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Fate/GO アナザーワールドインスクロース 1

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プロローグ
―運命の始まり―


変わらない世界が嫌いだった。
つまらない世界が嫌いだった。
心のどこかで破滅を望んでいた自分の前に、その時は突如として訪れた。
―――世界の終わりが。

空から白い木の根が降りてきたかと思った時、そこにいた人、町、生き物、全て例外なく消し去られたのだ。
パニックに陥る人々の悲鳴が木霊するなか、自分はこの状況に心踊っていた。
―――あぁ、ようやく終わりが来るのか、と。

空から生えた白い木の根は次々に人々を白紙化していく中、自分はまるで気持ちの良い朝を迎えた気分でその場に立っていた。
早くこの呪縛から解き放ってくれと、小さな祈りを込めながら……
―――しかし、運命は残酷だった。

見ず知らずの人に手を引かれ、半ば無理矢理に地下に避難させられると、そのままそこに閉じ込められた。
そこに集まった生き残りの人々はすすり泣きながらもいるはずのない神に対して祈りを込める。
自分はその状況を見てこう思う。
―――これだから人は……

………。
…………。
……………。
……あれから何日経った?
2日? 3日? それとも1週間?
いつまで経っても自分が消える気配がない。
不安と焦りの中、自分はこっそりと地下から外に出てみる。

そこには、なにもなかった。
あれだけ立ち並んでいたビルも、気休め程度の木々も、往来の多かった歩行者も、全部消えていた。
残されたのは真っ白になった世界。
その光景を見て自分は思う。
―――あぁ、遅かった。

避難していた人々も町だった光景を見て泣き崩れたり、呆然としていた。
自分は……涙も流せないほど呆れていたのをよく覚えている。

……それが数日前の出来事。

生き残った人々は、最初に協力して生きていくことにした。
町を探索する者、簡易的な居住区を作る者、食べ物を探す者、それぞれが自分にできる事を精一杯やっていた。
自分は……なにもしなかった。
―――こんなことをしても無駄なのに……

日にちが経つにつれ、人々の不満は募っていった。
探索に出掛けた者が帰りなにも成果が無かったら罵倒され、居住区が完成したと思ったら快適でないと苦情をだし、食べ物が見つからなかったら腹が減ったと怒鳴り散らす始末。
自分は……それに乗るしかなかった。
―――ほらみろ、やっぱりこうなった。

それぞれがたまたま持っていた僅かな食料がついに底をついたとたん、人々による間引きが始まった。
最初に間引かれたのは老人だった。
理由は……いるだけで臭いからとか、偉そうにしているとか、適当な理由であっさりと締め殺された。
次に子供と赤子が間引かれた。
その次は障害のある人。
その次は妊婦。
それぞれが適当な理由で生き残った人々を殺していった。
―――これだから人は……

そしてついに自分の番になった。
まるで死刑の執行。
冷ややかな人の、あの眼差しを、自分は覚えている。
破った服の布で首を絞められながら自分は思う。
―――あぁ、死にたくないな。

不思議だった。
あれほど破滅を望んでいた自分なのに、こうなってしまうと生に執着してしまう。
そんな自分が悔しくて、情けなくて……
いつしか、血が出るほど唇を噛んでいた。
……あぁ、もう、限界だ……

意識、が……くら…く……

……。
………。
…………。
だんだん……意識が、はっきりとしてきた。
そして自分は思う。
―――あぁ、また死ねなかった。

自分はため息をつきながら、立ち上がる。
変わらない白い世界、雨の振りそうにない青空、そして……沢山の死体。
その中に佇んでいる鎧騎士。
そいつは自分の方に近づいてこう言った。

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。お前が俺のマスターか?」

セイバーと名乗る謎の鎧騎士。
いつしか左手の甲についていた赤い紋章。
なにがなんだかさっぱり分からなかった。
だが、この時自分はこう思ったのを覚えている。
―――あぁ、なんて面白そうな運命なんだろうか、と……

◆◇◆◇◆◇

《第1章 禁断の果実群生地・パンドラ》

第1部 白紙の巻物

インドのロストベルトを無事に……とはいかないが、なんとか空想樹の切除に成功した俺たちカルデアのメンバーは、次なる戦いに向けて休息を取っていた。
幸い特異点も確認されず、トラブルもなく、珍しく平穏な休息を楽しめそうだ。
普段の休息といったら、マスターとしてサーヴァント達の労いをしたり、レベルアップを図るためにシミュレーションしたりと、なかなか休める感じではなかった。
だけど今日は久しぶりにゆっくりできそうだ。

「あら、ご機嫌ようマスター様」
「あっ、香子さん」

マイルームに戻るとき、見知ったサーヴァントが本を両手で抱えながら挨拶してきた。
彼女は紫式部。
クラスはキャスターだ。
このノウムカルデアの中にある図書館の主である。
個人的にも友好があるので、俺は彼女の事を香子と呼ばせていただいている。

「ずいぶんと重そうですね」
「はい、刑部姫様が、返却期限が過ぎてもなかなか返しに来てくれないので、こうして回収させてもらいました」
「あははっ、オッキーらしいね」

香子の持っている本はどれも恋愛小説らしく、オッキーが今何の原稿を書いているのか大体予想がつく。
その本をよいしょと持ち直す香子を見て、俺は自ら手伝うことにした。

「そそ、そんな、滅相もありません!」
「いいですよ。いつも香子さんには良くしてもらっていますから。これくらい手伝わせて下さい」
「……それでしたら、お言葉に甘えましょう」

俺は香子から半分本を持つと一緒に図書館へと向かった。
図書館に着くと作家サーヴァントのシェイクスピアとアンデルセンの二人とジャンヌ・ダルク・オルタがなにやら口論をしていたが、まあいつもの光景だ。

「この本はこちらにあります」

香子に付いていくと綺麗に本を入れる部分が空いている棚の前に来た。
こう見ると香子の性格がよくわかる気がする。

「これがここでっと……これがそっちだな」
「運んでいただいただけでなく、そこまで手伝っていただけるなんて……」
「良いってことですよ。気にしないで下さい」
「は、はい。ありがとうございました、マスター様」

俺は本を全部しまい終えると香子に別れを告げた。
ついでなので図書館から適当な本を見繕ってマイルームで読むことにしよう。

(どうせなら神話系の本を借りようかな。インドの時に誰が何の神格なのか全くわかんなかったからな)

ひとまずそれっぽいものが置いてありそうなところを探しながら図書館を歩いてみる。
1つ、2つ、3つと本棚の間を歩いていると、ふと、白いなにかが視界にはいった。

(ん? なんだあれ?)

本棚の一番高いところに置いてあった白い何か。
それがなんなのかはよく分からなかったが、なんだか気になってきた。
近くにある脚立を持ってきて登り、その白いなにかを手に取ってみる。

(これ……巻物?)