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Fate/GO アナザーワールドインスクロース 2

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第7部 人情の義賊

建物の上で決めポーズを取りながら大見得を切っていた少女は、自らを石川五右衛門と名乗った。
石川五右衛門といえば、戦国時代の盗賊頭として名を馳せていた人物だ。
伊賀の里の抜け忍で百地三太夫の弟子として知られており、権力者からしか盗みを働かないことから義賊として民衆から絶大な指示を集めていた。

「さぁさぁ、盗賊共! アッシのシマで暴れたつけ、払ってもらうっすよ!」
「あっ、あの、私たちは……」
「問答無用! 反省なら地獄の閻魔様にするっす!」

どうやら五右衛門は俺たちが町を襲った奴だと勘違いしているようだ。
マシュの静止を聞かずに建物の上から飛び降りる五右衛門。
隣でキャスターのため息が聞こえた瞬間、五右衛門は地面に着地した……いや、落ちた。

「せ、センパイ! 石川五右衛門さんが落下しました!」
「うん。見れば分かる」

女の子らしからぬ格好でうつ伏せに倒れている石川五右衛門はこちらをみた。

「……ち、違うんすよ、これはその……ちょっとバランスを崩したとかそんな感じっすよ! 決して体重が急に増加して落下したとかそんなんじゃないっすからね!」
「なるほど、キャスターの仕業だったのか」

俺はちらりとキャスターを見ると、仏頂面で腕組みをしていた。
まあ、彼のお陰で戦うことにはならなかったからよかったと思うことにしよう。

「えっと、五右衛門さん。私たちはつい先ほどこの町に到着しました。その時盗賊の皆さんが町を襲撃していたので、我々が対処したのです」
「……マジっすか?」

五右衛門はその場で、俺たちの顔と倒れている盗賊達の方を交互に見比べていた。
そしてうつ伏せのまま土下座をした。

「申し訳ありませんでした~! この五右衛門、町を救ってくださった恩人にとんだ迷惑をお掛けしてしまい、一生の不覚! 何卒アッシの命でこの場を収めてくだせぇ! ……あっ、釜茹では無しでおなしゃっす。あれ結構キツイんっすよ」

土下座ならぬ土下寝で許しを求める五右衛門に対し、俺たちは許す代わりにいくつか聞きたいことを質問した。

「わかったっす! このアッシが知っている範囲なら教えてあげるっす! あと、出来ることならどうにかしてほしいっす。全然うごけねぇんすよ」
「キャスター、もう大丈夫だから、解放してあげて」
「……何かあったらすぐにその体勢にするからな」
「りょ、了解っす!」

キャスターが魔術をとき、五右衛門が解放された。
彼女はその場で体の動作を確認し、改めて俺たちと向き合った。

「改めまして、アッシが天下にその名を轟かす大泥棒、石川五右衛門でございやす。クラスはアサシンっす」
「よろしくお願いします、五右衛門さん」
「よろしくっす! ……っとその前に、こいつら片しちゃいやしょうね」

そう言って五右衛門は盗賊達の身ぐるみをすべて剥ぎ取り、唐草模様の風呂敷に詰めた。

「これにて、一件落着っす!」

町の人に向かってそう見得を切ると歓声が沸き起こった。
なんか、根っからのエンターテイナーみたいな感じがするサーヴァントだな。
本当にアサシンのクラスなのか疑問に思えてくる。

「さてさて、ここじゃなんですからアッシの隠れ家へ行きやしょう。着いてきてくだせぇ!」

大きくなった風呂敷を背中に背負ってその場をあとにする五右衛門。
彼女の後ろを追って移動した先は、小さな土作の家だった。
五右衛門が中に向かって「帰ったっすよ~」と声をかけると、2人の子供が出てきた。

「おかえり、ニンジャのねーちゃん!」
「今日はどんな感じで敵をやっつけたの?」
「ふふ~ん。今日はっすね、アッシの仲間がやっつけてくれたんっすよ~」

そう言って五右衛門は俺たちの方を見た。

「紹介するっす。この子らはアッシュとミゲルっす。そしてアッシの仲間のーーー」
「えっと、マシュ・キリエライトです。はじめまして」
「口寄せの忍、リッカ・フジマル、ここに見参!」
「センパイ!?」

俺の名乗りで2人の子供と、五右衛門が目を輝かせていた。

「スゲェ~! ニンジャが2人も!」
「かっけ~! 忍術教えて!」
「口寄せの術が使えるんすか! ちょっと見せてほしいっす!」

ふざけた名乗りをして後悔した。
口寄せってのは単にサーヴァントの召喚のことなんだが……。
それからなんとか3人を宥めて、本題に入ることにした。
俺とマシュとキャスターが家に上がり、アキレウスは家の周りの警護をするために外に残った。

「それじゃ早速だけど、君が召喚されたのっていつ頃か覚えてる?」
「そうっすね~……大体3日前っすかね。たまたまこの町の近くで召喚されてから、義賊として行動してたっす」
「それじゃあ次に、サーヴァントと会った、もしくは戦ったことはありますか?」
「あるっすよ、一度だけ」
「それはいつ頃ですか?」

五右衛門が何だか微妙な顔をした。

「でも、あれってサーヴァントと言っていいんすかね? アッシが会ったというか、たまたま見たのは丑三つ時で、血まみれの白いドレスを着た女がいたんすよ」
「丑三つ時に血まみれの白いドレスの女性、ですか? どこで見たんですか?」
「……鏡っす」
「えっ?」
「鏡に映ってたんすよ、その女が」

まさかのここに来てホラー展開になるとは思わなかった。
興味津々で聞いていたアッシュとミゲルは、いつの間にか五右衛門にしがみついて震えていた。
五右衛門は二人の頭を撫でながら続けた。

「……まあ、あのときはちょっとだけ追われてたっすからね。幻覚でも見えた気がするっす。なっはっは!」
「………」

キャスターが何か言いたそうにしていたが、五右衛門は気にもせずに笑っている。
その後もいくつか質問したが、これと言って真新しい情報は手に入らなかった。

「……以上で質問はおしまいです。お疲れさまでした」
「そうっすか。質疑応答って結構キツイかったっすね~」
「ところで五右衛門さん。あなたははぐれサーヴァントという認識で合っていますか?」
「そうっすよ。アッシも早くマスターを見つけないと消滅しちゃうっすね!」

そう言って五右衛門はまた笑った。
しかし、五右衛門のエピソードを知っている身としては、彼女の笑っている姿がとても痛ましかった。

「五右衛門さん。俺と契約しないか?」
「いいっすよ。もうちょっとでヤバかったっすから、この際だからだれでもいいんすけどね。まっ、よろしくっす」

ずいぶんとあっさり了解をもらい、驚きを隠せなかった。
そうこうしているうちに五右衛門と仮契約を結んだ。

「やりましたね、センパイ。これで空中庭園の探索がはかどりますね」
「あ、あぁ、そうだね」

確かにマシュの言うとおり、アサシンの石川五右衛門が仲間になり、これまでよりも探索がはかどると思う。
だけど、どことなく違和感を感じるのは何故だろう?
……考えても仕方ない。
一先ず目標は達成したので、メラニアさんの元に戻るとしよう。
五右衛門に空中庭園に向かう事を伝えると、アッシュとミゲルは震えだした。

「だってあそこ、女王様と女神様がいるんだよね」