ワルガキと妖怪アパートと魔法の塔
―ワルガキVS上級魔女―
赤い髪、青い瞳、透き通る様な白い肌のゴスロリ風のファッションを身に纏った゛超"美少女と、相対する三人。
ツンツン頭、フワフワうさぎ頭、サラサラ黒髪の三人悪。
ツンツン頭のチビは不敵な笑みを浮かべながらお札の様なものを取り出し、美少女の足元に叩きつけた!!
「なうまくさまんだ、ばざらだんかんーー!!」
バリバリバリッ!!
札が裂け、直後に空間を引き裂き、雷鳴が轟いた。
雷は一直線に少女を狙っていた。
その雷は、少なくとも三人の目には、少女に直撃した様にしか見えなかった。
…が、雷が直撃した筈の少女は、全くの無傷で微笑んでいた。
「ワオ!すごいね君達、雷を扱えるんだ!」
称賛の声も、皮肉にしか聞こえない。が、ツンツン頭は全く動じず、
「へん、うるせーや!今更謝ったっておせーぞ、叩きのめしてやっから覚悟しやがれ!」
とふんぞり返った。
「てっちゃん。あの女、まだ全然本気じゃないぜ。俺達の力を見て楽しんでるだけだ」
と、サラサラ黒髪の少年がボソッと呟く。
「ね、ねえ!なんでこんな風に戦わなきゃいけないのさ!てっちゃんも椎名も…キミだってそうだよ、エスペロス!!」
フワフワうさぎ頭の少年が、目に涙を浮かべて二人の仲間と、そして敵であるはずの少女にそう訴える。
「リョージ、キミは優しいね。この期に及んでまだボクを傷つけるのを躊躇ってる。でもね…分かるだろ?本気でやらなきゃキミ達…死ぬよ?」
「リョーチン……」
「…あいつの言う通りだよ、リョーチン。本気でやらなきゃ…殺される…!」
「そうだよ、キミ達は悪くない。ボクが一方的に楽しんでるだけサ♪」
「てンめ~…!」
「あンたとは、もっと違う形で会いたかったよ、上級魔女サン?」
「フフッ…ボクもさ、ユースケ…!!」
―稲葉夕士VS不死の集団―(アンデッド)
生気のない、土気色の顔をした集団が、聞き取れない様な小さな呻き声を上げながらゆっくりと前進していく。
その行く手には、一人の青年が立っていた。
ツリ目でケンカ慣れした雰囲気を醸し出しているその青年は、ズボンの後ろポケットから何やら本を取り出した。
ほぼ同時に彼の左肩には、15㎝ほどの小さな人形が出現した。
「ご主人様!奴らはもう死んでいます!言うなれば操り人形の様なものでございます!!」
人形は青年に向かってそう言い放った。
「ああ…生きてる人間の目じゃねぇよな、ありゃ…。こんな状況は久しぶりだな、フール?」
青年は死んでいる、などという物騒な発言にも顔色一つ変えず、それどころか少し愉しそうですらある。
その様子を見て人形?はことさら嬉しそうに集団と青年を代わる代わる見比べた。
「左様ですな!!私めもご主人と共に戦いますれば…」
「あーハイハイ。よろしく頼むぜ、『プチ』の案内小人サン」
一通り人形…いや、小人との対話を終えた青年は、不死の集団をキッと睨んだ。
「ブロンディーーズ!!」
「ブロンディーズ!最後の審判で死者を呼び覚ます雷でございます!!」
青年が吠え、それに続いて小人が叫ぶと、激しい放電が起こった。
次の瞬間。
ガッシャァアァァーーン!!
