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晴れた日の過ごし方 1

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「セシル!カイン!」
バーでセシルとカインがカクテルを飲んでいると、耳に心地よいハイトーンボイスで名を呼ばれた。
セシルはグラスを置き、椅子ごとクルリと向く。すると目の前によく知った顔があった。
「あれ?」
隣でブラックルシアンのグラスに口を付けていたカインもセシルの様子が気になったのか、サングラス越しの視線を親友に向ける。
「どうした、セシル……っと、リディアか?」
「やっぱり、セシルとカインだ!」
薄暗いライブハウスの中でも、セシルのプラチナブロンドと、カインのブロンドはよく目立つ。
リディアはこんな場所で知人に会えた事が嬉しかったのか、ひどく嬉しそうな表情を浮かべると、
「ビックリしたわ。二人がこんなところに居るなんて」
「僕もビックリしたよ、リディア。まぁ、立っているのもなんだし、座ったら?」
リディアはセシルに勧められるまま、空いていた彼の横の席に座る。するとカインが気を利かせて、
「何か飲むか?おごってやるが」
「本当?じゃ、あたし……ファンタオレンジ!」
程なくカウンターの向こうにいた店員が、リディアにオレンジ色の炭酸飲料が入ったグラスを差し出す。
「ありがとう、カイン」
「ねぇ、カイン、僕には?」
「帰りのタクシー代、全額お前が出すか?」
「……冗談だよ。すみません、ジンジャーエール下さい」
自分で店員に注文を出すセシルである。
リディアはファンタのストローをくわえながら、セシルとカインを不思議そうに見つめる。
「……さっきの続きなんだけど、どうして二人はここに来てるの?」
思わずカインと顔を見合わせてしまうセシル。
カインに“お前が話せ”と目配せされ小さく頷いたセシルは、リディアの綺麗な緑色の瞳を見ながらゆっくりと話す。
「今日、最後にダムシアンってバンド出ただろう?」
「うん。あの、ギター弾いてたボーカルの人、すっごく綺麗な人だったよね!友達のアンナちゃんがね、彼目的でここに来たんだよ」
「そのギターの……ギルバートね。僕らの友達なんだ」
「え?」
セシルの言葉に驚きを隠せないリディア。
友達の憧れの人が、自分の優しいお兄さん達の友達だとは知らなかった。
「ギルバートが今夜のライブに僕たちを招待してくれてね。それで、カインと二人で来たって訳」
「そうだったんだー……」
何だかとても妙な気分だった。と、セシルは思い出したようにリディアに問う。
「さっき友達と一緒に来たって言ってたけど、そのお友達はどうしたの?」
「アンナちゃんはね、今出待ちしてる」
「出待ち?」
聞き慣れない言葉に眉を顰めるセシル。
カインはセシルよりはそのような事情に詳しいようで、険しい顔をする親友に教えてやる。
「出待ちというのは、目当てのバンドマンやスターが会場から出るところを待ち、プレゼントを渡したり、サインをもらったり、写真を撮ったりする事だ。今頃裏口にはファンが群がっているんじゃないのか?」
「よく知ってるね」
「この前の休みにギルバートに頼まれて、少しスタッフの仕事を手伝ったのでな」
「僕には声がかからなかったよ」
「お前、その日ローザと映画に行ってただろうが」
「ああ、そうだ」
思い出したのか、納得したように両手をポンと叩くセシル。真面目で繊細な外見の彼は、結構物忘れが激しかったりする。
リディアはそんな大人二人の会話を聞きつつ、ふぅ……とため息をつく。
アンナの様子では、テラに内緒でダムシアンのライブに通っているのだろう。
そして、ギルバートに恋愛感情を抱いてしまっているのだろう。
ギルバートはプロのミュージシャンではない。
手の届くところに居る、インディーズのバンドマンだ。
彼女が本気で惚れてしまっても、彼を恋の対象として見てしまっても、おかしい話ではない。
「……アンナちゃん、出待ちで会えたかな」
カウンターに肘を乗せて頬杖をつくと、大人しそうな外見の友人を思った。
作品名:晴れた日の過ごし方 1 作家名:あまみ