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【1】

(また、泣いている)
ここに木々は沢山あるのに。どうしてよりによって私のところで泣くのだろう、と女は当惑した。
子供がここで泣くのは珍しいことではない。だから、女はそんな子供達を慰めることはあまりなかった。気紛れに声をかけてやることもあるけれど、その声に気付く子と気付かない子の両方が居た。
今、泣いている子供はよくここに来る。否、正しくは"泣きに来る"のだ。
子供らしくなくあまりにも静かに泣くので、女はいつの間にかその子供を覚えてしまった。それからそんな姿を見ていると、心がちくちくと次第に痛み始めるようになってしまった。
(ああ、この子はきっと違うのだろう)
女は納得した。
きっとこの子は違う。
他の泣いていた子供はいつしか大きくなって、声も届かなくなった。でも、この子はいつまで経っても小さい。
女は、そっと手を差し延べ、俯き泣いている子供の頭を撫でた。
(あまり泣くものではないぞ、そなたおのこではないか)
声が届いた。
子供は俯いたまま、応えた。「……さみしいんです、でもそんなこと言ったら中国さんが困るから」
女は近寄って子供を抱きしめた。
小さな手が薄紅の着物をつよく掴んだ後、涙がぴたりと止まった気配があった。
「……冷たい、けど、……あったかい、です」
小さく告げられた安堵の言葉に、女は嬉しくなって何十年かぶりに笑った。

作品名: 作家名:はるひと