BYAKUYA-the Withered Lilac-4
ーー……足がつく可能性を考えると、当分の間『夜』の『深淵もどき』を張ってゾハルを待つ、って事はできなそうね。あの紅騎士もしばらくは動きを見せないでしょうけど、これに懲りるような性分には見えない……ーー
やはりあの場は見逃さず、止めを刺しておくべきだったか、という考えがツクヨミの頭を過る。
しかし、殺していたらそれはそれで、余計な敵を増やす要因になり得た。
顕現の統治をせんとする『光輪』の幹部格を手にかけることがあれば、間違いなく『光輪』に危険視され、処分の対象になる。
そして『忘却の螺旋』のかつての幹部、紅騎士ワーグナーを友の仇とする『強欲』のゴルドーの恨みを買う可能性もあった。
長い目で見れば、やはり昨夜ワーグナーを殺さなかった事は益となるものだった。
ーーこうなれば、狙いを確実に定める必要があるわね。あの子も動くと思われる瞬間……ーー
考え付く先は一つしかなかった。
ツクヨミは、読んでいた記事のページを閉じて、ある言葉を検索する。
月齢、ツクヨミが打ち込んだのはこれだった。表示された検索結果のトップのページを開くと、そこには月齢の表記されたカレンダーがあった。
今日から十日後、月は満月となる。そしてそれから七日間その『夜』は真の姿となる。
ーー目指すは、『虚ろの夜』の『深淵』。そこでならきっとゾハルも……ーー
七日間に及ぶ、『深淵』の発する顕現に満ちる『虚ろの夜』、『永劫の七日間(Seven Days Immortal)』。
ツクヨミは、その最後の夜を狙いとするのだった。
作品名:BYAKUYA-the Withered Lilac-4 作家名:綾田宗