二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

miss you 4

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

「シャアだって人間だもんな…」
総帥としてネオ・ジオンを率いているシャアは、当然ながら多忙だ。
本当に、いつ休んでいるんだと思う程スケジュールが詰まっている。
シャアだって人間なのだから疲れもする。
しかし、この男は外ではそんな姿を微塵も見せずにその役割を全うしている。
「本当に、道さえ間違わなければ素晴らしい指導者なんだ…」
柔らかな金髪を指で梳き、頭を撫でる。
一時は気配を感じるだけで恐怖が込み上げたのに、今はこうして触れる事が出来る。
あの後、シャアから“後悔” “謝罪” “不安” “心配”そんな思惟が伝わってきたからだろうか。実際にあれからシャアが酷い事をしてくる事は無い。寧ろ腫れ物を触る様な態度だ。
今更と憤る気持ちもあったが、まるで子供が親に縋るような想いに、いつしか怒りも薄れてしまった。
「私も甘いな…」
シャアの寝顔を見つめ、溜め息まじりに笑みを浮かべる。
今も昔も、シャアに対して怒りは感じても、心から憎む事は出来なかった様に思う。
ララァと共感した時に流れ込んできた、ララァのシャアに対する想いが私の中に溶け込んでしまったからだろうか?それとも、ア・バオア・クーで相打ちになった時、シャアと共感して彼の過去や想いに触れてしまったからだろうか…。
“本質的には優しい人”そんな風にシャアの事を言った事がある。
それは紛れも無い自分の本心だった。


ふと気付くと、膝の上で眠っていたシャアの姿は無く、代わりに赤い軍服の上着が自身に掛けられていた。
「あ…私…寝ちゃったのか?」
身体を起こすと、シャアがデスクで執務をこなしていた。
「ごめん…上着ありがとう」
「いや、私も久し振りに熟睡出来た」
チラリとアムロに視線を向け、シャアが答える。
「…そう…」
素っ気ない態度だったが、それがシャアの精一杯の言葉だと気付き、アムロは上着をソファの背に掛け部屋を後にした。


そんなアムロの後ろ姿を見送り、扉が閉まるとシャアはペンを置いて大きく息を吐く。
アムロの隣に座った時、ビクリと身体を震わせはしたものの、以前の様な拒否反応をされなかった事に少し安堵した。
自分のした事が原因だとは言え、あの後、男に怯え、拒否反応を示すアムロには流石にショックを受けた。
高熱を出して倒れた事にも罪悪感を感じ、出来うる限りの治療を命じた。
精神面も、腕のいい精神科医を探し治療に当たらせた。
数ヶ月を掛け、どうにか精神的に安定したアムロが、少しずつ自分にも警戒を解く様になった事に心から安堵した。
そしてさっき、拒否されるかもしれないと思いながらも膝に頭を乗せれば、驚きつつも受け容れてくれた。
髪を梳く手からは優しい思惟が伝わってきて、その心地よさに自分でも驚く程癒された。
気付けば五分どころか、三十分以上も熟睡してしまっていた。
こんな事はナナイとベッドを共にしても無かった事だ。
そして目を覚ますと、そこにはアムロのあどけない寝顔。
その幼い表情と、少し開いた小さな唇に鼓動が高鳴った。
起こさない様にそっと身体を起こし、上着を掛けてやれば、一瞬身動ぎしたものの、そのまま眠りに落ちていく。
あんな事をした自分を、アムロは許してくれたのだろうか…。
あの日、意識を失ったアムロの頬に残る涙の跡を見て一気に頭が冷えた。
そして、自分の愚かな行いを後悔した。
自分でも、どうしてあんな行動を取ってしまったのか分からない。
ただ、アムロが自分以外の男と関係を持った事がどうしても許せなかった。だからと言ってアムロにあんなに酷い事をしていい訳はない。
それでも、自分を止める事が出来なかった。
シャアは顔を手で覆い、深い溜め息を吐く。
「私は何をしているのだ…」


◇◇◇


その日アムロは、シャアやジョルジョと共にネオ・ジオンの旗艦“レウルーラ”に乗艦していた。
艦橋に上がったシャアとは別行動を取り、ジョルジョと共にモビルスーツデッキを歩く。
「アムロ、今のところ君が前線に出る事は無いが、モビルスーツ隊と共に訓練には参加してもらうよ」
ノーマルスーツに身を包んだジョルジョが、アムロをモビルスーツ隊の元に案内する。

何となく気付いていたが、ジョルジョもパイロットだ。それもかなり腕が良い。
まだ実際にジョルジョがモビルスーツに乗ったところを見た訳では無いがそれは分かった。
整列をするパイロット達の元に行くと、皆が一斉に興味津々といった視線をアムロに向ける。
中に嫌悪感を含む視線も当然あった。
それに内心溜め息を吐きながらも、アムロはジオン式の敬礼をして皆の前に立つ。
「知っていると思うがアムロ・レイ大尉だ。これから貴官らと共に訓練に参加してもらう」
ジョルジョの言葉にパイロット達が一瞬、動揺の声を漏らすが、ジョルジョの鋭い視線を受け、一斉に敬礼を返す。
その彼らにアムロが挨拶をする。
「アムロ・レイだ。よろしく頼む」
そんなアムロに、一人の女性パイロットがクスクスと笑い出す。
「本当に女なんだねぇ。何だってネオ・ジオンに寝返ったんだい?」
パープルのルージュを引いた気の強そうな女性パイロットがアムロを見下す様に問い掛ける。
「レズン・シュナイダー少尉!私語は慎め」
「これから一緒に戦場で戦うかもしれないんだ。何を考えてるか分からない奴に背中は預けられないだろう?ジョルジョ・ミゲル中尉」
「何⁉︎」
「彼女の言う通りだ。ジョルジョ中尉」
怒りをあらわにするジョルジョを、アムロがそっと諌める。
「アムロ…」
「レズン少尉、見た通り私は女だ。一年戦争当時も別に男装をしていた訳では無いが、あまり女らしくはなかったせいか勝手に男だと認識されていた」
「ははは、昔の映像を見たけど、確かに女には見えなかったね」
「レズン少尉!」
「良いよ、ジョルジョ中尉、本当の事だ。それから、私がネオ・ジオン来たのはシャア・アズナブルが正しくスペースノイドを導くのを見届ける為だ」
「正しく?」
「ああ、グリプス戦役でシャア・アズナブルが連邦を内側から改革しようとしていたのは最近メディアでも流れていた様に、ダカールでの演説で皆も知っていると思う。しかし、それを不可能だと悟ったシャア・アズナブルはネオ・ジオンを立ち上げ外側からの改革を始めた」
アムロの言葉に、皆がシンっと静まり返って聴き入る。
「私はそれを間違いだとは思わない。しかし、方法を誤ればかつてのザビ家と同じになってしまう。だから、私はシャア・アズナブルが間違いを犯さない様にそばで見届ける為にここに居る」
「もしも総帥が間違った方法を取ったらどうするのさ」
アムロは真っ直ぐにレズンを見つめ、その問いに答える。
「私の命に代えても、必ず止めてみせる」
その真剣な瞳と気迫に、その場にいた全員が息を止める。
ジョルジョもまた、アムロの覚悟に息を飲む。
アクシズの投下作戦を知っているのは上層部の一部だけだ。末端のパイロット達は何も知らない。だから当然アムロがそれを阻止する為、人身御供としてネオ・ジオンにいる事を知らない。
しかしその真実を知らなくとも、幾度もの死線を潜り抜けたパイロット達にはアムロの気迫と覚悟が伝わったのだろう。
作品名:miss you 4 作家名:koyuho