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遊戯王 希望が人の形をしてやって来る

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アストラルの章

アストラルはその手の中で全ての因果を、縁の糸を、
細心の注意を払ってより合わせながら、深く驚嘆していた。

「人の願いとは、想いとは、ここまで強い奇跡を起こすものなのか…!」

全てを終え、願いは絡み合った。
もしたった一人。たった一人でも、相反する願いを抱けば全てが終わりだった。
けれども誰一人憎しみに囚われること無く、彼らの願いは純粋だった。あのベクターでさえ。
『共にありたい』
それは、形は違えど彼らの全てが共通した願いだった。これを絆と呼ばずして何と呼ぶのか。

「奇跡を起こすのはいつであっても、人の願いなのだな。」
デュエルが奇跡を起こすのは、デュエリストならばカードに確かな願いを賭けるから。
「遊馬。君の言う通りだ。デュエルをすれば、分かり合える。」
アストラルは微笑んで独白した。
奇跡とは、人の願いがぶつかり合い、わかりあった先にある。

アストラルは最後の因果の糸を、慎重に、慎重に、結び終える。
アストラル世界はカオスを受け入れた。
二つの世界が融合する時人間界へ放出されるエネルギーに乗せて、人間界へ一回限りの片道切符を創る。

それが、七皇へ贈る未来への切符だ。

七皇全員は人間に転生。カイトはギリギリの所で生存を果たした事になる。遊馬の元には全てが還ってくるだろう。
代償になった、アストラルがいないことを除けば、全て。
「それも、充分すぎるほどだ。
もし誰かが橋の向こうに辿り着けなければ、私自身をエクシーズ素材に道を創るはずだったのだから。」
私もまた、彼らに救われたな。

そう言って、アストラルは組換えた因果を、ヌメロンコードへと戻していく。

「誰も同じではない。それこそが、生きている意味なのだな。
君と見た景色が、私の真実だ、遊馬。」

この組換えた因果が、アストラルの全てをつぎ込んだ『マスターピース』だ。
マスターピースとは、『腕によりをかけた傑作』の意である。
アストラルが遊馬へ贈る、渾身の贈り物だ。



「遊馬。私の半身。幸せになってくれ。」



けれども。アストラルは知らない。
因果の糸に、細い細い、金色の糸が一本、混ざっていることを。
金色のそれは、そう、例えるならNo.39希望皇ホープの色だ。

アストラルは、知らない。
Ⅲはアストラルにまたねと言った。
トロンは再会の約束を告げた。
アリトは強い言葉でアストラルを励ました。
璃緒は他ならぬアストラルへ秘密を手向けた。
ドルべは友と笑い合う未来をとアストラルへ言祝ぎを贈った。

アストラルが橋を作り、彼らを望む未来へ送り出すたびに、
彼らがアストラルへ向けた感謝と祈りが、小さな小さな糸となって
アストラルの手をすり抜けて、因果の糸へ絡んだことを、アストラルは知らない。

そう。そしてそれが、遊馬とアストラルの再会を導く、確かな縁の糸になっていく。

凌牙は笑った。
─────「いつまでしょぼくれていやがる。さぁ、いくぞ!!」
カイトは細めた瞳に柔らかな色を乗せた。
─────「アストラル世界に、新たな危機が迫っている。」
集まった仲間たち。遊馬の前で、誰もが笑って一つの未来を見ていた。

そう。
遠くない未来
凌牙、カイト、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、トロン、アリト、ミザエル、ギラグ、ドルべ、璃緒、そしてベクター。
その金色の縁を結んだ、全ての者が手を取り合って、
他ならぬ遊馬を連れて、アストラル世界にやってくるのだ。

金色の糸の名は、希望。

彼らの前に、
希望の形をして、アストラルが現れたように。

──────かっとビングだ!オレ!

アストラルの希望が
人の形をしてやって来る。



Episode of Double-up-chance (もう一度生まれた可能性の話)
yu-gi-oh ZEXAL forever!