miss you 4
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UC0092年、ネオ・ジオンのシャア・ダイクンは地球連邦政府に対して宣戦布告をし、コロニー『スウィート・ウォーター』を占拠した。
その発表で、更に人々を驚かせたのは、シャアの横に並ぶ一人の女性の姿だった。
それはかつて、一年戦争で連邦軍を勝利に導いた英雄であり、シャア・ダイクンとは浅からぬ因縁を持つ連邦軍のエースパイロット アムロ・レイだ。
そのアムロが女性であった事も驚きだったが、何よりもシャアのパートナーとして、共にスペースノイドの独立自治を求め演説をする姿は、スペースノイドのみならず、アースノイドにも衝撃を与えた。
“あの英雄が連邦を見限った”
“連邦の腐敗はやはり本当だったのだ”
“ニュータイプはやはり宇宙に適応した人類の革新であり、スペースノイドの希望だ”
“今こそスペースノイドは立ち上がり、連邦から独立すべきだ”
等とタブロイド紙が書き立て、ネオ・ジオンの思惑通り、連邦のイメージは降下し、アムロとシャアはスペースノイドの希望として祭り上げられた。
当然ながら、メディアはアムロの過去を調べ上げ、生まれから両親の事、パイロットになった経緯と戦後の状況等、特集を組んでは報道した。
熱い報道合戦を繰り広げる映像に、アムロがげんなりとした表情を浮かべる。
戦後に連邦の広告塔として引っ張り回された時もうんざりしたが、今回は更に輪を掛けて凄まじい。
これから起こりうる戦争のキーポイントなのだから仕方がないが、ある事ない事を報道された上、ホワイトベースの事まで掘り返された。
おそらく仲間にも迷惑がかかっているだろう。
アムロは大きな溜め息を吐く。
「ミライさんやフラウは大丈夫だろうか…」
二人は軍から身を隠して生活しているくらいだから直ぐには見つからないと思うが、この先どうなるか分からない。
それよりも、セイラやカイはそれなりに立場のある生活を送っている。きっとかなりの迷惑を掛けている。
特に軍に残っているブライトは上層部から叱責を受けているに違いない。
アムロはモニターを乱暴に消すと、ソファへと沈み込む。
「ご機嫌斜めだな」
クスクスと笑いながら、シャアがアムロの元へと歩み寄る。
「笑い事じゃない!セイラさんに危害が及ぶ恐れだってあるんだぞ!頼んだ通りちゃんと警護をしてくれてるんだろうな?」
「ああ、一応してはいるが、アルテイシアは自分でなんとかしている。ノア夫人とコバヤシ夫人も今はアルテイシアが保護しているようだ」
「…そうか…なら良いけど…」
ホッと息を吐き肩の力を抜く。
「だが、流石にブライト・ノアは軍上層部から何かしらの処分を受けたようだがな」
その言葉にビクリと肩を震わせ、項垂れる。
「……だよな…」
シャアがそんなアムロの隣へ座ると、間近に迫ったその存在にアムロがビクリと身体を震わせる。
「そんなに怖がるな」
「…べ…つに…怖がってなんか…」
あの日、シャアに乱暴に抱かれた後、アムロは高熱を出して一週間ほど寝込んだ。
身体への負担、そして精神的なストレス。
それまでの監禁生活も原因の一つだったのかもしれない。
そして、どうにか起き上がれる様になってからも、あの日の恐怖が拭いきれず、シャアは元より、男性に対して恐怖を感じる様になった。
ジョルジョですらも身体が拒否反応を示し、心配してくれる彼に酷い態度を取ってしまった。
それから数ヶ月、カウンセリングを受けながら、どうにか恐怖を乗り越える事が出来たが、今でも突然の接触には身体が拒否反応を示してしまう。
「すまなかった。もう、あんな乱暴な事はしない」
突然謝ってくるシャアに驚きを隠せず、思わず顔を上げる。
「…え…」
「これでも反省はしている。ナナイにもきつく言われた」
「あ、当たり前だ。それに、ナナイ大尉は貴方の恋人だろう?彼女を悲しませる様な事はするな!」
「………そうだな…」
「なんだよ、その間は」
「いや…」
あれからシャアはナナイとは身体を重ねていない。
互いに何かを言うわけでは無いが、既に恋人関係とは言えない状態ではあった。
「君こそジョルジョとはどうなんだ?」
「え…、いや…」
アムロの方も、男性に対する恐怖心はどうにか克服できたとはいえ、まだ身体を重ねる事に抵抗が無いわけではなく、ジョルジョとは付かず離れずといった状態だった。
それに、シャアとの事が後ろめたいという思いも多分あるのだろう。
それもあって、ジョルジョとはあの日以降過度な接触は避けている。
ナナイは約束通りシャアとの事を黙っていてくれている様だが、おそらくジョルジョは薄々気付いている。
縛られた手首の傷や、身体中に残された紅い刻印に気付いていただろうから…。
