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バー・セロニアスへようこそ 前編

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戦士としての勘が、オルフェの用件に関わるなと告げているのだ。
しかし、その勘に従うにはタグ・ホイヤーは魅力的過ぎたし、物欲に打ち勝つにはファラオは若過ぎた。
「待て!」
昼寝をしていたケルベロスが起きてしまう位の声量。空間を切り裂くような、鋭い制止。
オルフェは肩越しに緩慢に振り返ると、
「どうしたの?何か用?」
「・・・頼み事だが、私で力になれる事か?」
それ来た!とオルフェは内心小躍りしたいような心境だった。
しかし、このままあっさりと相手の要求に乗っては、優位を保てなくなる。もう少し焦らす必要があった。
「でも、僕に用事頼まれるのイヤでしょう?」
眉間と目許をちょっと動かして、心底済まなそうな顔を作ってみせる。
ああ、きっと今の自分はハリウッドスターになれる。オルフェはそう確信した。
ファラオは更に焦ったような様子で、
「・・・こ、困っている人間を助けるのは、慈悲深いハーデス様の望まれるところだ!
ハーデス様の臣下たるもの、そのお心に従うのは当然!」
と訳のわからない理屈をこね出し始めた。
「じゃ、君の方から進んで僕のお願いを聞いてくれる訳?」
「当然だ!」
勝った・・・とオルフェは小さく拳を握った。
しかしそんな感情を全く顔に出さずにテラスに戻ると、ファラオに向いた。
「それではお願いしようか。君にしかお願いできない事なのだけどね・・・」
柔和な、ユリティースが心底愛したであろう甘い笑顔で語り出すオルフェ。
そして時計の包みに気がいっているファラオ。
ファラオの悲劇はこれから始まるのであった・・・。