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晴れた日の過ごし方 1

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アンナは涙を浮かべながら、ギルバートの名前を叫んでいる。
そのギルバート。
アンナの言う通り、ものすごい美青年だった。
栗色の長い髪、ライトの具合でより一層白く見える白磁の肌。
見る者を引きつけてやまない、何処か憂いを秘めたグリーンの瞳。
名工の手による彫刻を連想される繊細な顔立ちは、並みの女性では太刀打ちできない程、美しい。
少女漫画の王子様がそのまま抜け出てきたような美形である。
「わぁ……」
口が半開きになるリディア。
あれでは確かに、見とれてしまう。恋に落ちる気持ちもわからないでもない。
「すっごい綺麗な人だね、アンナちゃん」
「でしょ?」
満面の笑みを浮かべるアンナ。
やはり、好きな人が褒められるのは素直に嬉しい。
「でも、ギルバートが素敵なのは、ルックスだけじゃないのよ」
音楽を聴いて欲しいわと、アンナは言う。
ステージ上のギルバートはギターを抱えると、ドラムに目配せした。
するとドラムがカウントを打ち、そして。
一曲目。
高速カッティングのギターリフとベースとドラムのリズム隊が、音で火花を散らしながらバトルしている。
あの大人しそうな外見の美青年がプレイしているとは思えないくらいに、激しいサウンドである。

♪闇の彼方 光届かぬ果てに

甘くしなやか、そしてどことなく切ないギルバートの歌声。
曲の世界観がギルバートのボーカルで表現される事により、よりはっきりしてくる。

♪ああこの時を伝えたい ああ誰かに伝えたい

よく伸びる声。綺麗な歌声。
「……すごーい……」
顔だけのバンドマンじゃない。
このギルバートは、類い稀なるシンガーであり、ギタリストであったのだ。
「アンナちゃん、すごいね!!すごい!!」
「でしょ!でしょ!!」
ついついはしゃいでしまうリディア。
あれを聴いたら、はしゃがずにはいられない。
アンナが彼を好きになってしまう気持ちもよくわかる。
一曲目が終わったところで、ギルバートのMCが入る。
地の声も、信じられないくらいに綺麗な声だった。
「今日は僕たちダムシアンのライブに来てくれて、本当にありがとう。今夜が素敵な夜になるよう、想いを込めてこの曲を贈ります」
MCは笑ってしまうくらいにリリカルであったが、曲はゴリゴリにハードであった。
オールステンディングのフロア内はおしくらまんじゅう状態。
リディアも後ろからギュウギュウに押され、肋骨が折れるかと思った。
「キャァ!」
短い悲鳴が上がる。
リディアはライブハウス慣れしていないので、押された時どうすればいいかわからないのだ。
「リディア!」
アンナが友人に手を伸ばした瞬間。
「押さないであげて」
歌の途中、ギルバートがオーディエンスにそう呼びかける。
「僕はどこにも行かない。ここにいるよ」
ピックを掴んだ右手で、自分の胸を軽く叩く。
一瞬の静寂の後、爆発したように盛り上がる会場内。
「ギルバートぉぉぉぉぉ!!!」
熱狂するオーディエンス。
リディアも、アンナや他の観客と共にギルバートの名前を叫ぶ。
彼女の初めてのダムシアンライブは、とてもとても熱かった。
作品名:晴れた日の過ごし方 1 作家名:あまみ