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先生の言葉 全集

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127.モラトリアム



 どうも、こんにちは。

 皆さんもこの迷宮に来てから随分たちましたね。最初は1階でも苦戦していましたが、少しずつ下の階に進み始め、センターも突破して、下層でも生き抜いている。もう立派な有力パーティと言ってもいいでしょう。

 いや、別に偉そうなことが言いたいんじゃないんです。ただ、少しばかりお伺いしたいこともありましてね。それで話のまくらみたいな感じでお話させていただいたんです。

 というわけで、本題に入りますけど、皆さんはもう十分にお強いと思うのですが、なぜ魔術師を討伐しないのですか。いつも最終通路の前、帰るには転移魔法を使う必要が出てくる寸前で帰ってしまう。魔術師側の私が言うのもなんですが、もうあなたがたがすべきことは、主目的を達成してその証を城に持ち帰ることしかないと思いますよ。

 ええ。名誉ある王の近衛兵になるのが嫌なんですか。警護とか護衛とかつまらない仕事をさせられて、安い賃金しかもらえず、老いて力を失っていくくらいなら、迷宮の下層で竜や巨人や悪魔を狩っていたい、と。

 まあ、鑑定ができる司教もパーティにいらっしゃるようですから、実入りは確実にこっちのほうがいいでしょうね。それに、常に戦い続ける、そんなギリギリの人生がいいという気持ちも少しはわかります。戦いに負け続けている私が言うのもちょっとアレですが。

 ただ、あまり言いたくないんですが、われわれ魔術師側も台所事情が苦しいんですよ。モンスターも無限にいるわけではないんです。あなたがたが下層で暴れまわっているおかげで、個体数が減っている竜や召喚に応じてくれない悪魔がいる状態なんですよ。
 あなたがたの実力は大いに認めます。もう白旗を上げますから、ここは一つ、魔術師側のこういった事情をくんでもらって、卒業をされてはいかがでしょうか。

 俺たちに勝ったらそうしてやってもいい? いや、それができないからお願いしてるんです。さすがに最奥の魔術師や吸血鬼の王には頭を下げさせられませんので、雑魚ではありますが、私がお願いしている次第なんですよ。

 そこまで言うのなら、魔術師側に寝返る? ただし、今までどおり迷宮で好きにさせろ?

 いや、それはとてもありがたい申し出ですが、それはそれで、魔術師に匹敵する実力者が配下にいることになるのでちょっとなあ……。

 うーん。こんな猛者向けにボーナスダンジョンとかエクストラダンジョンとか、そういった類のものがあればいいんだけどなあ。


作品名:先生の言葉 全集 作家名:六色塔