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good bye to sorry

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 隣で笑っているアモスは、数日前までは夜ごとに怪物に変身しては暴れまわっていたのだ。そして、知らなかったとはいえ、その怪物と戦って、結果的にアモスに大怪我を負わせてしまった。そのことをちゃんと謝っておきたいとミレーユはずっと思っていたのだが、謝る機会を見失ってしまっていた。なにせ、アモスが怪物になっていたということは、本人には内緒だったのだ。謝るにも間が空いてしまい、とうとう今までなにも言えないままだった。
 ……どうやって切り出そう。仲間たちがさらに盛り上がる中、ミレーユはしばし黙り込む。盛り上がっているところに水を差してしまうのは、なんだか悪い気するし。
「……ミレーユさん、おかわりください」
 しかし、ミレーユの少しの沈黙を破ったのは、明るいアモスの方だった。ミレーユは、はっとして顔を上げる。そこにはやはり、人懐っこそうな顔でアモスが笑っていた。焚き火をはさんだ向こう側で、ハッサンが「おう!どんどん食え!」と拳を振り上げ、チャモロが「だから、何様ですか」と横で突っ込んでいる。
「やっぱり、みなさんと戦ったのも幻覚ではなかったんですね!それにしてもあの時は血が騒ぎましたよ!さすがムドーを倒した方々だ。そんな人たちと戦えたなんて、光栄です!」
 ハッサンにも負けないオーバーな動きをつけてアモスが言えば、仲間たちはみな「アモスも強かったよー!」「今度ぜひ手合わせしてください!」と口々に言う。まだ出会って間もないのに、仲間たちはもう、アモスと意気投合していた。
「だから、……ね?」
 仲間たちに返事をしながら、アモスは一瞬だけミレーユに顔を寄せて、そっと、それだけ呟いた。気にしないでくださいね。彼の顔は、そう語っていたような気がした。

 穏やかな夜は続く。あるものは真面目に武器の手入れをしたり、あるものはトランプを始めたり。
 ミレーユはもう、アモスに謝るのはやめにした。謝ったところできっと、あのときのことはお互い様で、あまり意味を成さないだろうから。それに、アモスに気を使わせてしまうのも申し訳ない。
 「しかし、本当にありがたいことです。私と関わってくださる方は、みんな優しい方ばかりだ。モンストルの町の方も、あなたたちも」
 しみじみとアモスが呟く。その視線こそみんなに向けられているが、小さく、ささやくようなその優しい声は、ミレーユに向けられていた。
「ねえアモスさん。そういうの、なんていうか知ってますか?」
「え?何ですか?」
 この先、旅がいつまで続くかはまだ分からない。短いかもしれないし、思ったよりもずっと長くなるかもしれない。けれども。ミレーユは思った。けれどもこの先の旅も、今までの仲間たちと、それからアモスと、みんなで楽しいものにしていこう。辛いことも、苦しいことも、今日みたいにこうして笑いあっていけば、それでいい。
 ごめんなさいは、言いっこなしだ。
「類は友を呼ぶ、っていうんですよ」
 ほくほくした白い湯気が甘い匂いを連れて、たっぷりと盛られたシチューから立ち上る。これで三杯目となるおかわりをミレーユから受け取りながら、アモスは、ありがとう、と嬉しそうに笑った。
作品名:good bye to sorry 作家名:イノウエ