「別に…、大体貴方が言ったんじゃないか、ジョルジョとの事は忘れろって…」
「そうだったな…」
少し気まずい雰囲気の後、シャアが再び口を開く。
「…ブライトはロンド・ベルという独立部隊の司令をしているんだったな」
「あ、ああ…。非常時には独自に動ける権限がある。まぁ、逆に言えば連邦からの応援は期待出来ないんだがな」
話題が変わった事に安堵しながらもアムロが答える。
「おそらく、連邦はブライトの部隊を我々の相手に据えてくるだろう。君はブライトと戦えるか?」
シャアに問われ、アムロはゴクリと息を飲む。
「……出来ることなら…戦いたくはない…」
「正直だな」
「貴様に嘘を言っても仕方がない…」
「そうだな」
「連邦の動きはどうなんだ?」
「それなりに危機感を感じてはいるようだが、まだ此方を甘く見ているのだろうな。中々交渉に応じてこない」
連邦のこういう体質はやはり変わらない。
自分達が絶対だと言う傲りから、かつてザビ家が起こした戦争も、当初は一部のスペースノイドの反乱だと楽観視したが為に、全てが後手に回り多くの人々を死に至らしめた。
ザビ家の内乱が無ければ、連邦は負けていたかもしれない。
ギレン・ザビはそれだけの力を持っていた。
「貴様は…それにどう対処するつもりだ?」
ネオ・ジオンに入り、シャアに伴われて軍の設備を訪れ、その軍備に圧倒された。
連邦全軍には敵わないが、短期決戦ならば充分に戦える軍備をネオ・ジオンは備えていた。
「さてな…」
答えをはぐらかすシャアに、嫌な予感を感じる。
「約束は…守ってくれるんだろうな?」
「ああ、勿論だ」
アクシズを使った地球寒冷化作戦、それだけはなんとしても阻止しなければならない。
その為に自分はここにいるのだから。
今一度、その覚悟を自分に言い聞かせる様に胸に手を当て目を閉じる。
と、不意に膝の上に温かな重みが伸し掛かる。
「え?」
目を開けると、膝の上にシャアの頭があった。
「シャ、シャア⁉︎」
「五分寝る。膝を貸してくれ」
そう言うと、あっという間に寝息を立て始める。
いつ何処でも休息をとる事が出来る様にしておくのはパイロットっとしては重要な事だ。
しかし、いくらアクシズを盾に逆らう事が出来ないとはいえ、かつてのライバルの膝の上で眠るなんてどういう神経をしているのだろうと思う。
しかし、眠るシャアの目の下に、薄っすらとクマが出来ている事に気付くと、起こすのが憚られた。
UC0092年、ネオ・ジオンのシャア・ダイクンは地球連邦政府に対して宣戦布告をし、コロニー『スウィート・ウォーター』を占拠した。
その発表で、更に人々を驚かせたのは、シャアの横に並ぶ一人の女性の姿だった。
それはかつて、一年戦争で連邦軍を勝利に導いた英雄であり、シャア・ダイクンとは浅からぬ因縁を持つ連邦軍のエースパイロット アムロ・レイだ。
そのアムロが女性であった事も驚きだったが、何よりもシャアのパートナーとして、共にスペースノイドの独立自治を求め演説をする姿は、スペースノイドのみならず、アースノイドにも衝撃を与えた。
“あの英雄が連邦を見限った”
“連邦の腐敗はやはり本当だったのだ”
“ニュータイプはやはり宇宙に適応した人類の革新であり、スペースノイドの希望だ”
“今こそスペースノイドは立ち上がり、連邦から独立すべきだ”
等とタブロイド紙が書き立て、ネオ・ジオンの思惑通り、連邦のイメージは降下し、アムロとシャアはスペースノイドの希望として祭り上げられた。
当然ながら、メディアはアムロの過去を調べ上げ、生まれから両親の事、パイロットになった経緯と戦後の状況等、特集を組んでは報道した。
熱い報道合戦を繰り広げる映像に、アムロがげんなりとした表情を浮かべる。
戦後に連邦の広告塔として引っ張り回された時もうんざりしたが、今回は更に輪を掛けて凄まじい。
これから起こりうる戦争のキーポイントなのだから仕方がないが、ある事ない事を報道された上、ホワイトベースの事まで掘り返された。
おそらく仲間にも迷惑がかかっているだろう。
アムロは大きな溜め息を吐く。
「ミライさんやフラウは大丈夫だろうか…」
二人は軍から身を隠して生活しているくらいだから直ぐには見つからないと思うが、この先どうなるか分からない。
それよりも、セイラやカイはそれなりに立場のある生活を送っている。きっとかなりの迷惑を掛けている。
特に軍に残っているブライトは上層部から叱責を受けているに違いない。
アムロはモニターを乱暴に消すと、ソファへと沈み込む。
「ご機嫌斜めだな」
クスクスと笑いながら、シャアがアムロの元へと歩み寄る。
「笑い事じゃない!セイラさんに危害が及ぶ恐れだってあるんだぞ!頼んだ通りちゃんと警護をしてくれてるんだろうな?」
