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ヒトリジャナイヨル

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小山内が学校から帰宅してきた。


部屋で漫画を読んでいたオセは、契約者の帰宅に気付くとやや顔を上げ、牛乳瓶の底のような眼鏡越しの視線を向けた。
「あ、小山内クン、おかえりー」
そう声をかけたが、小山内はオセを一瞥すること無く鞄を放り投げると、自分の机に向かう。
そして。
無言で机の上に突っ伏した。
オセを無視しているというよりも、オセにまで気が回らない…といった様子である。
そんな小山内は、ひどく珍しい。
「……小山内クン?」
読んでいた漫画を閉じ机の上に登ったオセは、そっと契約者の肩に手を置く。
ふにふにとした肉球が触れたが、小山内はノーリアクションだ。
少々心配になるオセ。
「小山内クン、どうしたの?」
「……放っておいてくれ、オセ。何でも無い」
そう突っぱねる小山内だが、どう見ても『何でも無い』は嘘だ。
『何かあったのかな……』
小さくオセは首を傾げる。
今朝は普通に登校して行ったので、学校で何かあったのは確かだ。
今ここにベルゼブブでも居れば、その暴露の能力で小山内がこうなっている理由を暴き出してもらうのだが。
『あの人が手を貸してくれるわけないしなぁ。それに』
自分の契約者に他の悪魔の力を使われるのは、なんだか気分が悪い。
だからオセは、静かに小山内の側で待つことにした。
小山内が自分に何かを話してくれるのを。
15分ほど経った頃だろうか。
突っ伏したままの小山内が、その姿勢のままくぐもった声で、
「なぁ、オセ」
「なぁに?小山内クン」
そっと首を曲げ、小山内の様子を窺おうとするオセ。
その途端。
小山内の右腕に、オセは抱え込まれた。
まるで人形かぬいぐるみのような扱いに、オセは腕の中であたふたする。
こんな扱い、今まで誰にも受けたことが無い!
「小山内クン!ちょっと!!」
悪魔らしくない慌てふためきようである。
けれども小山内は両腕でがっちりオセをホールドすると、その豹柄のマントに顔を埋めた。
まるで、オセに縋り付くかのように。
「小山内クン……?」
抵抗を止め、そっと小山内を見つめるオセ。
彼の契約者は、かすかに、ほんのかすかに、肩や背中を震わせていた。
ああ……。
ようやくオセは気付く。
ちょっとだけ困ったように笑うと、小さな手で小山内の頭を撫でた。
「堂珍クンとケンカした?」
「アレはケンカじゃない。あっちが悪い」
「でも、そんな態度とるってことは、小山内クンも悪いって思っているんだよね?」
「うるさい、僕は悪くない」
オセを抱きしめる腕に、力がこもる。
小山内は幼少時代から、天才少年としてもてはやされてきた。
そのため同年代の子供たちとは、少し距離を置いて接していた。
表面的な付き合いはそつなくこなすが、同い年の人間と本当の意味での友人付き合いをしたことが無い。
なので、ケンカをした後の対処方法が分からないんじゃないか?と、オセは思う。
小山内は天才だが、人付き合いの天才という訳ではない。
彼はまだ、中学生なのだ。
「……小山内クン」
「うるさい、僕は悪くない」
「違うよー。明日の朝、僕を召喚して。一緒に学校に行くから」
「…………」
「僕も一緒に堂珍クンに謝るから」
宥めるように、何度も頭を撫でてやる。
けれども、小山内の答えはノーだった。
「明日の朝、召喚なんかしないからな」
「どーしてだよ、小山内クン!何が不満なんだよ、小山内クン!!」
自分の気持ちを無下にされ、光太郎の真似をして突っ込むオセに、小山内は小声でポソッと、
「オセは今夜はずっと僕と一緒に居るから、召喚なんかしない」
「今夜ボク、無断外泊かよ!お母さんには夕飯までには戻るって言っちゃったよ!!」
そう吼えるオセだったが、小山内が自分に無言でしがみついているのを見ると、魔界に戻る気も起きなくなる。
明日お母さんに怒られるけど、それも仕方ないか。
そう覚悟を決めたオセは、再び小山内の頭を撫でた。
いつの間にやら、小山内の体の震えは、止まっていた。
作品名:ヒトリジャナイヨル 作家名:あまみ