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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『猿夢』 中

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 おぞましい怪物が、金属の箱から孵化していく。
 さながら、コズミックホラー映画のワンシーンだ。

「ア、あああ、アカン……!」
「お、おおお、俺のせいか……!?」 
 タンと斉藤が、そろって肩をわなわなと震わせる。

 もはや一目瞭然である。
 このロッカーの全てに、猿が詰め込まれていたのだ!

「くそ! すぐに逃げるべきだ!」
「でもどこにいけばええんや!?」
「『やばいとき』――」

 バニラの冷静な――とはいえ今は流石に動揺を禁じえない――呟きに、三人の視線が集まる。

「『つんだとき おこしてください はさみをさがしています』」
 
 彼が口ずさんだのは、聞き覚えのある文言だ。
 皆は即座に、何のことであるかを悟った。

「――幼女か!」
「幼女だ!」
「幼女だね」
「幼女や!!!」

 大の大人たちは、そろいもそろって異口同音にする。
 平時ならば別の意味で危険ともいえる光景だが、今の状況は文字通りの命がけだ。
 彼らはいっせいに、ロッカーを出て左側――駅のホームへ走り出した。


☆『下』に続く