるといった仕事は全くしない。
というのも、何かあるとすぐに教皇の間に呼びつけられて、書類仕事の手伝いを依頼されるからだ。
闘技場にいては、呼び出しにすぐに応じられない。

その日アフロディーテは、部屋で読書中だった。
久しぶりにエラリー・クイーンが読みたくなって、ドルリー・レーンのシリーズを通し読みしていた。
『Yの悲劇』を半分くらいまで読み進めたところで、壁にかけられた内線が鳴る。
妙に癪に障る電子音に、アフロディーテは柳眉を顰める。
ああ、この時間ではまたデスクワークのヘルプか?まったく、聖域に留まるとすぐにこれだ。
内心小さく舌打ちをしながら、アフロディーテは受話器を取る。
「Hello?」
どうも癖で、電話に出る際は英語が出てしまう。
普段からグラード財団の仕事をこれでもか!とやらされているせいだ。
いや、仕事自体は決して嫌いではないが、財団の仕事ばかりしていると、自分は黄金聖闘士なのか、グラード財団の職員なのか、わからなくなる。
『アフロディーテか?』
内線をかけて寄越したのは、サガだった。
「何でしょう、サガ。また書類の手伝いですか?」
語学力のあるアフロディーテは、年中翻訳の仕事の補助(ただ、仕事量的には補助と言ってよいレベルではない)をしている。
今回もそうかと思っていたが、サガは妙に歯切れが悪い様子で、
『いや、教皇がお前に話があるそうだ』
「勅令ですか?」
駐留中に勅令とは、また珍しい事もあるものだ。
聖域駐留中は事務仕事で頻繁に呼びつけられるため、出張は絶対に頼まれない。
するとサガは非常に言い辛そうに、
『勅令では、ない』
「…………?」
ますます意味が分からない。勅令でもないのに教皇が直接話をしたいとは、一体何なのか。
個人的用事であれば、白羊宮に帰る途中双魚宮に寄ってちょっと話をしていけばいい。
現に教皇はアフロディーテに用事がある際は、いつもそうしている。
わざわざ教皇の間に話があると呼びつけ、しかも勅令ではないという。
では、何だ。
アフロディーテがこの呼び出しに腑に落ちないものを感じているのを、サガは声の調子から察したようだ。
『お前の気持ちはよくわかる』
「サガは、教皇から何か聞いていらっしゃるのか?」
『さて』
そうはぐらからすサガ。
『勅命でもないのに教皇の間に呼びつけられるなど、それを訝しく思う気持ちはよくわかると言ったのだ』
「ほぉ……」
電話口で目を細めるアフロディーテ。
この言い繕い方。
サガは絶対に何かを知っている。
そう、確信した。
『特に急ぐというわけではないが、色々都合があるので3時くらいまでにはこちらに来てくれ』
業務連絡を一方的に告げたサガは、アフロディーテの追求を避けるようにさっさと内線を切ってしまう。
つーつーと鳴る受話器を苛立たしく元に戻したアフロディーテは、深い深いため息をつくと身支度を始める事にした。
サガのあのリアクション。
絶対に、確実に、ろくな話ではない。

アフロディーテは事務仕事で教皇の間に出向く際、きっちりとしたビジネススーツを着用する。聖衣ではパソコンを操作できないからだ。
サガも執務室で仕事をする場合はアクアスキュータムのスーツ姿なので、この二人だけを見ると、執務室はどこかの小さな企業の事務所に見える。
…アイオロスがジャージで、シオンが法衣で仕事をしているので、それなりに台無しだが。
「教皇、アフロディーテ御前に」
謁見の間の玉座の裏の緞帳を上げると、小綺麗にまとまった教皇の執務室がある。
シオンは自分の机の上で書類を整理している最中だったが、アフロディーテの来訪に気付くとほんの少しだけ困ったように表情を陰らせた。
アフロディーテの来訪を嫌がっているのではない。
『さて、どう話を切り出そうか』と、言葉を選んでいる顔だった。
「思ったよりも早かったな、アフロディーテ」
「用事は早いうちにこなしておくのが吉でしょう」
「全くだ」
そう応じるシオンの秀麗な顔立ちは冴えなかった。
『教皇がこんな顔をなさるなんて、珍しいな』
シオンの見せる見慣れない表情に、アフロディーテは内心胸騒ぎを押さえ切れない。
『何が、あるのだろうか』
綺麗な顔の下で思案を巡らせているアフロディーテに、シオンは言葉を選んでいるというか、いや、非常に言い辛いから言葉が滑らかでないというか、いつもの厳格な教皇からは信じられないような、ハッキリしない物言いでこう告げた。
「アフロディーテよ、私は……お前を聖闘士の頂点に立つ、黄金聖闘士に相応しい男だと思っておる」
こんなことをあんな口調で言われても、アフロディーテも困る。
どう応じろというのだ。
取り敢えず、ここは。
「お誉めに与り恐悦至極。この魚座のアフロディーテ、教皇から斯様なお言葉を賜り、望外の喜びでございます」
普段なら絶対に使わないような面倒くさい言葉遣いで、アフロディーテは礼を述べた。
恭しく一礼する美しい部下への話は、まだ続く。
「故にだ。お前を女神の依頼とはいえ財団の仕事に注力させているのを、私は非常に心苦しく思っておってだな……」
「お気になさらずに、教皇」
芝居めいた口調でそう返すと、シオンは偏頭痛持ちのようにこめかみに手を当て、アフロディーテにある書類を放り投げる。
「そうか。私はお前に財団の仕事を任せてばかりで、すまないと思っておった。これを見よ」
シオンの言葉を聞き、アフロディーテは慌てて書類を開く。
メールをプリントアウトしたもののようで、送信者は東京のグラード財団、アテナのハゲ執事のアドレスになっていた。
英語で書かれたそれをさっと読むアフロディーテ。英文を読むのは、早い。
読み進めるうちに、アフロディーテの美貌が歪む。
シオンはこの内容を知っていたが故にあのような物言いになってしまったと、この時アフロディーテはようやく悟った。
「アフロディーテよ、私は正直、お前にこの仕事をさせたくは、ない」
シオンは厳しい事は厳しいが、情に厚く、結構部下想いであったりする。
シオンとそれなりに接した事のある人間は、皆それを知っている。
無論、ここにいる3人の黄金聖闘士たちも。
「……教皇、私はこの仕事は……お引き受けするわけには参りません」
書類をシオンに戻すアフロディーテ。
シオンは『やはり、そう申すと思っておったわ』と小声で、心持ち嬉しそうに呟くと、大して残念そうな素振りも見せずに書類をサガに回した。断りのメールを入れろという意味だ。
ホッと息を吐く、アイオロスとサガの二人。
アフロディーテがこの仕事を受けると、今後同じような仕事の依頼が増え、結果聖域に駐留する期間が大幅に減り、書類仕事を手伝えなくなると予測される。
教皇の間で事務処理に勤しんでいるこの二人には、それだけはごめん被りたい未来であった。

さて、グラード財団から送られてきたアフロディーテへの仕事依頼とは、一体どのようなものであったろうか。

その夜。アフロディーテはシュラとともに白羊宮の夕食に招待されていた。
作品名:Jewelry Angel 作家名:あまみ