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忘れないでいて【if】2〜BIRTH DAY〜

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「ここには私やブライト艦長もいる。誰も君に危害を加えたりしない様にするから安心したまえ」
自分が求めていた言葉を言われ、目頭が熱くなる。
涙が零れ落ちそうになるのを見られたくなくて顔を逸らせば、シャアがそっと抱きしめてくれた。
その腕の中がとても心地よく、そのまま身を預ける。
「ふふ…貴方の腕の中が心地良いなんて…少し前には考えられなかった…」
アムロにとっては、ア・バオア・クーで剣を交えたのはほんの一年程前の事なのだ。
そんなアムロの言葉に、シャアがクスリと笑う。
「私も驚いている。まさか君を守りたいと思う日が来るとはな」
「ははは、本当に…」
優しく髪を撫でられ、アムロは気持ち良さげに目を閉じる。
「そういえば、君は随分好き嫌いがあるそうだな。パイロットは身体が基本だ。何でも食べて体調を整えねばな」
「…そんなに多い訳じゃ…野菜がちょっと苦手なだけですよ。それよりも、貴方が甘い物が好きって事のが驚きです」
「おかしいか?」
「だって…貴方は凄く大人だから…」
「大人だって甘い物は食べるさ」
「それはそうですけど…なんかイメージが…」
「君の私に対するイメージを壊してしまったか?」
「そんな事は…無いです…」
「そうか。それは良かった」

◇◇◇


 アムロがエゥーゴに合流して二ヶ月程が経った。初めはアムロの実力に半信半疑だったクルー達も、その戦いぶりに今ではすっかり仲間として認めるようになっていた。
戦闘から帰艦したアムロを、パイロットやドックのクルー達が笑顔で迎える。
「お疲れ、アムロ」
「お疲れ!」
皆に肩を叩かれたり、頭をクシャリと撫ぜれながら、ディジェのコックピットからフワリと降り立つ。
そんなアムロをカミーユとエマが呼び止める。
「アムロ、この後少し時間はあるかしら?」
「え?大丈夫ですけど…どうしたんですか?エマ中尉」
「ちょっと付き合って貰いたい事があるの。着替えたらフリールームに来てもらえる?」
「あ…はい。分かりました」
何だろうと首を傾げながらも、言われた通りにフリールームに向かう。
扉を開けると、そこにはブライトやクワトロを始め、メカニックやパイロット達が集まっていた。
「どうしたんですか?何があったんですか?」
「アムロさん、こっちです」
カミーユに呼ばれ、側に寄ればテーブルの上には苺がいくつも乗ったデコレーションケーキが置かれていた。
「え…」
そして、ケーキの上に飾られたチョコレートの板には“happy birthdayアムロ”の文字。
その時、初めてアムロは今日が自分の誕生日だった事に気付く。
「あっ!今日…僕の…」
ブライトがケーキの上に乗せられたロウソクへと火を点ける。
「ん?お前一体幾つになったんだ?」
「え?…えっと…十七歳の誕生日を迎えたのは覚えているので…十八歳かな?」
「よし、それじゃ十八本だな」
十八本のロウソクに火を灯し、アムロをケーキの前へと立たせる。
「アムロ、ハッピーバースデイ!」
拍手と共に皆から祝福を受け、アムロは少し照れながらも一気にロウソクを吹き消した。
「おめでとう!」
「あ…ありがとうございます…」
戸惑いながらもお礼を述べるアムロに、皆が祝福のハグをする。
「おめでとう!アムロ」
「おめでとう!」
そして、切り分けられたケーキを目の前に置かれ、アムロはおずおずとフォークを取って一口食べる。
「美味しい…」
「アムロさんの好きな苺もありますよ」
カミーユに促され、宇宙では珍しい生の苺を頬張る。
「…凄い…生の苺なんて久しぶりだ…凄く…美味しい…」
美味しそうに微笑みながら苺を頬張るアムロの瞳から、ポロポロと涙の滴が零れ落ちる。
「アムロさん⁉︎」
「あ…すみません。なんだか…凄く嬉しくて…どうしよう…止まらない…」
後から後から流れ出す涙を拭いながらも、アムロが幸せそうに微笑む。
「こんなふうにお祝いして貰ったの初めてなので…凄くうれしいです」
「初めて?」
エマの問いにアムロがコクリと頷く。
「多分、母と暮らしていた頃はお祝いして貰ったと思うんですけど…小さすぎて覚えて無くて…だからこれが僕にとっては初めての事です。本当にありがとうございます」
深々と頭を下げるアムロを、エマがギュっと抱き締める。
「これから私たちが毎年お祝いするわ!」
「ふふ…ありがとうございます」
切り分けられたケーキが皆に配られる。
アムロは隣に立つクワトロに、そっとお皿に乗ったケーキを手渡す。
「甘い物好きですよね、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
クワトロはケーキを受け取ると、上に乗った苺をアムロの口にポンと入れる。
「誕生祝いだ。受け取りたまえ」
アムロは少し驚きながらも、ニッコリと微笑む。
「ふふ、ありがとうございます」
そんなアムロを見つめるクワトロの優しい視線に、ブライトは何か違和感を感じる。
『ん?なんだ…なんて言うか…クワトロ大尉のアムロを見つめる目は…まるで恋人にでも向ける様な…』
そこまで考えた所で、とんでもない結論を出してしまいそうになり、ブライトは思わず首を振って自分の想像を否定する。
『馬鹿な、何を考えているんだ俺は』
必死に心を落ち着けようとコーヒーをひと口含む。
その様子を見つめながら、カミーユは小さくため息を吐く。
『ブライト艦長、多分間違っていませんよ…』
「十八歳と言えば、もう結婚が出来る年齢ね!」
エマの発言にブライトは思わず口に含んだコーヒーをぶちまけそうになる。
『エマ中尉⁉︎』
「そうか!って事はアムロももう大人の仲間入りだな!誰か良い人はいないのか?」
更に他の誰かがそんな事を言うので、ブライトはとうとうコーヒーをぶちまけてしまう。
「ちょっと、艦長!何やってるんですか!」
「すす…すまん」
そんなブライトを見て、クワトロは密かにほくそ笑んだ。

