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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『猿夢』 上

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 目の前の少女は異様なオーラを持って、迫ってくる。
 瞬きひとつすら躊躇われた。
 笑みを湛えた美貌。その金色の眼から、目を離せなかった。

 もしや、自分は――触れては成らない領域に足を踏み入れてしまったのでは?


「おいおい、何や~!?」

 場違いな大声。
 その声の主は、すぐに食堂の入り口に姿を見せた。
「なんや、また君かぁ! って所長もおるんかい!」
 ツナギ姿の大男。黒く短いちぢれ毛。
 バリツの助手――タン・タカタンだ。

 こちらを刺し殺さんばかりに距離を詰めていたアシュラフが、小さく舌打ちをし、そっと後ずさった。
 バリツは大きく息を付いた。
 ほっとしたような、掴みかかった真理に逃げられたような心持であった。
 いやむしろ……自分が捕まえられていた側だったのであろうか。

「相変わらずの騒々しさね」
 平時のポーカーフェイスに戻ったアシュラフは闖入者に言葉を投げかける。
「お久しぶりですね。斉藤たかお」
「名前全くちゃうやん! ワイはタン! タン・タカタンや!」
「機動戦士みたいなおこがましい名前ですね。今日からあなたは『タ』です」
「なんでや! ……あー、っていうかこれどういう状況やねん。アシュラフちゃん、また何かやらかしたん?」

 タンは、食堂のこの惨状を見渡しながら、呆れ返っている。無理もないことだ。
 バリツは頭をかきながら、タンに投げかける。

「ああ……君からも何かいってやってくれないか? タン君」
「私のせいではありませんよ。この自称紳士がガス爆発の実験をしてただけです」
「なにやってんねん所長」
「さらっと嘘をつくなー! それからタン君も手の平を返すなー!」

 アシュラフは、パンを最後にひとかじりすると、残りを抱えたまま、てくてくと歩き出す。
 歩みの先には、庭園と直結する、今や割れたテラス窓。 
 どうやら去るつもりのようだ。

「アシュラフ君――」

 バリツは呼び止めるが、自分でも何が言いたかったのか、言葉に詰まる。
 とにかく情報量が多い。

 アシュラフは大の大人二人を横目に、
「また会いましょう。邪教徒の皆さん」
 無表情に言い放つと、足早に去ってしまった。
 仄かに煌く銀髪と、小さな黒衣の後ろ姿は、まもなく庭園の繁みに隠れ、見えなくなってしまった。

「……やれやれ」

 バリツはため息をついた。
 考えてみれば、「尾取村」での一件が起こる前は、彼女は姿を見せずに罠や爆弾を設置していくだけであった。
 しかしあの一件を受けてか、今の彼女は以前と比べてより堂々と……無遠慮に姿を見せている印象を受ける。

 それが何を意味するのかはわからない。
 ともあれ……。

「まるで天災のような子だ。毎度後片付けが大変なことだ……」

 バリツはため息をついた。
 営繕を担当するタンは、あたりを見渡す。

「所長、これ全部片付けないとアカン?」
「あー……恐縮だが。急ぎではないがね」
「えー、ヤダ」
「即答かね」
「冗談やで。あの子がらみについてはまあしゃーない」
「かたじけない」
「そんなわけで、ボーナスちょうだいな」
「あのさあ……」
「あ、ところでな所長」

 タンが懐から取り出した一通の封筒を、バリツは受け取る。

「食事の誘いみたいやで。ポストに入っとった」

 スマホやSNSの発達した現代にはやや古風な手紙。
 奇異なことではあるが、バリツはすぐに差出人を理解した。 

「芥川君か」

★続