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Paper Cuts 4

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Paper Cuts 4


アムロの腕を掴んだまま、シャアが優しくアムロに問い掛ける。
「もう一度、君の口から真実を話してくれないか?」
そのシャアの優しさに、アムロは居た堪れないものを感じる。
スパイとして重要な情報を連邦に流した、言わば自分は犯罪者だ。いくら番いだとは言え、許されることでは無い。
まだ犯人が自分だとジオン内部には漏れていないかもしれないが、この事で間違いなくネオ・ジオン内でのシャアの立場は悪くなるはずだ。

それに、何故こんな事をしたのか、自分が話さなくても、おそらくシャアは全てを知っている…。
「…どうせ…全部…知ってるんだろう?」
「全てとは限らない。私は、『君から』から真実を聞きたい」
手首を掴んでいた手が離され、滑るようにアムロの手のひらをシャアが優しく包み込む。

「なんで…」
アムロが泣きそうな表情を浮かべ、拳を握りしめる。
「優しくするなよ…」
「君には相応の理由があったのだろう?」
「……」
「その事に、私も無関係では無いはずだ」
ビクリとアムロが肩を震わせ、目を伏せる。
「アムロ、話してくれないか?」
優しく問い掛けるシャアに、アムロは首を横に振る。
「アムロ?」
「…言えない…」
「何故?」
「……貴方は…5thルナをラサに落とす作戦以上に恐ろしい事をしようとしているだろう?」
「アムロ、私の質問に答えろ」
「貴方が俺の質問に答えてくれたら…話すよ」
暫くの沈黙の後、シャアが溜め息混じりにコクリと頷く。
「良かろう…。ただし、君も嘘偽りなく、全てを話すと誓ってくれ」
「……分かった…」
シャアは真っ直ぐにアムロの目を見つめ、包んでいたアムロの手をギュッと握る。
「私は、地球の重力にしがみ付く人間を全て宇宙に上げる」
「全て…宇宙に?」
アムロが訳が分からないと言った表情を浮かべる。
「地球の汚染が限界に来ていることは分かっているだろう?私は地球を汚染し、地上から宇宙を支配しようとする愚かな人間達を粛清する」
「粛清って…」
「隕石を…地球に落とす」
「隕石⁉︎しかし、地球圏内の隕石は全て連邦が管理している筈だ!」
「アクシズだよ。既に手は打ってある」
「アクシズだと⁉︎あんなデカイのを落としたら地球全体が核の冬になって、人間どころか動物すら住めない星になってしまう!」
「それが狙いだよ。言っただろう?いままでどんな独裁者もなし得なかった所業だと」
想像だにしなかったシャアの言葉に、アムロはただ唖然とする。
ーーーこの男は今何と言った?
地球にアクシズを落とす?
そんな事…一人の人間がする事なのか?
言葉を失い、呆然とするアムロにシャアが苦笑を漏らす。
「私は話したぞ、さぁ君の番だ」
「待て!何だってそんな事をするんだ?」
「それは君が一番分かっているのではないか?醜く腐り切った連邦の上層部、留まるところを知らない汚染、それを止める為にはこれしかあるまい?」
「そ…れは…、でも!地球にはセイラさんだって居るんだぞ!貴方、実の妹を殺す気か!」
セイラの名に、一瞬シャアに瞳が揺れたが直ぐにいつもの瞳に戻る。
「連邦に大々的に戦線布告をする。それでも彼女が地球に留まるのならば仕方があるまい」
「仕方がないって!」
必死に縋り付くアムロをシャアが冷めた瞳で見つめる。
「もう決めた事だ」
「今ならまだ引き返せる!」
そんなアムロの言葉も、シャアは小さく首を横に振って否定する。
「さぁ、アムロ。私の話はここまでだ。君の話を聞こうか?」
「シャア!待て!」
「終わりだ、君の話を」
その冷たい声にアムロはグッと息を止めると、シャアの袖を握る手を緩める。
「……」
「アムロ、約束だ」
「…分かってる…」
アムロは小さく深呼吸をすると、ゆっくりと顔を上げてシャアのスカイブルーの瞳を見つめる。
「…連邦に…大切なものが…人質にとられている。だから、俺は何があろうと連邦に従う…」
「大切なもの?」
「……子供だ…」
アムロは目を閉じてもう一度呼吸を整えると、続きを語り始める。
「前に…子供は死産だったって話したけど…子供は…双子だったんだ」
「双子?」
「ああ、一人は前に言った様に死産だった…しかしもう一人は…奇跡的に命を取り留めた」
アムロの話を、シャアは静かに聞いていた。
そんなシャアをアムロが悲しく見つめる。
「その感じだと…調べはついていたみたいだな」
シャアは何も答えず、アムロに続きを促す。
「早産だった上に死にかけの俺から生まれたからな…生きてるとは言っても…生命維持装置が無ければ直ぐにでも死んでしまう状態だ…」
保育器の中で様々な管に繋がれた三百グラムにも満たない小さな身体を見た時、心が痛んだ。
しかし同時に愛しさも込み上げてきた。
シャアと自分の子供。小さな身体で、それでも一生懸命生きようとしている。
「本当にこのまま無事に成長出来るかも分からない…障害だってあるかもしれないけれど…それでも…生きてるんだ…。俺が命令に従う限り…生かし続けてくれる…」
もしも死んでしまったら、もう一人の子供同様、切り刻まれて標本にされてしまうだろう。
研究者達にとってはただのサンプルであり、連邦の上層部にとっては、自分を従わせる為の人質。
その命の重さは、他人にとってはなんて軽い…。
アムロはギュッと拳を握りしめ、シャアを見上げる。
「貴方を裏切ってでも…守りたいんだ…」
アムロの、哀しくも、強い意志を持った琥珀色の瞳に、シャアはゴクリと息を飲む。
その瞳の輝きは、こんな時でさえシャアの心を惹きつけ離さない。

「……そうか…」
番いである自身よりも子供を取ると言うアムロに、不思議とショックは受けていない。
それがアムロと言う人間だと分かっているから。
何より、その子供は自身とアムロとの子供なのだ。
シャアはそっとアムロを抱き寄せ、その腕の中に閉じ込める。
そしてその温もりを、愛しい存在を心と肌で感じ取り、更に愛しさが込み上げる。
「アムロ…」
「だけど…俺がスパイだってバレてしまったからな…おそらく子供はもう…」
アムロは額をシャアの胸に押し付け、唇を噛み締める。
「なぁ…俺を…地球に降ろしてくれないか?」
「アムロ?」
「せめて…切り刻まれる前に…子供を取り戻す…。その後なら俺を殺してもいいから…」
小さく震えながらも、強い光を放つ瞳にシャアは息を飲む。
そして、グッとアムロの両肩を掴む。
「落ち着け、アムロ。早まるな。君に繋ぎをつけていたスパイはまだ泳がせている。だからまだ君がスパイだとバレた事は連邦に伝わっていない」
「え?」
「何度も言うが、私は君を手離すつもりは無い。それにそのスパイ供は逆にこちらで利用させて貰う」
ニヤリと笑みを浮かべるシャアに、アムロが困惑の表情を浮かべる。
「シャア、分かっているのか?俺は貴方を裏切ってたんだぞ」
「私との子供の為だろう?」
「でも、その子はとてもじゃないが貴方が望むような後継者にはなれない」
この先、ちゃんと育つかも分からない程の超未熟児だ。
「そんな事は関係ない」
「シャア?」
作品名:Paper Cuts 4 作家名:koyuho