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miss you 8

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miss you 8


「艦長!ネオ・ジオン軍艦隊、ルナ2から撤退を始めたとの事です」
「うむ、しかし警戒を怠るな!」
「了解!」
「レウルーラがロンデニオンを出航しました」
「よし、我が艦はこのままレウルーラがロンデニオン宙域を出るまで追従する!全方位索敵怠るな」
「了解」

 ラー・カイラムは、停戦条約を締結したネオ・ジオン軍の監視を上層部から命令され、ロンデニオンから出航するレウルーラの監視に当たっていた。
ラー・カイラムの横を航行するレウルーラの艦橋に真紅の総帥服を纏ったシャアの姿が見える。こちらに気付いたシャアがブライトへと視線を向けているのが分かる。
ブライトはその視線に応えると、小さく頷き視線を前方へと戻す。
「レウルーラに速度を合わせ前進!」


 その頃、ラー・カイラムの医務室では、眠るジョルジョに付き添いながら、アムロが不安気な表情を浮かべていた。
「レウルーラが出航してしまった…。シャアはこのままスウィート・ウォーターに戻るのか?まさかアクシズの投下作戦を実行に移したりしないよな…」

 結局、シャアに無事を伝える事が出来ないまま、会談を終えたシャアを乗せたレウルーラはロンデニオンを出航してしまった。
まだ暗殺未遂の犯人は分かっていない。
シャアの元に帰るというアムロを、ブライトは犯人がネオ・ジオンの内部犯である可能性があると言う理由で引き留めた。
なんとかシャアと連絡を取りたかったが、直接シャアと連絡を取る手段を持たないアムロにはどうする事も出来ず、ブライトに従うしか無かった。
ジョルジョであればシャアに直接連絡は出来なくとも、妹であり、シャアの側近であるナナイに連絡が取れたかもしれない。
しかし、未だに彼は意識が戻らない。
アムロは祈るようにジョルジョの手を握り締める。
「ジョルジョ…どうしたらいいんだろう…」


◇◇◇


 レウルーラの艦橋に立つシャアは、並走するラー・カイラムに意識を向けつつも真っ直ぐ前を見つめる。
「大佐、アクシズの核パルスエンジン始動。移動始めます」
「よし、航行コース確認後移動開始」
「アクシズ、スウィート・ウォーターに向けて移動」
オペレーターの言葉と共にモニターへと映し出された航路を見つめ、シャアがコクリと頷く。
そこに、ナナイが現れシャアへそっと耳打ちする。
それに少し厳しい表情を浮かべ、小さく頷く。
「…分かった…では予定通りに」
「はい、畏まりました」

 暫くして、レウルーラがロンデニオンの宙域を抜けると、ラー・カイラムは速度を落とし、その航行を見送る。
すれ違い様、ブライトはレウルーラの艦橋に向かって敬礼をする。
それに応える様に、シャアもブライトへと敬礼を返した。
シャアはラー・カイラムが後退していくのを確認し、艦橋のモニターに映し出された航路図を見上げる。
そして、その航路に疑問の声を上げる。
「我が艦はスウィート・ウォーターに向かう筈だが?何故地球に向かっている?」
「総帥、その航路で問題ありません」
シャアの問いに対し、答えたのはオペレーターではなく、シャアの側近であるホルスト・ハーネスだった。
「どう言う事だ?ホルスト」
「総帥、アムロ大尉が何者かに襲われたそうですな」
「何が言いたい?」
「このタイミング、連邦の手の者がアムロ大尉を襲ったに違いありません、これは立派な条約違反!和平条約は破棄し、地球連邦政府に武力行使をするべきです」
「まだアムロを襲ったのが連邦とは決まっていない」
「…その真実は必要ですかな?」
「何?」
シャアは眉を顰め、ホルストを睨み付ける。
「総帥、貴方はあの女が現れてから変わられてしまった。今の総帥のやり方では、この先スペースノイドの独立など成し得ません!」
「…ホルスト、お前はアクシズ落としを決行せよと言いたいのか?」
「その通りです、総帥。既に準備は整っております。アクシズも手に入りました。今こそその時です!」
ホルストの言葉に、シャアが大袈裟に溜め息を吐く。
「急いては事を仕損じるぞ、ホルスト」
「機は熟しております」
「私はそうは思わないがな」
「何故その様に弱腰なのですか?我々ネオ・ジオンの軍勢は充分に連邦軍と戦えます。そしてアクシズの投下作戦を実行する事により、さらに一層我々の力を誇示し、愚かなアースノイド共よりも優れた存在だと知らしめる時です」
「アースノイドもスペースノイドも同じ人間だ」
「ではニュータイプは?宇宙に上がった我々スペースノイドは進化しております。その最たるものがニュータイプ。それがお父上、ジオン・ダイクンの思想だ、それが間違っていると?」
「そうではない、その父の思想を曲解してはザビ家の二の舞だ」
その言葉に、ホルストが目を閉じ溜め息を吐く。
「ギレン総帥があんな事にならなければ、今頃はザビ家の支配する世界でした。そして今、ジオン・ダイクンの意志を引き継いだ総帥が立ち上がられた。今一度、我らジオンが世界を切り開く時が来たのです。それなのに、何故その貴方がその道を閉じようとなさる?」
「ホルスト、私はザビ家の様な独裁政権を目指している訳ではない」
「何を仰しゃる。強い指導者が導いてこそ人類は繁栄するのです」
「大量虐殺をしてか?」
「人類の繁栄の為には犠牲も必要です」
「…ホルスト、このまま貴様と議論をしていても時間の無駄だ。レウルーラの進路をスウィート・ウォーターに向けろ!」
オペレーターへと指示を出すシャアの向かい、ガチャリと銃を向ける音がする。
振り向けば、ホルストがシャアに銃を向けていた。
「いいえ、進路はこのままで。総帥、我々の指示に従って貰いますぞ」
その言葉と同時に、数人の兵士がシャアを取り囲み一斉に銃を向ける。
それを横目で見て、シャアが小さく溜め息を吐く。
「私を殺すか?ホルスト。キシリアがギレンを殺した様に」
その言葉に、ザワリと艦橋内が騒めく。
「とんでもない、貴方にはまだまだネオ・ジオンの象徴として働いて貰わねばなりません。しかし、この作戦の指揮は我々がとらせて頂きます」
「ほぅ」
シャアは特に動揺を見せず、降参だと言わんばかりに両手を挙げて席へと座る。
「分かって頂けましたかな?」
「私の言葉無く兵士が動くのか?」
「問題ございません、以前に演説して頂いた映像を少し加工して全軍に流します」
「準備は万端と言うことか」
「抜かりなく」
「流石はホルスト・ハーネスだな」
「恐れ入ります」
「そうやってアムロも貴様が撃ったのか?」
「何のことでしょう?あれは連邦の仕業ですよ」
「ほぅ…」
シャアは足を組み、肘置きに腕を乗せ頬杖をつく。
そして、冷たい視線をホルストへと向ける。
「総帥、そこでアクシズが落ちるのをゆっくりと御覧になっていて下さい」
「……」
ホルストの台詞に、シャアが小さく鼻で笑う。
「何か?」
「いや、何も」

 ホルストの指揮の元、レウルーラは地球へと航路を向け速度を上げる。そして、少し離れたところにあるアクシズの核パルスエンジンも始動し移動を始めた。


◇◇◇


「艦長!レウルーラが地球に進路を向けました」
「何?」
「アクシズの核パルスエンジンも始動!レウルーラと同進路を取る模様!」
作品名:miss you 8 作家名:koyuho