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白雪の花

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「あーあ、早くここを出たいなぁ。」

ため息を吐きながら愚痴を零す。
台車の上の機材を弄っていた彼女が、私を見てふふっと笑う。

「でも、退院したら会えなくなっちゃいますよ?」

猫撫で声で彼女がイジワルを言う。

「それは嫌。うん。決めた、私ここに住むわ。」

冗談で返す。

「それも駄目でーす。退院しても会ってあげるから、早く良くなりましょうねー。」

機材に目を戻し、手際よく片付けながら彼女が言う。

まったくもう。そういう事を、貴方はなんでもないように言うんだから。

「やだあ、せんせいを独り占めできるの?嬉しい。けど他の男が黙ってないんじゃない?」

「白雪さんならいいかなぁ。あと、残念ながら男の人との出会いはありませーん。」



ーーー
こんなくだらない会話をするのは何度目だろう。

分かってる。

冗談と社交辞令と励ましと。
私と貴方の関係は、患者と看護師。
貴方はきっと、他の患者さんともそう接するんでしょう?

分かってるわよ。

貴方からすれば、これは期待される役割をこなすゲーム。愛を必要とする人に愛を注ぐのが貴方のお仕事。



でも。そんな事が。

私には、必要なの。



だって、分かってるんだもの。

自分に残された時間があとどれほどかって。




ーーーーーーー

「あんまり良くないなぁ。」

雪が降りそうな曇天の下。
いつもの屋上で考えに耽る。

彼女の容態は日に日に悪くなっていた。
そもそもが難しい病気だ。
これだけもっている方がむしろ珍しいとまで主治医は言っている。


それでも、私は彼女を救いたかった。

仕事を終えてからも、過去のカルテを漁り、成功例を片っ端から読み。
寝る間を惜しんで治療法を探した。

「もう時間は無いよなぁ。」

普段は味を感じない煙草が、今日はやけに苦かった。


ーーー
「こんなところでサボりですか。せーんせい?」

甘い声が風に乗って運ばれてきて、私はふっと振り返る。

「あんまり無理して出歩かないでくださいよ?身体に響きますから。」

彼女に言葉を投げ返す。

「今日は体調が良いから大丈夫。
せんせいこそ、煙草は身体に悪いですよ?」

「人の心配よりまず自分の心配をしてくださーい。」

「私の心配はせんせいがしてくれるからいいんですぅー。」

「先生が居ないと生きていけないんですかぁ?」

「生きていけませーん!」



ふふっと、お互いに笑い合う。

いつものやり取り。私の愛情を確かめたいあなたに私は恋人役をしてあげる。
二人をつなぐモノを確かめ合うようなやり取り。
まるでゲーム。


でもね。

あなたにそれが必要ならば。

私は、どれだけだって。






作品名:白雪の花 作家名:somoko