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【3】

「この桜には、心が宿っているそうで」
日本の解説がなくてもイギリスには分かっていた。先程から美しい女性がこちらを見て、笑っているではないか。黒い髪、薄ピンクの着物は前時代のものか。日本が休日に着ているものとは少し形が違う。
「この桜などは、まるで女性のようで」
桜の下の女性が笑った。まるで鈴を鳴らしたような笑い声に、耳元がくすぐったい。
「もうずっと前からここに来てるんです。春になって桜が咲く時期になると、不思議とここに来てるんですよね」
「……そうか」
日本が桜の木を見上げて、表情を和らげた。
そうしたら、女性も一層柔らかい笑顔になる。
「……ずっと、日本と一緒に居たんだな」
呟いたら予想外に声が帰ってきた。
(そなたは、日本がよく話して居た英国とやらだな?)
日本には聞こえていないらしい。だから、イギリスは頷くだけで、声に応えた。
(日本がそなたを愛しいという。ならば、私も同じ様にしよう)
なんて、直球な。
まるで口説かれたような心地で、イギリスは思わず赤面した。それに、日本が自分を愛しいなんて、聞いてない。
イギリスは日本の横顔をついに見れなくなって俯いた。
鈴のような笑い声はまだ聞こえている。

作品名: 作家名:はるひと