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先生の言葉 全集

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114.座談会



 おや。皆さんは、今、うわさになっている方々じゃないですか。

 ええ。私も耳にしていますよ。われわれ魔術師配下の中層の主力である獣人たちばかりを狙っているあなた方のことを。

 先日も、ワーウルフ、ワータイガー、ワーベア、ワーラットの皆さんが困り果てて座談会を開いていたくらいなんです。こんなにやられては個体数が減るばかりだ、このまま殺され続けて絶滅危惧獣人に指定されたら、この迷宮で働けなくなって、ますます個体数が減り、最終的には絶滅してしまう。何とか対策を考えなくちゃ、とね。

 へえ、そんなものを指定する機関があるんだ、なんてのんきなことを言わないでください。かの有名な狼男がいなくなっちゃったら、いろいろ困ることもあるでしょう?

 でも、こっちも生き残るためにやってるんだから、文句は言われる筋合いはない?

 まあ、確かにそうかもしれません。冒険者の中には楽に生きるために、1階にいる私を延々と相手にしたり、2階でコインを探し求めたり、下層で戦える実力がついてもちりにさせられる巨人以外は相手にしないなんて冒険者もいることは確かです。

 でも、獣人たちはそれほど経験も多くないですよね。正味の話、大したお宝も持っていませんよ。それどころか、彼らの中には毒やまひの攻撃を持つものさえいるわけです。どちらかというと戦うのにリスクのほうが大きいモンスターでしょう。それを喜々として狩るというのは、よっぽど彼ら獣人族に恨みがある、ぐらいしか理由が思いつかないんですよ。でも、彼らはそんな心当たりは全くないと座談会で言っていた。いったいあなた方はなぜ、そこまでして彼らを付け狙うのですか。よろしければ、教えていただけませんか?

 はい? たまたま獣人相手によく効く剣が大量に手に入ったから、その切れ味を確かめるために遊んでいただけ? 本当にそれだけが理由なんですか?

 まあ、新しい得物を手にしたら試したくなるのは道理かもしれませんが、それにしても試し過ぎじゃないですかね。それに、より下層に行けばもっといい武器が手に入るのはあなた方も承知でしょう。それなのにわざわざ中層にとどまって獣人だけを相手にし続けていたなんて、ちょっと冒険者としては臆病すぎやしませんか?

 うるさい! 獣人どもはワーワー言わずに黙って大人しく斬られていればいい、ですって?

 獣人だけにワーワーって、そんなまずいサゲじゃ逃がしませんよ。とにかく、今後はあらためてくださいね。


作品名:先生の言葉 全集 作家名:六色塔