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木吉ケリー
木吉ケリー
novelistID. 47276
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≪2話≫グリム・アベンジャーズ エイジ・オブ・イソップ

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第2話 オオカミ少年

 スティルツキンに教わった通り夜通し歩き続けた一万は、朝日が昇り始めた頃に3つの道が交差する分かれ道に辿り着きました。どっちに行けばいいのか迷っていると、左右の道の向こうから誰かが歩いてくるのが見えました。
 左の道から来るのが杖を突いた羊飼いらしい少年で、右の道から来るのが真っ赤なフード付きのケープを羽織り、手にバスケットをぶら下げた女の子でした。スティルツキンが話していた同胞だとすぐに分かりました。
 分かれ道に集まった3人は、示し合わせたように道の真ん中で顔を見合わせます。一万は獲物を品定めするように2人を見比べましたが、どうということはない飢えてやせ細った少年と少女にしか見えませんでした。この中では一万が一番年上のようです。
 沈黙に耐えかねたのか、最初に口を開いたのは羊飼いの少年でした。
「おはようさん。あんたたちのことはルンペルなんとかって変な男から聞いてるよ。半信半疑だったけど、本当に話通りの2人に会えるなんて不思議なもんだ」
「あら、人違いかもしれないわよ。私が会ったのはなんとかツキンって薄汚い男だったから」
 女の子が皮肉っぽく言って冷めた目を向けます。さっきからバスケットの中に手を差し込んだままなのが一万には気になりました。しかしこのままでは話が進みそうにないので、年長者らしく一万がその場を仕切ろうと思いました。
「ルンペルスティルツキンだろ。あんなヘンテコな名前の変人が他にもいてたまるか。とにかく2人とも、俺に力を貸してほしい。美味い話がある」
「待ってました!腹いっぱいになれるんなら何でも手伝うぜ。その前に俺にも食い物分けてくれよ。弁当作ってくるなんて、女の子は気が利くな」
 そう言うと少年は女の子のバスケットに無遠慮に手を伸ばします。女の子は反射的に身をよじって嫌がると、鋭く少年を睨んでバスケットから手を抜き放ちました。ナイフでも突きつけたのかと思いましたが、女の子の指には火のついたマッチがつままれていました。
「火傷したいの?」
「火傷?それじゃ髪の毛も焦がせないんじゃないの?」
 頼りなく揺れるマッチの火を見て少年が笑います。女の子は油断しきった少年の様子を鼻で笑うと、ふっとマッチに息を吹きかけました。するとどうでしょう。マッチの火は竜が炎を噴き出したような猛烈な勢いで少年の顔に迸ったのです。
 少年は情けない悲鳴を上げて尻餅を突き、何とか顔が黒焦げになるのは免れました。ですが前髪は焚き火に突っ込んだようにチリチリになり、何とも滑稽な有様です。呆然とする少年を見下ろして、女の子は勝ち誇ったように笑みを浮かべました。
「分かった?私のマッチは骨だって灰にできるのよ」
 女の子がバスケットの覆いを取ると、中身は食べ物ではなく売れ残りのマッチでいっぱいでした。この女の子はマッチの火を魔法で自在に操ることができるようです。食べ物を期待した少年は正に髪焦げ損といったところでしょうか。一万はもし道中でウサギか鳥を仕留めても、この女の子にだけは火の番をさせまいと心に誓うのでした。絶対に肉を焦がしてダメにしそうだからです。
 一万は尻餅を突いた少年に手を貸して言いました。
「悪いが俺も食い物は持ってない。だけど食い物が沢山ある場所を知ってる。3人でそこを襲って、食い物を奪ってやろうぜ」
「ちょっと待てよ。食い物が沢山ってことは、それを守ってる人間も沢山いるってことだろ?どうやって奪うんだ?」
「皆の力を合わせるんだ。俺はバイオリンで色んな魔法が使える。そっちはマッチの炎を操れる。お前は何ができるんだ?」
 一万に聞かれて少年は得意気にニヤリとします。
「そうだな。ちょっと口で説明するのは難しいんだけど」
 少年は手頃なカモがいないか辺りを見回しました。すると女の子がやってきた方の道から、1人の行商人が歩いてくるのが見えました。
「よし、あいつで試してやる」
 少年はそう言うと2人を道の脇の木陰に下がらせ、1人で行商人を待ち伏せます。ちょっと休憩でもしているような何気ない仕草で草むらに腰を下ろし、行商人が通りかかると親しげに声を掛けました。
「やあ、おはようさん。景気はどうだい?」
「おお、ボチボチだよ」
「あんた知ってるよ。とってもケチで有名だろ?俺みたいな腹ペコの子どもを見ても、銅貨1枚恵んでくれないんだってな?」
 少年が一体何を言い出したのか、2人は訳が分からず顔を見合わせました。いきなり侮辱された行商人は、案の定顔を真っ赤にして少年に詰め寄ります。相手を怒らせるのが少年の魔法なのでしょうか。
「誰がそんな酷い嘘を広めてるんだ!?俺がケチなんて大嘘だ!いつでも貧しい人に施しを与えてるって有名だぞ!ほら、お前にも昨日の稼ぎを全部くれてやる!」
 行商人は石でも投げるような乱暴な仕草で、ぎっしりお金が詰まった袋を少年に投げて寄こしました。
「わあ、ありがとう!でも全部じゃ悪いから、これだけもらっとくよ!」
 少年は袋から硬貨を一掴みだけもらい、袋を行商人に返しました。
「人に会ったらおじさんが凄く親切な人だったって教えておくよ!」
「ああ頼むぞ坊や。いやあ、良いことをすると朝から気持ちがいいな」
 そう言って行商人は軽くなった袋をぶら下げて、軽やかな足取りで去っていきました。
 一万と女の子は手品でも見せられたような間抜けな顔で木陰から出てきました。少年が広げた両手の上には、行商人から巻き上げた金貨や銀貨がキラキラと輝いています。
「面白いだろ?俺の声には魔力があるみたいで、俺の言ったことを嘘だと思って全力で否定したくなるんだってさ。今は普通に喋ってるから大丈夫」
「どうして遠慮なんかしたのよ、もったいない」
 袋を全部貰えばよかったのにと、女の子が名残惜しそうに行商人の背を目で追います。少年は子どもにナイフとフォークの使い方を教えるような小馬鹿にした口調で理由を教えました。
「最初は俺もそう思って遠慮なくいただいたけど、魔法が切れて正気に戻った奴らに追い回されて大変だったんだ。このくらいなら本当に良いことをしたと思って向こうも満足するし、嘘ってのは加減が肝心なのさ」
「要するに、お前のことを嘘つきだと思わせる魔法ってことか?」
「思わせるっていうか、本当に嘘つきだったんだけどね」
 硬貨を一万に押し付け、少年は寂しそうに目を伏せました。
「俺はお父さんとお母さんが死んでから、1人で羊を飼って暮らしてたんだ。それで退屈しのぎに『狼が来たぞ!』って嘘をついて村の皆が慌てるのを見て面白がってたら、本当に狼が襲ってきた時に皆いつもの嘘だと思って助けてくれなくてさ。それで羊を全部食われて、自業自得だって村から追い出されて、気づいたらこんな魔法が使えるようになってたんだ」
 一万は似たような境遇に同情しかけましたが、村を追い出された理由は確かに自業自得です。嘘の魔法に目覚めるような筋金入りの嘘つきなんて、矢がどこに飛んでいくか分からない弓のようなものだと思いました。自分に向かって飛んでこないよう、気を許さず慎重に使いこなさないといけません。