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忘れないでいて【if】2〜BIRTH DAY〜

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忘れないでいて【if】2
~Birthday~


「忘れないでいて【if】」の続編です。
 
 ジャブロー基地の地下深くで長い眠りについていたアムロは、シャアやカミーユと共にアウドムラに合流し、その後宇宙に上がってエゥーゴに参加する事となった。
 エゥーゴの旗艦「アーガマ」の艦長は、かつて一年戦争を共に戦ったブライト・ノアで、アムロはカイやハヤトに次いで、また懐かしい顔と再会した。

「アムロ、よく来たな」
カイやハヤトと比べて、あまり当時と変わっていないブライトにアムロは少しホッとする。
シャアの胸で思い切り泣き、どうにか吹っ切れてはいたが、やはり大人になった知り合いに会うのは、自分だけが取り残されてしまった現実を突き付けられている様でまだ少し辛かった。
「ブライトさん…お久しぶりです…変わらないですね。元気そうで良かった」
「変わらないって言うのは喜んで良いのか分からんが、まぁ元気だ」
握手の手を差し伸べるブライトに応え、その大きな腕を握る。
『あ…手は昔より少し大きくなったかも…』
握手をするブライトの手を見つめ、ふとそんな事を思う。
「それにしても懐かしい制服だな。どうする?そのままでも良いがエゥーゴの制服を支給するか?」
一年戦争当時の青い少年兵の制服を纏ったアムロをブライトが懐かしそうに見つめる。
「エゥーゴは特に決まった制服が無いんですか?皆さん色々ですよね?ブライトさんのも連邦軍のものですよね」
「まぁ、そうだな。敵対しているのはティターンズであって地球連邦本体という訳では無いからな。俺みたいに連邦の制服をそのまま着ている者も多い。一応エゥーゴオリジナルの物もあるがな」
「そうなんですね。えっと、それじゃカミーユと同じタイプのものを支給して貰っても良いですか?」
「ああ、分かった。ファ、用意してやってくれるか?」
カミーユの横に立つファに頼めば、笑顔で請け負ってくれた。
「はい、分かりました」
そんなやりとりを、艦橋のクルー達が興味津々に見つめる。
何せ、今、目の前にいるのは一年戦争の英雄、アムロ・レイなのだ。
一時期メディアで騒がれていた為、何となく姿は知っているが、実物を目の前にして皆が騒めく。
そんな空気に、アムロは内心溜め息を吐きながらも、これから仲間として共に戦っていくクルー達に挨拶をする。
「アムロ・レイです。よろしくお願いします」
アムロが子供のままである事情は予め、ある程度クワトロから聞かされていたが、その幼い容姿に流石に驚く。
その空気を察したブライトは、アムロを早々にこの場から立ち去らせる事にした。
「カミーユ、アムロに艦内を案内してやってくれ」
「はい、分かりました」
カミーユと共にアムロが立ち去ると、艦橋内の騒めきが大きくなる。
「本当にあれがあのアムロ・レイなのか?」
「あんな子供がガンダムのパイロットだったなんて、驚いたな…」
「ニュータイプなんだろ?先読みが出来るってのは本当なのか?」
「撃墜数が連邦の歴代パイロットの中で二位だったらしいぞ。そんな凄腕がエゥーゴに加わったんなら怖いもの無しだ!」
「しかし7年近くも眠っていたんだろ?そんなんで戦力になるのか…」
そんなクルー達のやりとりを聞きながら、ブライトは複雑な表情を浮かべる。
アムロが加わる事で、間違いなく戦力は上がるだろう。
しかし、まだ体調が万全ではないアムロにあまり無理をさせる訳にはいかない。
何よりブランクもある。
ただ、アムロに期待してしまっている自分がいる事も事実だ。
ネオ・ジオンの介入でエゥーゴの状況はあまり良くない。
この微妙な均衡を打開するキーパーソンになってくれるかもしれないと希望を持ってしまう。
そしてそれはおそらく、隣に立つ男、クワトロ・バジーナ大尉も同意見だろう。
誰よりもアムロの実力を知る男は、過去の蟠りや確執を差し引いてもアムロを戦力に加える事を選んだのだから。


◇◇◇


 カミーユと共に艦内を一通り回ったアムロは、食堂で遅い昼食をとっていた。
「アムロさん、好き嫌いとかはありますか?」
「うーん、嫌いなものはいっぱいあるかも…。好きなものは…苺かな」
お皿の上のトマトやピーマンを端に除けながら答える。
「苺?」
「うん、生のは勿論だけど、冷凍苺も甘酸っぱくて好きなんだ」
「苺かぁ、俺はケーキに乗ってるのを食べるくらいかなぁ」
「苺のショートケーキも好きだよ」
「甘いもの大丈夫なんですね」
「うん」
「そういえば、クワトロ大尉もああ見えて甘いもの好きなんですよ」
「え⁉︎シャ…クワトロ大尉が?」
「そう、意外でしょう?」
「本当…意外だ…」
そんな雑談に花を咲かせながらカミーユと共に食事を終え、アムロは充てがわられた部屋へと戻った。

「ふぅ、疲れたなぁ」
ベッドに座り、大きく息を吐く。
艦内で出会う人々が自分に奇異の視線を向けて来るのを感じた。そして、アムロに対する怨恨の思念も痛いほどに…。
エゥーゴにはシャアと共に潜入した元ジオン兵も多く居る。
その者達から見ればアムロは仇以外の何者でも無いのだ。何となく分かってはいたが、ダイレクトにその思念を受けて、流石に精神的な疲労を強いられる。
「結構キツイなぁ」
その時ふと、久しぶりに再会したブライトの顔を思い出す。
「ブライトさん、本当に全然変わっていなかった。昔から老けてたもんな…今が年相応なのかも」
クスリと笑い、ベッドにゴロンと横になる。
「この艦はどこかホワイトベースと同じ空気を感じる…ブライトさんが艦長だからかな…」
ア・バオア・クーで沈んだ懐かしい戦艦を思い出し、目を閉じる。
ほんの数ヶ月だったけれど、あの艦は家みたいなものだった。そして仲間達は家族の様だった。
 あの日、自分には帰れるところがあるのだと、自分を迎え入れてくれる仲間が、家族がいるのだと思ったら涙が零れた。
戦争が終わり、これで元の生活に戻れるのだとホッとした。
けれど現実は違って、仲間から引き離され、広告塔として引き回された後、ニュータイプ研究所でモルモットの様に扱われた。
挙げ句の果てに、冷たい水槽の中に閉じ込めらて刻を止められてしまった。
アムロは辛かった過去を思い出し、ギュっとシーツを掴んで顔を枕に埋める。
「もう終わった事だ…今はブライトさんやカミーユや…シャアもいる…」
自分に言い聞かせる様に呟き、早くなった心臓の鼓動を落ち着かせる。
その時、扉をノックする音が聞こえ、顔を上げる。
扉を開けるまでもなく、アムロには誰が訪ねてきたのかがわかった。
扉を開けば、思った通り真っ赤なエゥーゴの制服を着たシャアが立っていた。
「良いか?」
「どうぞ…」
部屋に入ると、シャアはまだ何も物が無いアムロの部屋を見渡す。
「何が必要な物が有れば言うといい。用意しよう。制服も後でファが届けてくれるそうだ」
「ありがとうございます」
おずおずと答えるアムロの頬に、シャアがそっと手を添える。
「辛い事を思い出したか?」
「え…あ…」
アムロは目を伏せると、コクリと頷く。
シャアには何もかもお見通しの様な気がして、強がっても仕方が無いと素直に答えた。