先生の言葉 全集
107.威圧感
ほう、最奥の魔術師に遭ってきたんですか。
で、どうでしたか? やっぱり風格が違った、相対しただけでも威圧感がとてつもなかったし、傍らの吸血鬼の王もヤバそうだったから、うちの盗賊が無理と判断して即座に転移能力があるかぶとを使ってどうにか逃げ帰ってこれた、と。
まあ、老いてもわれわれモンスターの長とその側近ですからねえ。そんな簡単に倒せるものではないでしょう。でも、10階で経験を積んで、優秀な武具をそろえることができれば、もしかするともしかするかもしれませんからね。奇跡を信じて頑張ってみるのもいかがでしょうか。
そりゃあ、私もモンスターの側ですから、あなた方に「絶対に倒せる」なんて断言はできませんよ。こちらとしては倒されてしまっては困りますし。でも、そこをなんとかするのが冒険者であるあなた方の使命でしょう? それに、倒せさえすれば狂王の近衛兵になれるわけですから、あなた方の地位は安泰です。人生を賭けて挑む価値は十分にあるんじゃないですか。
しかし、あの全てを見透かされてしまうような、総身の毛が逆立つような恐ろしい感じ。あれはどうやったら出せるのか、あの魔術師は人外の存在ではないか、ですって?
まあ、彼がすでに人ならざるものになっているのは間違いないと思いますね。この世界の理を捻じ曲げることも可能なほど強力なアーティファクトの一つであるアミュレットを手中にしているわけですから。側近の吸血鬼も永遠に匹敵するほどの時間を生き抜き、その経験と知識で魔術師に協力している恐ろしい存在です。この二人と同時に戦うのは大変だと思いますよ。
太古の魔神や私の師匠、狂君主や覆面の忍者なども強いですが、彼らには何度も遭遇できるので、データを集められるんですよね。実は核撃を一発撃てればどうにかなるとか、生命力を奪って死にかけにする魔法が効果があるとか……。
そう考えれば、もしかすると魔術師も側近も実は意外な弱点を持っているかもしれませんね。そこに気付ければ、強そうな彼らも案外に張り子の虎だった、なんてこともあるかもしれませんよ。そして、そう思わせないためにあなた方が言う威圧感とやらで、それを必死に悟られないようにしているなんて可能性も考えられますね。
おっと、少しおしゃべりが過ぎてしまったようです。こりゃまた、あの二人にしかられちゃうかもしれないなあ。まあ、私の言は気にせずに、皆さんは魔除けの奪還を頑張ってください。