Racingholic
セナの死から10年以上経過した。F1界も大きく変わる。
永遠かと思われたフェラーリ・シューマッハ王朝は、2005年にルノーのフェルナンド・アロンソによって終わりを告げる。
アロンソはミナルディでのデビュー時から気になるドライバーであった。
理由は単純で、自分と同じスペイン人だからである。
「同郷だから応援するか」
そのような理由で贔屓ドライバーにしたが。
「ミナルディでもビリになるのはイヤだから、一生懸命走った」
アロンソはそう語っていたが、言うだけのことはあった。
劣ったマシンで、懸命に全力で戦っていく。
……心惹かれた。少々気色悪い表現だが、恋に近いかも知れない。
こいつは凄いドライバーだと、走りを見てわかった。
以来、シュラはアロンソの走りに心を奪われ続けている。
チャンピオンシップのために確実で堅実な走りをするかと思えば、時にはファイターのような勇猛果敢な走りで魅せる。
『ああ、俺はこいつの走りに出会うために、F1を観戦し続けてきたのか……』
セナの走りで衝撃を受け、シューマッハとハッキネンの勝負に魂が震え、そして今。
フェルナンド・アロンソという稀代のドライバーに出会った。
「セナ、あんたのことは忘れないよ。あんたが俺をF1に夢中にさせてくれた」
磨羯宮に飾ってある、カナリアカラーのセナのヘルメットのレプリカに向かって語りかけるシュラ。
彼のF1への恋物語は、フェルナンド・アロンソのキャリアと共に、まだまだ終わらない。
作品名:Racingholic 作家名:あまみ