耳をつんざく様な雷鳴の後、不死の集団100人程度、その半数以上が吹っ飛んだ。
「あっちゃあ……『ブロンディーズ』を使うのも久々だから、うまいこと集束して放てなかったかな…」
頭を掻きながら、青年はそう呟いた。
「そんなことはございませんご主人様、ほぼ完璧に集束させて当てました!奴ら、雷に多少耐性がある様でございます。今のあなたさまの力ならばブロンディーズの余波ですら普通の人間なら気絶してしまうはず。それが半数近く残るとは…」
「ホントかよ?お前、いつも大袈裟だからなあ…。でもいけるぜ、まだまだ力に余裕がある。世界中を巡って洒落にならん目にも散々遭ったけど、無駄じゃなかったのかもな」
「さすがでございます!以前のご主人ならば水行の終了直後の様に倒れて温泉に運ばれていてもおかしくないのに…このフール、感服致しました!」
「オイ、何年前の話をしてんだ。高校時代の人の黒歴史を蒸し返すな」
「この鈴カステラ、うんめぇえぇーー!!」
大振りの袋一杯の鈴カステラをがつがつ食っているのは金森てつし。通称「上院のてつ」。
条東小学校の5年生で、ケンカの腕なら天下一品、5年生にして条東小の番を張る、ツンツン頭の渋い男前。でも、ちょっとバカ。
「てっちゃん!一人で何十個食うつもりだよ!もうちょっと味わって、一個ずつ食えよ!」
その言葉通り、一個ずつゆっくり鈴カステラを頬張り、一気に5、6個口に入れているてつしに文句を言っているのは新島良次。通称「向かいんちのリョーチン」。
フワフワのウサギの様なクセッ毛、泣き虫で優しい性格だが、機動力において右に出るものはない。てつしの右腕的存在。
「こんなにあんだからいいだろーが!ケチくせーんだよ、リョーチン!」
「こんなにあるんだから一個ずつ食えって!ケチじゃなくてケンジツって言えよ!」
その隣で黙々と鈴カステラを頬張っているのは椎名裕介。通称「一組の椎名」。
冷静沈着、頭脳明晰、サラサラ黒髪の美少年で、金持ち。てつしたちの参謀。でも、ちょっと変人。
この三人、人呼んで「イタズラ大王三人悪」。
いつでもどこでも三人つるんでは、神出鬼没、快刀乱麻の行動力で、いじめっ子やいけすかない大人達を恐怖のどん底に突き落とす、泣く子も黙る必殺イタズラ人である。
その機動力と行動の突飛さは小学生レベルをはるかに超えており、ゲームセンターと公園で同時に見かけたという、なかば伝説と化したエピソードを持ち、なにか妙な事件が起こった時には、いつも真っ先に容疑者として取り調べを受ける身分である。
「…やれやれ、うるさいことよのう…」
水晶玉の向こうから、恐ろしいしわがれ声でそう呟くのは、極楽堂…通称《地獄堂》の店主のおやじ。
真っ白でボサボサの髪の毛、しわくちゃの顔にとんがった鼻、細いくせにやたらキラキラ光る目をしていて、恐ろしいしわがれ声でしゃべる。
このおやじ、噂では百歳をとうに、とうに過ぎていて、てつし達のじいさんが子供の頃からじじいであるという話さえある、通称《妖怪じじい》である。
地獄堂は街の外れにある薬屋で、江戸時代から建っているという今にも倒れそうなこげ茶色の木造建て、ガラスケースの中の人体模型は今にも動き出しそうでいかにも気味が悪い。
しかし、地獄堂の薬はよく効くと、年寄りや主婦に人気があり、子どもたちの間では、「恐怖のおつかいポイント」として恐れられている。
三人悪は、この妖怪じじいと親交を結び、数々の超常現象に立ち向かってきた。
そして、おやじに「力」を授けられ、術師の端くれとなったのだ。
今日も今日とて三人は、地獄堂奥の四畳間に陣取って、ミニ羊羹を頬張りながら、その四方の壁を埋め尽くす本また本の山を掻き分けて、怪談本だの妖怪画だの犯罪録だのを漁っては、舐める様に読んでいた。
赤い髪、青い瞳、透き通る様な白い肌のゴスロリ風のファッションを身に纏った゛超"美少女と、相対する三人。
ツンツン頭、フワフワうさぎ頭、サラサラ黒髪の三人悪。
ツンツン頭のチビは不敵な笑みを浮かべながらお札の様なものを取り出し、美少女の足元に叩きつけた!!
