先生の言葉 全集
99.かたき討ち
最下層にいる、ものすごく強いニンジャのことについて、何でもいいから教えてほしい?
ああ、それはきっとハイマスターさんのことでしょうね。名前の通り、最高のニンジャの称号を持つ方です。そんな称号をお持ちなだけあって腕のほうは確かで、あっという間に油断した冒険者の首を切り落としていくとても頼りになる方です。最奥の魔術師もとても信頼をしているみたいで、下層の重要な玄室の守りをいつも命じていますよ。
あと、ニンジャだけあってやはり東洋出身なので、同じく東洋から来た高位のサムライである旗本さんととても仲がいいみたいです。遭遇すれば気づくと思いますが、二人は一緒に玄室の守備の仕事につくことが多いんですよ。しかも二人とも首をはねるのが得意なので、相手をしなければならない冒険者には、嫌な相手だと思います。
ただ、私は彼、ああ、いや、彼女かもしれませんが、と、あまり会話をしたことがないんですよね。東洋出身のせいか、やはり私たちと文化や風習が違うことが多くて。こちらはこちらのやり方でいくから、ほっといてくれよってスタンスをとられることが多いんです。でも、ニンジャさんもサムライさんもそれでちゃんと結果を出していますからね。最奥の魔術師や側近の吸血鬼はもちろん、一緒に冒険者と戦っている私たちも、彼らのやり方に異を唱えません。それぞれのやり方でいいんだろうと今は考えています。まあ、最初の頃、無理に仲良くなろうとして失敗した経験はありましたけど。
ところで、どうしてそんなにハイマスターさんのことを知りたがるのですか? 何かわけでもあるんでしょうか。
尊敬する先輩のパーティが、そいつが率いてくる一団に全滅させられてしまったので、どうしてもかたきが打ちたいんだと。なるほど、それはつらいできごとでしたね。もちろん迷宮で冒険をしていく以上、そういったことは起こり得るわけですし、そのような気持ちになるのも無理はありません。
ただ、あなた方がこの迷宮に入るのは魔術師に盗まれたものを取り返すのが主目的であるということは忘れないほうがいいかもしれませんね。あと、その先輩たちの遺体が残っていれば、それを回収することで再び彼らと生きて対面できる可能性も頭の片隅に入れておいてください。
かたき討ちも否定はしません。でも、われわれもあなたがたに大切な人を奪われているんです。報復の連鎖になるよりも、生産的な行動をしていきましょうよ。