「ああ、一応してはいるが、アルテイシアは自分でなんとかしている。ノア夫人とコバヤシ夫人も今はアルテイシアが保護しているようだ」
「…そうか…なら良いけど…」
ホッと息を吐き肩の力を抜く。
「だが、流石にブライト・ノアは軍上層部から何かしらの処分を受けたようだがな」
その言葉にビクリと肩を震わせ、項垂れる。
「……だよな…」
シャアがそんなアムロの隣へ座ると、間近に迫ったその存在にアムロがビクリと身体を震わせる。
「そんなに怖がるな」
「…べ…つに…怖がってなんか…」
あの日、シャアに乱暴に抱かれた後、アムロは高熱を出して一週間ほど寝込んだ。
身体への負担、そして精神的なストレス。
それまでの監禁生活も原因の一つだったのかもしれない。
そして、どうにか起き上がれる様になってからも、あの日の恐怖が拭いきれず、シャアは元より、男性に対して恐怖を感じる様になった。
ジョルジョですらも身体が拒否反応を示し、心配してくれる彼に酷い態度を取ってしまった。
それから数ヶ月、カウンセリングを受けながら、どうにか恐怖を乗り越える事が出来たが、今でも突然の接触には身体が拒否反応を示してしまう。
「すまなかった。もう、あんな乱暴な事はしない」
突然謝ってくるシャアに驚きを隠せず、思わず顔を上げる。
「…え…」
「これでも反省はしている。ナナイにもきつく言われた」
「あ、当たり前だ。それに、ナナイ大尉は貴方の恋人だろう?彼女を悲しませる様な事はするな!」
「………そうだな…」
「なんだよ、その間は」
「いや…」
あれからシャアはナナイとは身体を重ねていない。
互いに何かを言うわけでは無いが、既に恋人関係とは言えない状態ではあった。
「君こそジョルジョとはどうなんだ?」
「え…、いや…」
アムロの方も、男性に対する恐怖心はどうにか克服できたとはいえ、まだ身体を重ねる事に抵抗が無いわけではなく、ジョルジョとは付かず離れずといった状態だった。
それに、シャアとの事が後ろめたいという思いも多分あるのだろう。
それもあって、ジョルジョとはあの日以降過度な接触は避けている。
ナナイは約束通りシャアとの事を黙っていてくれている様だが、おそらくジョルジョは薄々気付いている。
縛られた手首の傷や、身体中に残された紅い刻印に気付いていただろうから…。
「別に…、大体貴方が言ったんじゃないか、ジョルジョとの事は忘れろって…」
「そうだったな…」
少し気まずい雰囲気の後、シャアが再び口を開く。
「…ブライトはロンド・ベルという独立部隊の司令をしているんだったな」
「あ、ああ…。非常時には独自に動ける権限がある。まぁ、逆に言えば連邦からの応援は期待出来ないんだがな」
話題が変わった事に安堵しながらもアムロが答える。
「おそらく、連邦はブライトの部隊を我々の相手に据えてくるだろう。君はブライトと戦えるか?」
シャアに問われ、アムロはゴクリと息を飲む。
「……出来ることなら…戦いたくはない…」
「正直だな」
「貴様に嘘を言っても仕方がない…」
「そうだな」
「連邦の動きはどうなんだ?」
「それなりに危機感を感じてはいるようだが、まだ此方を甘く見ているのだろうな。中々交渉に応じてこない」
連邦のこういう体質はやはり変わらない。
自分達が絶対だと言う傲りから、かつてザビ家が起こした戦争も、当初は一部のスペースノイドの反乱だと楽観視したが為に、全てが後手に回り多くの人々を死に至らしめた。
ザビ家の内乱が無ければ、連邦は負けていたかもしれない。
ギレン・ザビはそれだけの力を持っていた。
「貴様は…それにどう対処するつもりだ?」
ネオ・ジオンに入り、シャアに伴われて軍の設備を訪れ、その軍備に圧倒された。
連邦全軍には敵わないが、短期決戦ならば充分に戦える軍備をネオ・ジオンは備えていた。
「さてな…」
答えをはぐらかすシャアに、嫌な予感を感じる。
「約束は…守ってくれるんだろうな?」
「ああ、勿論だ」
アクシズを使った地球寒冷化作戦、それだけはなんとしても阻止しなければならない。
その為に自分はここにいるのだから。
今一度、その覚悟を自分に言い聞かせる様に胸に手を当て目を閉じる。
と、不意に膝の上に温かな重みが伸し掛かる。
「え?」
目を開けると、膝の上にシャアの頭があった。
「シャ、シャア⁉︎」
「五分寝る。膝を貸してくれ」
そう言うと、あっという間に寝息を立て始める。
いつ何処でも休息をとる事が出来る様にしておくのはパイロットっとしては重要な事だ。
しかし、いくらアクシズを盾に逆らう事が出来ないとはいえ、かつてのライバルの膝の上で眠るなんてどういう神経をしているのだろうと思う。
しかし、眠るシャアの目の下に、薄っすらとクマが出来ている事に気付くと、起こすのが憚られた。
作品名:miss you 4 作家名:koyuho