「なうまくさまんだ、ばざらだんかんーー!!」
バリバリバリッ!!
札が裂け、直後に空間を引き裂き、雷鳴が轟いた。
雷は一直線に少女を狙っていた。
その雷は、少なくとも三人の目には、少女に直撃した様にしか見えなかった。
…が、雷が直撃した筈の少女は、全くの無傷で微笑んでいた。
「ワオ!すごいね君達、雷を扱えるんだ!」
称賛の声も、皮肉にしか聞こえない。が、ツンツン頭は全く動じず、
「へん、うるせーや!今更謝ったっておせーぞ、叩きのめしてやっから覚悟しやがれ!」
とふんぞり返った。
「てっちゃん。あの女、まだ全然本気じゃないぜ。俺達の力を見て楽しんでるだけだ」
と、サラサラ黒髪の少年がボソッと呟く。
「ね、ねえ!なんでこんな風に戦わなきゃいけないのさ!てっちゃんも椎名も…キミだってそうだよ、エスペロス!!」
フワフワうさぎ頭の少年が、目に涙を浮かべて二人の仲間と、そして敵であるはずの少女にそう訴える。
「リョージ、キミは優しいね。この期に及んでまだボクを傷つけるのを躊躇ってる。でもね…分かるだろ?本気でやらなきゃキミ達…死ぬよ?」
「リョーチン……」
「…あいつの言う通りだよ、リョーチン。本気でやらなきゃ…殺される…!」
「そうだよ、キミ達は悪くない。ボクが一方的に楽しんでるだけサ♪」
「てンめ~…!」
「あンたとは、もっと違う形で会いたかったよ、上級魔女サン?」
「フフッ…ボクもさ、ユースケ…!!」
―稲葉夕士VS不死の集団―(アンデッド)
生気のない、土気色の顔をした集団が、聞き取れない様な小さな呻き声を上げながらゆっくりと前進していく。
その行く手には、一人の青年が立っていた。
ツリ目でケンカ慣れした雰囲気を醸し出しているその青年は、ズボンの後ろポケットから何やら本を取り出した。
ほぼ同時に彼の左肩には、15㎝ほどの小さな人形が出現した。
「ご主人様!奴らはもう死んでいます!言うなれば操り人形の様なものでございます!!」
人形は青年に向かってそう言い放った。
「ああ…生きてる人間の目じゃねぇよな、ありゃ…。こんな状況は久しぶりだな、フール?」
青年は死んでいる、などという物騒な発言にも顔色一つ変えず、それどころか少し愉しそうですらある。
その様子を見て人形?はことさら嬉しそうに集団と青年を代わる代わる見比べた。
「左様ですな!!私めもご主人と共に戦いますれば…」
「あーハイハイ。よろしく頼むぜ、『プチ』の案内小人サン」
一通り人形…いや、小人との対話を終えた青年は、不死の集団をキッと睨んだ。
「ブロンディーーズ!!」
「ブロンディーズ!最後の審判で死者を呼び覚ます雷でございます!!」
青年が吠え、それに続いて小人が叫ぶと、激しい放電が起こった。
次の瞬間。
ガッシャァアァァーーン!!
