二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
自分らしく
自分らしく
novelistID. 65932
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

彼方から 第二部 最終話

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

 エイジュのその言葉は、『あちら側』の知らせに基づく確かなものだったのだが、ガーヤはただの気休めと取ったのだろう……応えながら溜め息をついている。
 二人が、そんな会話を交わしている内に、皆がざわつき始めた。
「ん……?」
 それに気づき、ガーヤが眼を見張る。
「おい! いたぞ!!」
 バラゴが、エイジュとガーヤに向けて、嬉しそうに大声でそう言ってくる。
「本当かいっ!?」
 ガーヤは喜び勇んで、バラゴの元へと駆け寄った。
 皆が、ノリコを抱き、歩み寄ってくるイザークを笑顔で迎えている。
 良かったと、喜びの声が響いている。
 皆に迎えられ、囲まれ、慣れていないのか、少し戸惑ったような表情を浮かべ応えているイザーク。
 エイジュはもう一度、胸に指先を当てていた。

 ――『ノリコ……』『怪我……』
 ――『一緒に……』『治す……』

 『あちら側』は、そう伝えてくる。
 どれほどの怪我なのか……そこまでは伝えてはくれない。
 イザークの様子から、彼女の命にまで係わるような怪我ではないのだろうと、エイジュは推察する。

 ――確かに、『あちら側』は、一度しか『大丈夫』とは言わなかったけれど……

 気を失うほどの、一人では歩くことが出来ないほどの怪我をした……そのことに手が震えてくる。

 大岩鳥に攫われた後、二人に何があったのか……
 大気を伝い来る彼の気で、それは全て分かっていた。
 『あちら側』の制止がなければ、すぐにでも二人を救いに行きたかった……
 『あちら側』の傀儡と同じこの身が、初めて恨めしいと、そう思えた……
 
――でも、だからこそイザーク……
 ――あなたはもう少しで手に入れられるのよ……掛け替えの、ないものを……

 陽はすっかり落ち、夜空には数多の星が煌めいている。
 ――このまま、どのくらいの間、一緒に居られるのかしら……

 ふと、そんなことを思う自身に、エイジュは苦笑していた。
 彼らと共に居るのは、ただの『役割』であったはずなのに……と。
 まだ、彼らと行動を共にし始めてから、一日と経ってはいない。
 それなのに、そんなことを思うほど、彼らの存在が、自分の中に居座り始めている……
 これも、『あちら側』の思惑なのだろうか……そう思う。

 皆がこちらを振り向き、呼び寄せるように手招きをしているのが見える。
「今、行くわ」
 エイジュはそう応えると、心落ち着かせるかのように深く息を吐き、歩きだした。


              第二部 ― 完 ―