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木吉ケリー
木吉ケリー
novelistID. 47276
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≪3話≫グリム・アベンジャーズ エイジ・オブ・イソップ

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 3人は気を取り直して座り、スティルツキンに形ばかりの礼を言いました。スティルツキンも本気で恩着せがましく言っているわけではなかったので、3人を笑って許します。
「まあいい、お礼を言いたいのは俺の方だ。期待以上の大活躍じゃないか。3人とも合格だ」
「合格?私たちを試してたっていうの?」
 気位の高いマッチがまた焚き火に手を伸ばします。スティルツキンもその炎の威力を恐れ、両手を上げて降参します。
「まあまあまあまあ、試すなんて人聞きの悪い。あんたたちが心配で陰からこっそり見守ってただけさ。実は3人に頼みたいことがあるんだ」
「最初からそれが目的で俺たちを集めたってわけか」
 ライアーが苦笑を浮かべます。どうせそんなことだろうと思っていましたが、おかげで復讐できたので3人は一応話くらい聞いてやろうという気になりました。
 スティルツキンはスープを飲み干してお椀を脇に置くと、3人に顔を近づけて声を低めます。
「一万とライアーはお隣のミダースって国を知ってるだろ?実はそこの王様が今困ったことになっててな。信頼していた家来が重大な秘密を言い触らしちまって、王国存亡の危機に陥ってるらしい。そこをあんたたちが助けてやれば、王様に気に入られてお城に住まわせてもらえるぜ」
「それじゃ単なる人助けだ。それがあんたの頼みなのか?」
 怪しむホッパーを、スティルツキンは笑って誤魔化します。
「ああ、人助けさ。最初から俺は人助けが好きな親切な妖精だっただろう?その王様だってあんたたちと同じように、信じてた人間に裏切られた可哀想な同胞だ。きっと気が合うぜ」
「そういうことにしといてあげる。他に行く当ても無いしね。でも私たちを利用するつもりなら覚悟しときなさいよ」
 手のひらから火柱を迸らせマッチが凄んでみせました。相変わらずスティルツキンは人ならざる胡散臭さを漂わせていますが、魔法を使いこなした3人にはもう怖い相手ではありません。どんな野心を抱いているか分かりませんが、もし都合よく使い捨ての駒にしてやろうと考えているなら容赦はしません。
「心配するなよ。妖精ってのは公平な取引しかしないもんさ。あんたたちがミダースの王様に信頼されれば、俺も助かる。そっちには何のリスクも無いし、美味い話だろう?」
「美味い話には裏がある」
「おいおい一万、ああ今はホッパーだったか。世の中に爪弾きにされて人間不信になってるのは分かるが、俺のことはもっと信用してくれよ。何たって俺は人間じゃなくて心優しい妖精だからな」
 この薄汚い浮浪者が妖精だと名乗るのが一番笑えない冗談です。一万歩譲って本当に妖精だとしても、心優しいというのは絶対に信じられませんでした。
「まあ考えてみてくれ。早くしないとミダースが滅ぶかもしれないからな。美味いスープをご馳走さん」
 スティルツキンは黄色い歯を見せて笑うと、足音も無く路地裏の暗がりに吸い込まれていきました。
「気持ち悪い奴。あの奥は行き止まりなのに」
 夜の闇に溶け込んで姿を消すなんて、妖精というより悪魔の手先と名乗る方がぴったりです。急に暗い貧民街にいるのが薄気味悪くなり、3人は荷物をまとめて宿に向かいました。