耳をつんざく様な雷鳴の後、不死の集団100人程度、その半数以上が吹っ飛んだ。
「あっちゃあ……『ブロンディーズ』を使うのも久々だから、うまいこと集束して放てなかったかな…」
頭を掻きながら、青年はそう呟いた。
「そんなことはございませんご主人様、ほぼ完璧に集束させて当てました!奴ら、雷に多少耐性がある様でございます。今のあなたさまの力ならばブロンディーズの余波ですら普通の人間なら気絶してしまうはず。それが半数近く残るとは…」
「ホントかよ?お前、いつも大袈裟だからなあ…。でもいけるぜ、まだまだ力に余裕がある。世界中を巡って洒落にならん目にも散々遭ったけど、無駄じゃなかったのかもな」
「さすがでございます!以前のご主人ならば水行の終了直後の様に倒れて温泉に運ばれていてもおかしくないのに…このフール、感服致しました!」
「オイ、何年前の話をしてんだ。高校時代の人の黒歴史を蒸し返すな」
「この鈴カステラ、うんめぇえぇーー!!」
大振りの袋一杯の鈴カステラをがつがつ食っているのは金森てつし。通称「上院のてつ」。
条東小学校の5年生で、ケンカの腕なら天下一品、5年生にして条東小の番を張る、ツンツン頭の渋い男前。でも、ちょっとバカ。
「てっちゃん!一人で何十個食うつもりだよ!もうちょっと味わって、一個ずつ食えよ!」
その言葉通り、一個ずつゆっくり鈴カステラを頬張り、一気に5、6個口に入れているてつしに文句を言っているのは新島良次。通称「向かいんちのリョーチン」。
フワフワのウサギの様なクセッ毛、泣き虫で優しい性格だが、機動力において右に出るものはない。てつしの右腕的存在。
「こんなにあんだからいいだろーが!ケチくせーんだよ、リョーチン!」
「こんなにあるんだから一個ずつ食えって!ケチじゃなくてケンジツって言えよ!」
その隣で黙々と鈴カステラを頬張っているのは椎名裕介。通称「一組の椎名」。
冷静沈着、頭脳明晰、サラサラ黒髪の美少年で、金持ち。てつしたちの参謀。でも、ちょっと変人。
この三人、人呼んで「イタズラ大王三人悪」。
いつでもどこでも三人つるんでは、神出鬼没、快刀乱麻の行動力で、いじめっ子やいけすかない大人達を恐怖のどん底に突き落とす、泣く子も黙る必殺イタズラ人である。
その機動力と行動の突飛さは小学生レベルをはるかに超えており、ゲームセンターと公園で同時に見かけたという、なかば伝説と化したエピソードを持ち、なにか妙な事件が起こった時には、いつも真っ先に容疑者として取り調べを受ける身分である。
「…やれやれ、うるさいことよのう…」
水晶玉の向こうから、恐ろしいしわがれ声でそう呟くのは、極楽堂…通称《地獄堂》の店主のおやじ。
真っ白でボサボサの髪の毛、しわくちゃの顔にとんがった鼻、細いくせにやたらキラキラ光る目をしていて、恐ろしいしわがれ声でしゃべる。
このおやじ、噂では百歳をとうに、とうに過ぎていて、てつし達のじいさんが子供の頃からじじいであるという話さえある、通称《妖怪じじい》である。
地獄堂は街の外れにある薬屋で、江戸時代から建っているという今にも倒れそうなこげ茶色の木造建て、ガラスケースの中の人体模型は今にも動き出しそうでいかにも気味が悪い。
しかし、地獄堂の薬はよく効くと、年寄りや主婦に人気があり、子どもたちの間では、「恐怖のおつかいポイント」として恐れられている。
三人悪は、この妖怪じじいと親交を結び、数々の超常現象に立ち向かってきた。
そして、おやじに「力」を授けられ、術師の端くれとなったのだ。
今日も今日とて三人は、地獄堂奥の四畳間に陣取って、ミニ羊羹を頬張りながら、その四方の壁を埋め尽くす本また本の山を掻き分けて、怪談本だの妖怪画だの犯罪録だのを漁っては、舐める様に読んでいた。
作品名:ワルガキと妖怪アパートと魔法の塔 作家名:たかはし