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楽しい羊一家 その1

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日常ワンカット 白羊宮の朝編


「昼まで眠る。起こすでないぞ」
星見から戻ってきた自分の師匠は、そう言って二階の寝室に引っ込んだ。ムウは朝食の用意をしながら、
「ゆっくりお休み下さいね」
と微笑んだ。

今朝は夜明けまでは晴れていたが、日が昇るにつれ段々と雲が厚くなり、今ではぽつりぽつりと降り始めている。
今日は洗濯できませんねぇ……とぼんやりと考えていると、テーブルの向かいで朝食をとっていた貴鬼に、
「ムウ様、どうしたんですか?なんだかボーッてしてましたけど」
などと心配をされてしまう。
ムウは安心させるかのように笑うと、
「雨なので洗濯できないなと思っただけです」
「そうですかぁ」
師の特製スクランブルエッグを口に運びつつそう頷くが、完全に納得した様子ではない。
「ムウ様、うちの洗濯機は乾燥機付いてますよ?」
「無駄にガス代がかかります」
教皇と黄金聖闘士が暮らす白羊宮は、十二宮で一番収入が多い。
そのためこのようなケチ臭いことを言う必要は全くないのだが、どうもジャミール時代の極貧生活が身に染み付いてしまっているようで、ついつい財布の紐がきつくなる。
『今少し、人並みの暮らしをしてもよいのだぞ?』
生活費を渡す際にシオンは弟子にそう告げるが、ムウは緩やかに金色の髪を揺らすと、
『屋根のある家で、温かい食事を取れて、ベッドで眠れるだけで私は幸せです』
それを言われてしまうと、シオンに返す言葉はない。
あの過酷なジャミールの地で幼少時代を過ごしたムウにしてみれば、文明の利器に囲まれ、食事にも困らない今の生活は、天国という他ない。
『そうしてしまったのは、年老いた私の無力さ故なのだがな』
どこか寂しそうに独語するシオンを、貴鬼は一緒に入浴した際に何度か目にしている。
「でもムウ様、雨降っているなら仕方ないですよね?」
更に貴鬼が続けるとムウは、
「シオン様の法衣は絹なので、乾燥機にはかけられないのですよ」
「そうなんですかー」
ならバスタオルだけでも乾かせばいいのになーと貴鬼は思うのだが、ムウは頑にそれをやろうとはしない。
そんなにガス代がかかるのがイヤなのか?と、デスマスク辺りなら皮肉っぽく訊いてくれそうなのだが、貴鬼はそれを言える立場にはないし、言おうとも思わない。
思慮深いムウの事だ、きっと何か考えがあっての事に違いない。
「明日は晴れて欲しいですねぇ」
独り言のようにムウはつぶやくと、食べ終えた食器を流しに運んだ。
作品名:楽しい羊一家 その1 作家名:あまみ