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遊戯王 希望が人の形をしてやって来る

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トーマス・アークライトの章

アストラルに問われて話を聞いたⅣは、矢継ぎ早に質問をすると、いくつかの提案を示した。
「と、こういう訳だが。イケるか、アストラル」
「可能だ。しかし、君には恐れ入る。私でも見つけられなかった抜け道を見つけるとは。」
「凌牙のやつに一泡吹かせるにはこれぐれぇ出来ねえとな。」
「だが、代償が必要だ。君の場合は…」
「眼、だろ。」
「そうだ。君が死の間際にシャークに告げた一言、その時『君の眼は見えていなかった』為に、最後の一言が伝わっていたか確認出来ず未練が残った。そういう事実をヌメロンコードを使って捏造する。
私は君達の『死の間際の未練』を叶える形を取っているから、それでシャークへの伝言が可能になるはずだ。」
「あいつのことだ、最後の最後で潔く諦めちまいそうだからな。」
「だが、本当にいいのか。下手をすれば…」
「いい。ランクアップマジック使った時から、予感はしてたんだ。
凄まじい衝撃が全身に、特に頭に来てた。だから真っ先に影響が出るとしたら眼だろうなってな。
オレの場合、この傷の時から右目は少し見えづらくなってたから余計に負担がかかるだろうって予想もあったし。」
「…完全に失明するかもしれないぞ」
「ハハ、そいつは困るな。まだ凌牙の奴にリベンジしてねえんだ。」
Ⅳはそう言ってカラリと笑っておどけてみせた。
「兄貴はな、だからオレにあのカードを渡したがらなかったのさ。知ってたよ。
でもな、それでもオレの気持ちを汲んであのカードを渡してくれた。それがどれほどの想いだったのか、解らねえほど馬鹿じゃねえさ。
凌牙に立ち向かいながら、兄貴の想いがオレの背中を押していた。だから迷いもせずに3回ランクアップなんて芸当が出来たんだ。」
Ⅳは立ち上がって、橋へと歩き出す。
「……代償がどの程度かは、私にも判らない。
もしも全ての因果がうまく絡み合えば、少し視力が落ちるだけで済む可能性はまだある。」
アストラルはⅣの背中を見送って、そう言葉を落とした。
「だといいな。」
Ⅳは振り返らぬまま、背中越しに言葉だけを寄越した。
その燃えるように紅い瞳は、今は居ない相手を火傷しそうな程に真っ直ぐ見据えている。
「だが、もしも本当に全ての視力を失っても、悔いはねえさ。
あの時届かなかったあいつの、運命の糸をブッタ切れるってんなら、安い代償だ。」
Ⅳの足が橋にかかる。Ⅳはそれまでの、強く熱く友情に満ちた真っ直ぐな表情を引っ込めて、
今度はゆがんで見えるぐらいに心底楽しそうな、ニタリとした顔で笑った。
「あいつの一番のファンはオレだからな。オレの最期のファンサービス、たっぷり受け取ってもらおうじゃねえか?」
そうしてふっと、穏やかに微笑んで、Ⅳは光の向こうに消えた。

そうして、Ⅳの望みは、確かに叶えられることとなる。