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【2】

「お前が日本の言ってた"さくら"あるか?」
(中夏の君ではないか。久しいの)
「そうあるなー、久しぶりある」
女は、目を細めた。
すると、つられて中国もニっと笑った。中国は日本を"弟"と呼ぶが、随分違う笑い方をすると発見して、なんだか可笑しかった。
「日本はよくここに来るあるか?」
(小さき頃はよく)
――泣きに来た、とは言わなかった。
しかし、中国はなんとなく分かっているらしい。女を見上げて尚も、静かに笑った。
「なぁ、さくら?日本がまたここに来たらよろしくあるな」
(……言われなくとも)
中国の着物の裾が春の風に揺れた。ひらひらと翻るそれは、まるで川を上る魚の背のような色合いだ。
「日本は……いつか、きっと我の前では泣かなくなるある」
風に浚われてしまいそうな声だった。
(そんな泣きそうな顔をして。中夏の君らしくもない)
「泣いてないある!」
そうやってムキになるところは、日本とよく似ているではないか。思ったが、それは心の内にしまった。

作品名: 作家名:はるひと