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miss you【番外編 ジョルジョ編】

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誰よりも、彼女の復活を喜んでいたのは大佐だったのだろう。
 そして、ダカールでの演説の後、大佐が宇宙に上がってからアムロの変化に気付いた。
男として振る舞いながらも、時々女の表情を見せる様になったのだ。
その時、大佐が彼女を女にしたのだろうと直感した。その事実にどうしようもなく心が苦しくなった。
 大佐がエゥーゴを離脱した後、時期を見てカラバを離脱しネオ・ジオンへと帰還した。
カラバで活動を続けているアムロから離れるのは心残りだったが、命令には逆らえかった。
 
 数年程したある日、スウィート・ウォーターの街角でアムロの姿を見掛けた。
その行動を追う内、大佐を探しているのだと分かった。当然ながらこのコロニーの人間が連邦に大佐の情報を洩らすはずもなく、諦めてこのまま去るのを見届けようと思った。…その筈だった。
バーで一人グラスを傾けながら溜め息を吐く彼女に、どうしても話し掛けたくなった。
ただの通りすがりでいい、たった一言で良いから話したかった。
始めこそ警戒していた彼女だったが、話をするうちに打ち解け、あの研究所で会った時の様な笑顔を向けてくれた。
一度解放してしまった欲は止まるところを知らず、気付けば彼女をベッドに誘っていた。
 ベッドの中での彼女はとても綺麗で魅力的で、もう手放す事など出来なかった。
シャア・アズナブルに会わせると言えば、彼女は危険を承知で自分について来ると思った。だから、彼女を引き留める為にそんな取引を持ちかけたのだ。
それが後にどういう結果を招くか心の何処かで分かっていたのに…。


「馬鹿だよね…」
ジョルジョは溜め息を吐いて呟く。
「そんな事ありませんよ。それだけアムロ大尉を愛していたって事でしょう?そんな風に誰かを愛せるなんて少し羨ましいです」
自分のこんな告白を、笑いもせずに聞いてくれているのは、ロンド・ベルの技術者であるチェーン・アギだ。
あの時の傷が癒えた後、パイロットとして正式にこのラー・カイラムに配属され、モビルスーツも与えられた。
今日はその調整をチェーンに手伝って貰っている。
共にコックピットで調整をしている時、チェーンにネオ・ジオンでのアムロの事を尋ねられ、それに答えているうちに気付けば過去の出会いまで語っていた。
「いつか…この想いを忘れられる時が来るのかな…」
「忘れる必要なんてありませんよ。ジョルジョ中尉のその想いは大切なジョルジョ中尉の一部です。いつかその想いごとジョルジョ中尉を受け入れてくれる人が現れますよ」
明るく優しく微笑むチェーンに、つられて思わず笑顔が浮かぶ。
「そうかかな…そうだと良いな」
「ええ、大丈夫ですよ。だってジョルジョ中尉はこんなに優しい方なんですから!」
「ありがとう」
「それに、中尉が配属されてから艦内の女性陣がザワザワしてるの気付いてます?」
「え?」
「あー!やっぱり気付いてない」
「チェーン?」
「こんなイケメンでフリーの、それも腕の立つパイロットが配属されて女の子達が騒がない訳ないでしょう!」
「いや、そんな、それに僕がここに配属された経緯を君は知ってるだろ?」
アムロと共にブライト艦長に保護されたネオ・ジオン兵、おまけに連邦に潜入していた元スパイだ。艦長も良く受け入れてくれたものだと今更ながらに思う。
「そんなの一部の人間しか知りませんよ」
「そうは言ってもね…。第一、僕なんて誰も相手にしないよ」
肩を竦めるジョルジョにチェーンが盛大に溜め息を吐く。
「あーもうっ!片想いが長過ぎて鈍ってるかもしれませんが、気遣いは出来るし優しいし、中尉は女の子の間でメチャメチャ人気があるんですよ!おまけにもう直ぐバレンタインですからね、鬼の様にチョコレートと告白が来ると思うので覚悟しておいて下さいね!」
「チェ、チェーン?」
ビシッとジョルジョを指差して叫ぶチェーンに思わず後ずさる。
「本当に失恋の痛みなんて忘れちゃうくらい忙しくなりますよ」
「ど…どうかなぁ…。それよりチェーンは誰かにチョコレートを渡すのかい?」
「はい!私はアムロ大尉に!」
「え?アムロに?」
思わずチェーンがそう言う嗜好の女性なのかと驚く。
「あ、誤解しないで下さいね。お世話になった方への感謝の気持ちです。間違ってもそういう嗜好ではありませんから」
「あ、ああ。そういう…ははは、ごめん。でもどうやってアムロに渡すんだい?」
「アナハイムのオクトパーさんにお願いしてパーツと一緒に送って貰います」
チェーンの答えに「ああ」と納得する。
「なるほど、アナハイムなら連邦とネオ・ジオン両方と取引があるからね」
「ええ、あの…もし良かったらアムロ大尉にお手紙か何か一緒に送りますか?」
「え?」
チェーンが気を遣いながら確認してくれる。それを素直にありがたく思う。
「…そうだね…お言葉に甘えようかな…」
まだ、アムロへの想いは断ち切れてはいない。だから会う事は出来ないけれど、手紙で近況を知らせる事ならば出来るだろうか。優しい彼女はきっと自分を心配してくれているだろうから。そんな彼女を少しでも安心させられればと思う。
「ええ!きっとアムロ大尉も中尉のことを気に掛けていると思いますから」
優しい笑顔を向けてくれるチェーンに少し心が温かくなる。
アムロに片想いをして、周りが見えなくなっていた時には気付かなかった。誰かが自分を気遣ってくれる。それがこんなにも嬉しい。
本当に、恋は人を狂わせるとは良く言ったものだ。周りをちゃんと見渡せば、いつか君よりも愛せる人が僕にも現れるだろうか…。

「ところでチェーン、君は今お付き合いしている人はいるの?」
「え?居ませんけど」
「バレンタインにチョコレートを渡したいと思う男性はいる?」
「いいえ」
キッパリと答えるチェーンにニッコリと微笑む。
「チェーン、相談があるんだけど良いかな」
「何ですか?」
「バレンタインにチョコレートや告白とかされるのは気持ち的にも立場的にもちょっと困るんだよね」
「はぁ」
「だから、もし君さえ良かったら恋人のフリして貰えないかな?」
「はぁ⁉︎」
ジョルジョの提案にチェーンが思わず叫ぶ。
「君に心に決めた男性がいるって言うなら勿論断ってくれて良いよ」
「そんな人いませんけど、どうしてですか⁉︎折角新しい恋愛を始めるチャンスじゃないですか!」
「流石にまだそんな気にはなれないよ」
「でも…」
「やっぱり迷惑かな?」
少し悲しげに見上げるジョルジョにチェーンが「うっ」と唸る。
「べ…別に良いですけど…」
「本当かい⁉︎ありがとう」
嬉しそうに微笑むジョルジョに、チェーンが一瞬息を飲み、そして大きな溜め息を吐く。
「アムロ大尉が中尉に流された気持ちが少し分かりました」
「え、どう言う事?」
「中尉って口調はすっごく丁寧で優しいけど、実は結構強引ですよね」
「そうかな?」
「あ、その顔。実は自覚がありますね!」
「どうかなぁ」
クスクスと笑うジョルジョに、チェーンは呆れながらも、少しは立ち直れてきたのかなと安堵する。
そして、遠く離れてしまったアムロへと想いを馳せる。
『中尉が少しでも元気になれる様にお手伝いしますね。アムロ大尉もどうかお幸せに…』