なんどのぼうけん 2
「どのような理屈かはわからぬが、彼奴らは生きたまま冥界に居る。あちらにはオルフェも居ることだし、そのうち帰ってくる」
再びムウの髪を撫でる、シオンの大きな手。子供の頃、ムウはその手が大好きだった。
大きくて温かくて優しくて、師からの愛情を強く感じることができたから。
でも、最近は嫌いだ。
もう自分は大人で、黄金聖闘士で、弟子がいるのに、子供扱いされている気がするからだ。
「シオン様、あまり頭を撫でないで下さい」
「何故?」
顔を見なくとも、今シオンがどんな目付きで、どんな表情で自分を見ているか、ムウは容易に想像できた。
絶対に、師はニタついている。
「私はもう、子供ではありません」
「私にとってお前は、いつになっても子供だ」
ポンとムウの頭を叩いた後、シオンは、
「私は一階の居間におる。落ち着いたら降りてこい」
と告げ、かき消すようにその場から消えた。シオンもテレポーテーションの達人なのだ。
ムウは師の小宇宙の残滓を鬱陶しそうに手で払った後、小声で、
「シオン様はズルい」
子供のように頬を膨らませて呟いた。
作品名:なんどのぼうけん 2 作家名:あまみ