Jewelry Angel
アフロディーテ様はこのミスティを美男子と、自分より上の美男子と認めたようなものではないか!
勝利の快楽で身も心も蕩け切っているミスティ。
彼の脳内では、アフロディーテはミスティを自分より上の美男子と思っているため、この仕事をミスティに任せた……ということになっているらしい。
「……幸せな、ノーミソだよな」
小声でアイオロスが呟くが、サガはここで言うなと短く叱責する。
「聞こえるだろう。小声だろうと、言うな」
「だがな、サガよ」
クイッと、右手の親指でミスティを差すアイオロス。
「あの様子では、他の声は聞こえていないと思うぞ」
「それもそうだが、万が一ということもあるだろう」
「サガは心配性だな」
小さく肩を竦めるアイオロス。
お前が大らか過ぎるんだ!と言い返したいサガであったが、口の中で呟くのに留めておいた。
こうした経緯の上、ミスティはCMモデルとしてデビューすることになったのだが、この後彼にCMやモデルなどのメディアの仕事が入ることはなかった。
というのも。
「彼、すぐに『このミスティの体には、ホコリ一つ付いてはならない』って言って、シャワールーム行っちゃうんだよね。その度にヘアメイクを整えなくちゃならないから、撮影押しちゃってさー。顔も体もすごく綺麗だけど、一緒に仕事する気にはもうなれないな」
CM撮影に関わったプロデューサーはそう語る。
その後ミスティで懲りたグラード財団は、聖闘士をCMやモデルに使おうとはしなくなった。
アフロディーテは財団の仕事をこなしている最中、知り合いのエージェントからそれを教えてもらうと、ニヤリと笑った。
それは、策が見事に的中した、策士のものであった。
作品名:Jewelry Angel 作家名:あまみ