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木吉ケリー
木吉ケリー
novelistID. 47276
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≪3話≫グリム・アベンジャーズ エイジ・オブ・イソップ

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 宿の部屋でようやく一息つき、ライアーがベッドに寝転がって言います。
「どうする兄貴。本当にミダースに行ってみるかい?」
「そうだな。アントンの農場をちまちま襲うより面白そうだ。それにこの辺りじゃ顔を覚えられて手配されるかもしれないし、そろそろミダースに移るのも悪くないだろう」
「それでまたあいつの言いなりになるの?」
 マッチが新品のワンピースを大事そうに畳みながら不満げに言いました。生憎部屋が空いていなかったので3人で相部屋になりましたが、ホッパーもライアーもマッチに手を出そうと考えるほど命知らずではありません。そもそも女を知らないのでそんな度胸もありませんが。
「言いなりになるわけじゃない。ミダースの王様に協力する価値があるか見極めに行くんだ。本当に俺たちみたいに理不尽に苦しんでるんなら、助けてやって恩を売ってもいい」
「俺も兄貴に賛成だ。家来が言い触らした重大な秘密ってのも気になるしな。金がある内に観光がてら遊びに行くのも面白そうだ」
「あんたたちはお気楽でいいわね。私はスティルツキンが何を企んでるか突き止めるまで、あんまり深入りしない方がいいと思うけど。絶対ろくでもないことを企んでるに違いないわ」
 ホッパーはマッチが慎重になるのも理解できました。自分たちがミダースの王様と親しくなることで、スティルツキンは一体何をさせようというのでしょうか。王国を乗っ取るのか、王家のお宝を奪うのか、他国に攻め込ませようというのか。とにかくスティルツキンはミダースの力を利用して何かを企んでいるのです。
「そもそもミダース王国なんて聞いたこともないわ。どんな田舎の王国なのよ」
「えっ?」
 マッチの言葉にホッパーとライアーが目を見合わせました。この町のことを知らなかった2人でも、お隣のミダース王国のことは小さな頃から知っていました。今の王様は随分年を取っていたはずですが、暮らしやすい豊かな国だという噂です。
「なあ兄貴、マッチ、何だか妙じゃないか?俺たちはこの町のことを知らなくて、マッチはミダース王国のことを知らない。スティルツキンの奴はどっちも知ってたみたいだ。俺たちが田舎者だってのは否定しないけど、こんな大きな町に住んでたマッチがミダースのことを知らないなんて信じられないぜ」
「だから、取るに足らない貧乏な国なんじゃないの?」
 マッチは自分の無知を認めず、まるで酸っぱいブドウだと決めつけるキツネのようにミダース王国を馬鹿にします。ですがこの町から歩いてほんの数日しか離れていないのに、ミダースと何の交流も無いというのは不自然でした。
 口には出しませんでしたが、ホッパーからするとマッチが生まれ育ったこの町が突然この世に現れたような気がしていました。きっとマッチにとってのミダース王国もそうでしょう。
 もしかすると自分たちが魔法に目覚める前から、この世界に何か不思議なことが起こっていたのかもしれません。スティルツキンがそれに関わっているとしたら、自分たちをミダースに送り込む真意は一体何なのでしょうか。
「やっぱりやめた方がいいわよ。親切なんて言ってたけど、絶対私たちに隠し事をして何か企んでるはずよ。あんな薄汚い奴、信用できないわ」
「いや、嘘の達人の俺様に言わせてもらうと、薄汚いから信用できるのかも」
「はあ?」
 腕を組んで考え込むライアーに、マッチが信じられないアホを見るような目を向けました。それでもライアーは真面目な顔で説明します。
「人を騙して利用しようってのに、わざわざあんな胡散臭い格好で近づくか?あいつなら魔法で変身して、虫も殺せないような少女の姿で俺たちに近づくことだってできたはずだろ?それなら俺たちもこんなに警戒しなかった」
「そんな手に引っかかるのはあんたみたいなスケベだけよ」
「いや、ライアーの言いたいことも分かる。毒のあるキノコやカエルは、派手な模様で捕食者に警告するんだ。奴は確かに胡散臭いけどそれを隠そうとしないで、俺たちが警戒しても開き直ってる。隠し事をしてるとしても、お互いの利益になる取引を持ち掛けてると思ってもいいんじゃないかな」
 見た目が怪しいから信用できるというのは、腐っている食べ物の方が美味しいと言われているような気がして、マッチはどうも釈然としません。ですが2人が乗り気になっていると分かり、マッチは諦めて毛布を被りました。
「分かったわよ。どうせ町には長くいられないし、ミダースに向かうのだけは賛成してあげる。でも途中でもっと美味しい話があったら、そっちに乗り換えることも考えてよね」
「ミダースのお姫様になる以上に美味しい話があればね。もうすぐ念願のお城に住めますぞ、プリンセスマッチ」
 ライアーがからかうと、マッチは毛布にくるまったままロウソクの火を飛ばしてライアーの顔面を狙いました。ライアーももう慣れたもので、飛んできた小さな火をふっと吹き消します。最初に出会った時に尻餅を突かされたことも忘れて、2人ともすっかり息が合ってきたようです。
 次の獲物はミダース王国に決まりました。昼間燃やした屋敷街なんて、王国に比べれば粗末な掘立小屋同然です。大きな獲物を前に狩人の血が騒ぎ、ホッパーは中々寝つくことができませんでした。