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彼方から 第三部 第一話

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 彼方から 第三部 第一話

 ここは、グゼナの首都――セレナグゼナ。
 
 石造りの壁がどこまでも続き、まるで、首都全体を囲んでいるかのように見える。
 首都の入り口とみられる、広く大きな道の左右に並んだ、四角く、強固な造りの柱の袂には、緑の葉を湛えた低木が植樹され、柱自体も装飾が施されている。
優雅な街並みに行き交う馬車、絶えることの無い往来……買い求めたものか、それとも、これから店へと運ぶ品物なのか、馬車の荷台にも人々の手にも、何かしらの品が携えられている。

「にぎやかだな」
 そんな往来に眼を向け、そう呟く人物がいる。
「外から見れば、以前ここを訪れた時と少しも変わっていない」
 馬上から街並みを見渡し、その人物は少し懐かし気に、言葉を続けた。

 馬を横に並べて歩かせても、人の往来の邪魔になることなどない、道幅の広い大きな通り。
 活気に満ちたその様を見るにつけ、ジェイダは以前と変わりないそのことに、落胆を覚える。
「あの時は、この国にも私の友人達……エンリやカイノワなどの大臣がいたのだが…………」
「今はもう皆失脚して、生死も分からないという状態ですからね」
 このグゼナの国で、自分と同じ穏健派であった二人の大臣。
 二人もいなくなってしまったというのに、国自体も、民の暮らしにも、何の影響も与えていないように見受けられる。
 ロンタルナの言葉が身につまされる。
「ま、ぼく達も、似たような立場だけどね」
 自嘲を籠めたコーリキの言葉もまた、ジェイダの耳には少し痛かった。

 グゼナの地では、隣の国の左大公であっても、その顔を知る者などほぼ無きに等しい。
 だからこそ、こうして馬に乗り、堂々と大通りを通ってゆけるのだが……
 国を追われ、その立場も身分も失くした今――何も出来ぬ自身が、恨めしく、歯痒い。
「これから行くガーヤの姉さんは、実力のある占者だから、占ってもらいましょうよ――彼らの消息も」
 最後尾を務めるバーナダムが、堅実なことを言ってくる。
 元よりそのつもりではあったが、『能力者』の力頼みという現実に余計、力の無さを痛感する。

 ……ぷっ

「ガーヤ?」
 ジェイダのそんな想いを知ってか知らずか、先頭を進むガーヤから、笑い声が漏れ聞こえてくる。
「ああ……ちょっと、ノリコの顔――思い出しちゃってね」
 問い掛けるようなジェイダの呼び掛けに振り向き、ガーヤは可笑しそうにしながらそう応えてきた。
 流石に、仰々しい口調で言葉を交わしていたのでは怪しまれると思ったのか、ガーヤのジェイダに対する言葉遣いは砕けた調子に変わっている。
 左大公の身分など、国を追われた時点で無いと同じもの。
 ジェイダも、それを良しとし、ガーヤと言葉を交わしていた。
「あの子のケガの世話、あたしとエイジュがしてたじゃない。女同士だし……だから、最初の応急手当ても、あたしかエイジュがしてくれたと思ってたらしくて、ここへ発つ前、お礼なんか言ってんだよ、ノリコ」
 そう言って、ガーヤは『クックックッ……』と、笑いを堪えながら、その時のことを思い返していた。

          ***

 首都と国境の途中にある町の、郊外にあった空き家を、ノリコの静養のために借りていた。
 そこで、ノリコがある程度回復するまで、ガーヤはエイジュの補佐として、左大公達も旅の疲れを癒すために、数日間、過ごしていた。
 一つ屋根の下で過ごすには、少々大人数であり、あまり長居すると目立ってしまう。
 ノリコも回復し、エイジュ一人でも介添えなしで手当てが続けられる見込みが立ったため、ガーヤは左大公達と共にセレナグゼナに発つことにした……その日のことだった。

 まだ、ベッドから出ることの出来ないノリコを気遣い、ガーヤは少しの間離れるだけと思いつつも、別れの挨拶をしに来た。
「そっか……セレナグゼナに行くのね、少し寂しい」
「またすぐに会えるよ、あんたはここで、ちゃんと怪我を治さないとね」
 寂し気に、けれど明るく笑顔を見せてくれるノリコに、ガーヤも笑顔でそう返す。
「えーと、おばさん、最初の手当て、ありがと。お陰で助かった、あたし」
「え?」
 礼を言われ、思わずキョトンとするガーヤ。 
「……? じゃあ、エイジュさんがしてくれた? お――おうきゅう、て、手当て」
 ノリコは『あれ? 違ったのかな』とでもいうような顔をして、そう訊いてくる。
 ガーヤは、少し黙った後、
「何言ってんの、あたしでもないしエイジュでもないよ」
 自分を指差しながら、そう、応えていた。

 ――……?

 今度はノリコが黙る番だった。

 ――じゃあ、誰が……?

 とでも言いたげな表情を見て、
「イザークだよ、ノリコ。あたしもエイジュも、あんたのケガの現場にゃいなかったんだから」
 平然と、至極当たり前のような顔で、ガーヤは教えていた、ノリコに……

「えっ、だって……包帯とか、シップとか、薬草とか……みんな、服の下に…………」
 包帯とかシップとか薬草とかが、巻かれ、貼られて塗られていたところを確認するかのように、ノリコは自分の体に手を当ててゆく。

 そして……

「え……え……え~~~っ!!」
 と、若い娘にあるまじき大声を出し、とても人には見せられないような顔をして、驚いていた……
 顔を、耳まで真っ赤にして……

          ***

 ――ぶっひゃっひゃっ……

 堪え切れなくなったのか、眼の端に涙を溜めながら、ガーヤは馬上で、ついつい大声で笑い出してしまう。
「あの時の顔がねー、面白かったんだよ」
 そう言いながら自分の膝を叩いて、ガーヤはさも可笑しそうに、暫し笑っていた。

「ありゃあ、まだ、なーんもないね、あの二人。いや、前から怪しいと思ってたんだけどさ」
 一頻り笑い、落ち着きを取り戻し、ガーヤは隣にいるジェイダにそう話し掛けた。
「ああ、確かに」
 ガーヤの大らかな明るい笑い声に、暗い想いの全てを吹き飛ばされたような、そんな感じがしていたジェイダ。
 穏やかな表情を取り戻し、ガーヤの話しに乗ってきた。
 『なーんもないね』と言う彼女の言葉に頷きつつも、
「しかし……心で呼び合えたりもするし、その他にも、あの二人を見てると不思議な絆を感じるな」
 ジェイダはそうも言ってくる。
 すると、その話に二人の息子も加わってきた。
「ノリコはイザークに懐いているよな」
「うん、再会してからずっと、くっついて歩いてたもんな。でも、イザークの方がいまいち、突き放してる」
 ロンタルナの言葉にコーリキも頷きながら、互いの見解を交わし合っている。
「そうかあ? なんだかずいぶん、大事にしている感じがしたぞ、おれは」
「あ、それはあるな。じゃ、やっぱりなにかな、あれは……」
 まだ尽きそうにもない二人の会話に、最後尾に付けているバーナダムの表情が、少々、硬くなってゆく。
 仕舞いには……
「いいじゃないか、そんなこと!」
 と、つい大声で、二人の会話を遮っていた。
 
 流れる沈黙――ジェイダと二人の息子の視線が、バーナダムに向けられる……無言で。

「あ」

 しまった……と、思う。
 つい、感情が表に出てしまっていた。