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代打の代打
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はじまりのあの日~一夏の恋の物語1~

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午前三時半

目覚ましにかけてた、携帯のアラームで目を覚ます。アラーム1の電子音。俺、好きな曲はアラームに使わない。イヤじゃない、好きな曲に『叩き起こされる』って。さすがに若干眠気はある。いつもより一時間早く起床。大の字になって、しばらく呆ける。眠気が込み上げそうになったから

「~~~、今日も一日、気合い入れて生きますか」

勝手に呟いて、勢い付けて起床。さっさと身支度、しようじゃない。布団畳んで、自室を後に。歯磨き、フロスに、舌磨き。次に洗顔、済ませて着替え。髪を縛る、てっぺん一縛り。これから料理するじゃない、髪は上げておく。簡単にシャツとジャージズボンで良いか。着替えて『実家』の合い鍵持って、タワーマンションに向かう。まだ灯りは、どの家にも確認できない

「みんなぐっすり、か。ふふ『俺の嫁』もオネムじゃない」

リンが、俺に告げてくれて。俺がリンに告告げて、一年と約一月か。アンドロメダ座、輝く、秋の夜の空。昨日より、一週間の夏休み。通学組も公欠扱い。夏の間はどこも、祭り、イベント盛りだくさん。俺達歌い手、引っ張りだこ。世間が盆休みの間でも、俺達はイベント出演する。花火大会、精霊流しに盆踊り。歌って踊って、手を合わす。ありがたいことだけど。さすがに、後半はバテるじゃない。世間の熱気も、気温も。下がり始めたこの時期に、少し遅めの、夏休み。ほんの少しの、夏休み。マンション『実家』の鍵を開ける。電気を点ける、ホール、レンが拵えた(こしらえた)伝説の艦(でんせつのふね)の脇を通る。そういえば、アンドロメダ星雲、さっき観たけど、在ったな。同じ名前の艦(ふね)このアニメの中に。レンやリンと一緒に観たじゃない

「思い出が沢山、じゃない。たった一年だったけど」

この家で過ごした。大事な仲間と過ごした。一族でもない俺を、暖かく迎えてくれた。はじめにすっ飛んできた、黄色いあの子が

「その子に心、奪われるか。まったく、俺って」

どうなってる。そう思っても、あの子に夢中。親父の作曲した歌にあったな『キミを抱いたまま、宇宙の遙か彼方へ』って。ふふ、おかげで、孤独の旅路じゃなくなった。リンが、女王陛下やマブダチが、俺の周りに居てくれるじゃない。みんなとこの船で、あの岬の星へ行ったら、許されるのかな、俺と

「リン。最近、益々綺麗になっていく」

だから、最近しんどい、自分保つの。だけど、命がけで保とうじゃない。後ろめたくはないから、疵付けたくないから。昔行った、縁結びの神社、古都だったじゃない。恋の神様、一体全体、何を思ってこんな事に。あの子と俺、何故この組み合わせ。神様は時々、人の事、モテ遊ぶ。仏様はそんなことしないじゃない。神様の手のひらの上で、踊らされてるか。あの子の事、考えて、胸の奥が、温まって、苦しくなって、切なくて。だけど一緒に居ることが楽しくて。みんなといることが嬉しくて。あっという間に日が暮れる。ふふ、そんな歌があったじゃない。暇潰し、か、神様の。思案しつつ、ただ一カ所、光漏れている場所の、敷居を跨ぐ。秋の虫、聞こえるキッチン。いつものように

「あ、殿、いらっしゃ~い」
「待たせたか、カイト」

俺&カイト。フリフリ、桃色エプロンカイト。この格好で『薄い本』も出品されてるらしい、俺達。ははは

「観て、このリク用紙~」
「いつも通りじゃない、百花繚乱」

キッチンテーブルの上、リク用紙が咲き乱れ

「しかしアレだね」
「ん」
「ほんと、バラエティーに富んだリクエストだよね」
「まぁ、個性の塊集団じゃない、俺達。いい意味で」
「確かにね、リク観てるだけで楽しくなるよ」

リクエストメモの大群が置かれた、キッチンのテーブルを見る

「カイト、天気予報は」
「今日から一週間、お日様マーク」

満遍の笑顔がまぶしいじゃない、マブダチよ。こっちも笑顔になるじゃな~い

「大自然からのご褒美か」
「ありがたいよね」
「で、皆様からのリクエストは」

大漁のリクエストメモを前に、俺とダチ。カイトが着ける、薄桃のフリルエプロン。最近贈られた二着目。俺は腰巻き、リンとお揃いの形エプロン

「じゃ、いつもみたいにクイズでいくよ」
「よし。間違ってたらツッこめ」

頭、覚醒させるのにも丁度良い

「まず、マグロのカマ焼き」

の、リク、わっかりやす(解りやす)

「ルカ」
「まぐろだもんね、オレでも解った。え~っと、え・び、ああ、エビフライ、と英文で」
「オリバー」

英文は確実に作って欲しいからじゃない。漢字なんかも覚え始めてるけど、誤字もおおいから。相当食べたいんだろうな、エビフライ。可愛いじゃない

「正解、次ね。鴨のローストとひらがなで」
「カルだな」

なぜかあの子ひらがな遣い『あにさま』にも理由はわからない

「ぽ兄ちゃんのフライドポテト」
「めぐ。ぽ兄で分かる。よし、トッピングソースもバリエーション、作ろうじゃない」

皆大好きFriedPotato(フライドポテト)メンバーへの気配りも感じるリク。さすが俺の妹様、ん、そうか、勇馬のコトも考えてのリクか。じゃがいも大好き勇馬

「枝豆を所望いたす」
「アル。侍コトバ」

THE・Japanese、アル。ビールと併せたいんじゃない

「焼きネギ甘味噌和えで」
「ネギ好きミク。あの子、玉ねぎはどうじゃない、カイト」

気になったので聞いてみる

「好きみたい。でも、長ネギのがもっと好きなんだって。次、フルーツサンド、バナナ必須」
「レン。トコロでカイト、フルーツサンドって、食事かデザートか迷わない」

これも気になったから訊いてみる

「どっちかなぁ、オレはご飯かな。ボリュームあるから」
「俺は三時のオヤツ感満載だけどな、トレーニングの後に丁度良いカンジ。さて次は」

尋ねたら、吹き出す親友。笑いをこらえる、何その反応

「~~、ふふっ。あのね『がっくんが好きなもの』だって」

一瞬呆ける。俺が好きな―

「っリン」

俺、リン好き。で、好きなものって、何言わせるリン

「はははははっそれ、答え。それとも『殿が好きなもの』」

からかうような笑顔のカイト。コレを言わせたかったじゃな~い、リン、恐るべし

「どっちも、言わせるんじゃない」
「殿、耳まで真っ赤」
「当然じゃない~い」

笑われる。リン、やるようになったじゃない

「こんなリクエストする、リンもなかなかだね。次は、醤油おこわ」
「同感だ、耳まであっつい。あの子最近積極的に『仕掛けて』来るじゃない。告白の日から一年、急激に『育って』もきてる」
「ん、ああ、そうだね。この前自分で言ってた『もう滑走路じゃないも~ん』って」
「っははっ、滑走路ってイイ例えじゃない」

自覚あったのか、そして『気になる』ようになったのか、リン。成長したもんじゃない。だから

「ぶっちゃけ正気保つのしんどくなっていく。最近思い知った、俺これからどんどん辛くなるんだなって」

マブダチだから、心情吐露

「そだね~、リン、高校生くらいになったら、どんな風になるかな。ははは、殿、ファ~イト」