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楽しい羊一家 その1

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発熱時の弱気


ぴた……と、頬に冷たい何かが押し当てられた。
火照っている肌には、その冷たさが心地よくもあり、痛くもあった。
『ああ、冷たい』
そう感じた刹那、何者かの冷たい手が自分の頬に当てられる。
滑らかな、指先。
248歳とはとても信じられない、弾力のある肌。
「ふむ……まだまだ熱は下がっておらぬようだな」
聖域を統べる教皇の、威厳ある声。だが自分には、何よりも安らげる声。
厳格な教皇と人は言うが、実は全然そんなことはないと、彼に育てられた自分はよく知っている。
厳しいは厳しいが、優しくて情があって、そして何よりも自分を可愛がってくれた。
実の子供のように愛情を注いでくれた。
くれた……と、過去形にするのは間違っている。
今も、今現在も注いでくれているではないか。
自分は両親を知らないが、もし親がいたとしても、この師匠程自分を愛してくれないような気がする。
親代わりの、親以上の存在。
それが、この師だった。
「ここのところの無理がたたったのであろうな。貴鬼は童虎の元へ預けてきた故、しばらくは療養に専念せよ」
耳元で囁かれる声。
それを聞いたら何故か無性に泣きたくなって、顔を隠すように布団に潜った。
作品名:楽しい羊一家 その1 作家名:あまみ