 お祝いの会が終わり、何度もお礼を言いながら部屋へと戻るアムロを見送った元ジオン兵のロベルト中尉が同僚のアポリー中尉へとポツリと呟く。
「なんて言うか…普通の子供なんだな」
「ロベルト?」
「当時はさ…仲間を何人も殺されて…恨んだりもしていた。あの白い機体を戦場で見つけると、恐怖と共に怒りが込み上げたもんだ」
「…そうだな…」
「でも…まさかあんな坊やがパイロットだったなんてな…おまけに士官学校も軍事訓練も受けていない民間人だったって言うじゃないか…。戦争中とは言え…あいつ自身も戦争の被害者だったんだな…」
「そうかもな。そういえばロベルト、お前聞いた事ないか?最後のア・バオア・クーでの決戦の時、…何機もの仲間が白い奴に撃墜されたが、その内の何人かは生き残ってたって」
「そうなのか?」
「ああ、死を覚悟した瞬間、ライフルの照準が少し逸れて命拾いをしたって奴が何人もいたんだそうだ」
「え?それってまさか…」
「アイツの戦闘を間近で見てきて気づいたんだが…アイツが的を外すとは思えない…だからおそらくワザとだったんじゃないかと思う」
「そんな事って…」
「ニュータイプって奴は人の心を読み取るって言うじゃないか。アイツは敵兵の叫びを感じ取って…照準をずらしていたのかも知れんな」
「しかしあの乱戦の中、そんな余裕があったのか?」
「まぁ…そうなんだろうな」