二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

その先へ・・・3

INDEX|13ページ/13ページ|

前のページ
 



(7)




カーテンのすき間から差し込む朝日が目に眩しい。


ゆるゆると起き上がり周りを見回してみた。
長い間、時をすごしていた豪華な調度がある部屋ではない。
「ああ、夢か……。夢だったんだ」
ユリウスはほうっと息を吐き、ベッドから降り窓辺へと向かった。
窓の外は雪。
夢の中と同じ様に、静かに降り積もっている。
銀色の雪が張り付いた窓ガラスに、鈍く映る自分の顔を見つめた。

昨晩、思いもかけない人の名前を聞き、心の奥にしまおうと決めた日々が溢れてきてしまったのだろうか?
ユスーポフ家ですごした時が鮮やかに夢に現れたのは、初めてだった。
……あの夜から、およそ一年経っていた。ユリウスはガラスの向こう側に、巻き毛の青年を思い浮かべた。

……リュドミール、元気かな?
あの小さなリュドミールは、今では立派な士官候補生になったんだろうな。
……ぼくにもいたよ、リュドミール。
ねぇ、きっときみは驚くだろうね。
……アレクセイだったんだ。
ぼくは彼を愛して、彼を追ってこの国に来たんだ。
彼に会い、声を聞き、見つめられるだけで、不思議と思い出したんだよ。

ユリウスはアレクセイの顔を思い浮かべ、髪にそっと触れた。
夕べ髪をかき回された時に触れた彼の手の感触と、あの温かな瞳を思い出し、一人頬を染めた。


彼を思い出すたびにあんなにも胸が騒いだのは、そういう事だったんだ。
彼がシベリア終身刑を言い渡されたあの時、涙があふれて止まらなかったのはそういう事だったんだ。
きみがあんなにも憧れていた人。
ぼくが、命がけで愛した人。
同じ人だったなんて、不思議な巡り合わせだと思わないかい?
きみに会わせてあげたいな。
ねぇ、リュドミール。
今なら、ヴェーラの気持ちが分かるって、言っても良いかな?
愛した人を忘れられないって。
ぼくは彼の事は忘れてしまっていたけれど、心の奥深い所で彼を覚えてた。
彼を愛した事を覚えていたんだ。
きみが幼い頃、「好きなものは覚えている」ってぼくに言った事があったよね。
きみの言った通りだったよ。
ぼくはアレクセイを愛していた。
そして……今も……。
この気持ちは変わらない。
この想いだけは、もう一生変わらないし、決して忘れない。
ぼくは、アレクセイを愛している。



愛している……。



                                                          〈その先へ……4へ続く〉













作品名:その先へ・・・3 作家名:chibita