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先生の言葉 全集

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112.酒場での騒乱



 そういえば、酒場でケンカとか起きないんですか?

 ええ、あの冒険者の集会場になっている酒場です。私はもちろん入るどころか見たことすらないんですが、基本的に冒険者はそこで待ち合わせをすると聞いています。

 そこには当然、戒律の違う冒険者の方も来るわけですよね。さらに、そこで飲み食いをしたり、パーティのお金の配分をしたり、こっそり賭け事なんかも行われているなんてうわさも漏れ聞いています。
 だとすると、もめ事とかも多そうな気もするんですが、あまりそういう話は聞きませんよね。そこのところは実際、どうなっているんですか。よければ教えてくださいませんか。

 ええ。まず最初は酒場の大将がなだめると。確かに酒場の主人もかなりの腕の持ち主ですからね。で、それでも収まらない場合は、格上のパーティが仲裁に入ってくれる。なるほど。より強い存在ですから理にかなってますね。
 でも、そんなレベルの高いパーティ同士が一触即発になることだってあるでしょう? そういうときはどうしてるんですか?

 そうなったらもう狂王の近衛兵が駆けつけてきて、治安を乱したという名目で数日ほど拘束される? なるほど、狂王が募集している冒険者とはいえ、そこまでおいたをしたらさすがに叱られてしまうんですね。よくわかりました。ありがとうございます。

 え? 実はちょっと余談がある? ふむ。昔、実力はあったがどうにも性格が悪いパーティがいて、そいつらがライバルを酒場でやっつけようとして、事件を起こしたんですか。

 彼らはおごりという名目でライバルパーティを全員酒場に集めると、いきなりそのパーティの司教がちっそくの魔法を唱えて、低レベルの冒険者たちを亡き者にしてしまった。次に魔法使いが核撃魔法で酒場を焼け野原にしてしまったらしい、と。

 この事件がきっかけで建て直された酒場は、魔法が効かない構造となりそれが今でも続いているが、恐ろしいことにそのパーティ6人の遺体はいまだに見つかっていないらしい。恐らく、魔法使いが核撃を放った直後に侍あたりが転移魔法を唱えて、パーティ全員で逃げ出したんじゃないかとうわさされていて、酒場の大将も当時を知る冒険者も、あのパーティがまたいつか戻ってくるんじゃないかと今でもおびえているらしいんだ、と。

 ふむ。冒険者の酒場事情を聞いてみたら、都市伝説のような話が飛び出してきましたね。願わくは、彼らが今ごろいしのなかで眠っていることを祈らんばかりです。


作品名:先生の言葉 全集 作家名:六色塔