夏の銀河の片隅で
地面の上に寝転ぶと、降ってきそうなくらいの満天の星空が視界に飛び込んでくる。
背中に、法衣越しに伝わる土の湿り気。
耳元でブンブンと飛ぶ小虫。
草の上に投げ出された手に、ひんやりとした湿気と虫の這いずる感触。
今足の裏は、地球の表面をつかんではいない。
サンダルの底が外気に絶えず触れている。
額に感じる、夜の空気。
日中の熱気を孕んだそれとは違って、非常に心地よい。
夜風がさらさらと、癖のある髪を梳いていく。
大の字になり、ただ星空を見上げる。
夏の夜空にかかる天の川。真っ白なミルキーウェイ。
ああ、昔、友人からあの天の川にまつわる恋物語を聞いたような気がする。
たった一度、年に一度だけの恋人たちの逢瀬。
彦星と織姫といわれていたのは、琴座と鷲座の星だったか。
目に飛び込む、沢山の星座たち。
じっと見つめていると、まるで宇宙空間に投げ出されてしまったかのような、そんな錯覚を覚える。
地球の重力は今、しっかりと自分の体を捕らえているのに。
今自分は、宇宙の中にいるのではないか。
今自分は、星の海の中で泳いでいるのではないか。
寝転んでこう夜空を見上げていると、そんなことを考えてしまう。
……それ位、この場所は星々との距離が近かった。
星空が、美しかった。
「これが教皇の星見場、スターヒルか」
若干18歳の年若い教皇は、星見をするために今回初めてスターヒルにのぼった。
登頂自体は、然程難しくはない。
年老いたセージ教皇でも辿り着ける場所だ。黄金聖闘士ならば皆容易いだろう。
ただ、初めてこの場に登ると決めた時は、流石に足が震えた。
教皇以外の者の立ち入りを禁止された場所へ、足を踏み入れる勇気。
いくら自分が教皇に着任したからとはいっても、先日まで禁忌とされていたものをすぐに踏み越える気には、なかなかなれなかった。
だが、その感情を乗り越えた時。
彼が目にしたものは、人並みな言い方になるが、宝石箱をぶちまけ強い光を当てたような、言葉にはし難いほどの美しい満天の星空だった。
「ああ……」
この世界にはこんなに美しいものがあるのかと、まだ少年といっても差し支えないような教皇は嘆息の中でそう呟いた。
背中に、法衣越しに伝わる土の湿り気。
耳元でブンブンと飛ぶ小虫。
草の上に投げ出された手に、ひんやりとした湿気と虫の這いずる感触。
今足の裏は、地球の表面をつかんではいない。
サンダルの底が外気に絶えず触れている。
額に感じる、夜の空気。
日中の熱気を孕んだそれとは違って、非常に心地よい。
夜風がさらさらと、癖のある髪を梳いていく。
大の字になり、ただ星空を見上げる。
夏の夜空にかかる天の川。真っ白なミルキーウェイ。
ああ、昔、友人からあの天の川にまつわる恋物語を聞いたような気がする。
たった一度、年に一度だけの恋人たちの逢瀬。
彦星と織姫といわれていたのは、琴座と鷲座の星だったか。
目に飛び込む、沢山の星座たち。
じっと見つめていると、まるで宇宙空間に投げ出されてしまったかのような、そんな錯覚を覚える。
地球の重力は今、しっかりと自分の体を捕らえているのに。
今自分は、宇宙の中にいるのではないか。
今自分は、星の海の中で泳いでいるのではないか。
寝転んでこう夜空を見上げていると、そんなことを考えてしまう。
……それ位、この場所は星々との距離が近かった。
星空が、美しかった。
「これが教皇の星見場、スターヒルか」
若干18歳の年若い教皇は、星見をするために今回初めてスターヒルにのぼった。
登頂自体は、然程難しくはない。
年老いたセージ教皇でも辿り着ける場所だ。黄金聖闘士ならば皆容易いだろう。
ただ、初めてこの場に登ると決めた時は、流石に足が震えた。
教皇以外の者の立ち入りを禁止された場所へ、足を踏み入れる勇気。
いくら自分が教皇に着任したからとはいっても、先日まで禁忌とされていたものをすぐに踏み越える気には、なかなかなれなかった。
だが、その感情を乗り越えた時。
彼が目にしたものは、人並みな言い方になるが、宝石箱をぶちまけ強い光を当てたような、言葉にはし難いほどの美しい満天の星空だった。
「ああ……」
この世界にはこんなに美しいものがあるのかと、まだ少年といっても差し支えないような教皇は嘆息の中でそう呟いた。