二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

晴れた日の過ごし方 2

INDEX|6ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

その日エッジことエドワード・ジェラルダインは少々小銭が入ったので、街に買い物に出かけていた。
出かけた先はとある有名なショッピングビル。
買い物とは言ったが、その実態はウィンドウショッピング。
並べられた品物を冷やかすように眺めるのが好きなのである。
男性向けのフロアでシルバーの指輪やベルトを物色(買わないが)していると、有名男性向けブランドのテナントショップで、見慣れた人間がショーケースを眺めているのが目に入った。
翡翠色のフワフワとした髪。小柄な体。間違えるはずはない。
リディアである。
「なんでリディアがこんな店にいるんだ?」
リディアが男性向けファッションの店にいる事に驚いたエッジは、向こうに見つからないように商品の棚に身を隠すと、リディアを見守った。
だが次の瞬間、エッジは信じられないものを目にする。
リディアは品物のショーケースを眺めながら、レジで会計を済ませたばかりの金髪美形の長身男を手招きした。
あの金髪の美男子は……。
「カインじゃねぇか……」
何故カインがリディアと一緒にいる!?
リディアはカインに何か話しかける。
するとカインはいつものクールさが嘘のような熱心さで、彼女の言葉に応えていた。それを真剣に聞くリディア。
「あんにゃろう……女子高生に手出ししやがったのか!?なんつー鬼畜だ!!」
義憤に駆られるエッジ。だがこの感情は、セシルに言わせれば焼きもち意外の何者でもない。
「あのスカ男!!決定的瞬間ってヤツを捉えて、ボコボコにしてやる!!」
エッジはそう心に誓うと、二人への尾行を開始した。

「ん?」
カインと並んでエスカレーターに乗っていたリディアは、誰かに見られているような雰囲気を感じ、はっと後ろを向いた。連れの様子に訝しさを覚えたカインは、
「どうした、リディア」
「何か人に見られているような気がして……」
ほこりを払うような仕種で、肩をぱっぱと払う。カインはサングラスの下の瞳を細めると、
「お前は色々目立つからな」
「カインだって目立つよ!」
語気を強めつつ、エスカレーターを降りる。
「カインって凄くハンサムだから、何処でも目立つのよ。さっきだって待ち合わせの時大変だったのよ」
「セシルが一緒にいたら、どうなっていただろうな?」
意地の悪い笑みを浮かべるカイン。
カインは男性的な美貌であったが、セシルは並みの女性では太刀打ちできないくらいのもの柔らかな美貌である。
カインはセシルと出かける機会が多いのだが、セシルはかなりの高確率でカインの彼女に間違えられる。
するとリディアはにっこり笑って、
「そうしたらあたし、お姫様気分になれるかも!王子様二人にエスコートされてるみたいで!」
満面の笑みで、リディアはカインの手を取る。カインは小さくため息をつくと、
「この程度で喜んでもらえるなら安いものか」
と、リディアの好きにさせておいた。
だがそれを後ろから眺めていたエッジの心中は穏やかではない。
「な……なんであのスカ男がリディアに手を握られてんだよ!!」
ギリギリと物陰で歯ぎしりするエッジ。端から見ると、ちょっと可哀想な人にしか見えない。
エッジが自分たちを尾行しているだなんて全く想像していない二人はエスカレーターを降りた後、地下にある駐車場に向かう。
今日はカインのRV車で買い物に来ているのである。
エッジは細心の注意を払い、二人の後をつけた。
コンクリートの柱に隠れながら、何処から見ても美男美女のカップル(美女がやや幼いが)の様子を観察する。
「どうだ、リディア。満足できる買い物だったか?」
「うん!本当にありがとう、カイン。すごく助かった!」
いつもは鉄面皮のカインが妙に柔和な表情を浮かべて、リディアを見つめている。
そしてリディアは満開に咲き誇った華のような笑みで、カインに礼を言っている。
……何かもう、世界出来上がってるんですけど。
エッジは全身が浮腫んでいるかのような、そんな体の重さを感じる。

見てはいけないものを見てしまった

エッジの頭の中を、このフレーズがぐるぐる回る。
「あー、俺、本当に何やってるんだろ」
休日に街に出てみれば、惚れた娘がどこかいけ好かねーところのある友人と買い物デート。
それを目撃した事もショックであるし、二人が仲良さそうに買い物している姿もショックであるし、何よりも一番ショックを受けたのは、そんな二人を尾行している自分自身のメンタリティだった。
「あー、もー、本当俺、何してたんだろ……」
自分に対する情けない感情をどこかで吐き出したくて、エッジはセシルの家(厳密にはカインの家)に足を向けた。
カインが家に戻ってくる可能性は考えなかった。
あの可愛いリディアとデートなんだ。一日が終わるまで帰っては来ないだろう。
「……ちくしょう」
知らず知らずのうちに、目元に涙がたまる。
自分はこんなにもリディアに惚れていたのか。
エッジはどこか自嘲じみた笑みを浮かべると、ため息とともに呟いた。
「チューされた時は、脈ありって思ってたんだけどな」
作品名:晴れた日の過ごし方 2 作家名:あまみ